3Gの発展はまだまだ続く──HSPA+、DO Advancedを提供するクアルコム(2/2 ページ)

» 2008年05月30日 05時51分 公開
[園部修,ITmedia]
前のページへ 1|2       

EV-DOはDO Advancedで下り最大34.4Mbpsへ

Photo CDMA2000も、DO Advancedへと続く機能拡張のロードマップがすでに整備済み。1xもキャパシティの向上が予定されている

 日本ではKDDIが導入し、一時期はドコモに対して大きなアドバンテージを獲得したCDMA2000 1x EV-DOも、さらなるデータ転送速度の向上が予定されている。KDDIは現在下り最大3.1Mbps、上り最大1.8MbpsのEV-DO Rev.Aのサービスを開始しているが、これがEV-DO Rev.Bになると、下りは最大9.3Mbps、上りも最大5.4Mbpsへと高速化する。

 この高速化を実現するのが、HSPA+の項でも触れたマルチキャリアである。EV-DO Rev.Bは、EV-DO Rev.Aのキャリアを3本束ねて通信を行い、スループットを3倍に向上させる。端末側はEV-DO Rev.Bに対応した新しいチップセットが必要になるが、基地局側はソフトウェアのアップグレードを行うだけで対応できるのがポイントだ。QUALCOMMは2007年4月からアップグレード用のソフトウェアを提供しており、2008年後半には商用サービスがスタートするといわれている。

 なおEV-DO Rev.Bは、サービスエリア内のすべての基地局を一気にRev.Bに更新する必要はない。トラフィックが集中し、混雑していてより多くのキャパシティが必要なエリアだけをRev.B化して、それほどユーザーが多くない地域はRev.Aにとどめておくということが可能だ。端末はRev.BのエリアとRev.Aのエリアでシームレスにハンドオーバーができるため、スループットは変わるが通信は維持される。通信キャリアは無駄なくパフォーマンスとキャパシティを向上させられるわけだ。ちなみにKDDIはまだEV-DO Rev.Bの導入について特にコメントをしていない。

PhotoPhoto EV-DO Rev.Bは、EV-DO Rev.Aのキャリアを3本まとめて利用することでデータ転送速度を3倍に高速化する。端末側にはRev.B対応の新しいチップセットが必要になるが、基地局はソフトウェアのアップグレードだけで対応できる
Photo エリア内のトラフィックに応じて、混雑する場所だけホットスポットのようにRev.Bを展開していける

 さて、2010年ころには、EV-DO Rev.BはPhase IIに移行する。Phase IIでは、変調方式を64QAMにすることで、1キャリアあたりのデータ転送速度が3.1Mbpsから4.9Mbpsに向上するため、下りの最大テータ転送速度が14.7Mbpsになる。

 その先に予定されているDO Advancedでは、4つのEV-DO Rev.Aキャリアを使い、さらにMIMOを組み合わせることで、下りのデータ転送速度は最大34.4Mbpsに達する。上りも13.4Mbpsと、HSPA+ほどではないものの、明確な高速化のロードマップが用意されている。

 興味深いのは、CDMA2000 1x にも1x Advancedという拡張が予定されていることだ。1x Advancedでは、1xの音声キャパシティを2倍にする。キャパシティが2倍になっても、ユーザー数が変わらなければ、必要な周波数は半分になる。すると、そこで余った周波数をEV-DO(データ通信)に回すといったことも技術的には可能で、周波数の有効利用につながるという。

干渉制御により上りのスループットを2倍に向上

 ここまで見てきたような端末側の通信技術の進歩だけでなく、基地局側の処理によって上り回線のスループットを向上させる技術も、導入へ向けて研究が進められている。それが干渉制御(Interference Cancellation/IC)と呼ばれる技術だ。

 干渉制御を利用すると、端末から基地局への上り回線の干渉が抑えられるため、トータルのスループットが上がる。例えば同じセクターの中に2人のユーザーがいて、一方が他方に干渉するような動作をしたときに、干渉を防ぐよううまく電波を制御することでスループットを向上させるわけだ。

 干渉制御の導入に際して、端末側には一切改修が必要なく、基地局の基板をCSM6850を搭載したものに差し替える程度で済む。HSPAやHSPA+、EV-DO、1xなどさまざまな技術方式に適用可能で、導入するだけで目に見えて効果が出るという。例えばVoIPのようなアプリケーションでは、干渉制御によってスループットが向上し、安定的な会話が可能になる。FTPやHTTPによるファイルのダウンロードなども、快適にサービスが利用できるようになる。

PhotoPhoto 干渉制御(IC)は基地局側の変更により、上りの通信速度が最大2倍に速くなる技術だ。単純に導入するだけでも大きな効果があるという
PhotoPhoto 干渉制御は、HSPAにもEV-DOにも適用できる。HSPA+(3GPP Release 7)の導入時期とほぼ同じ頃には利用可能になるようだ

 このように、3Gの技術はまだ発展の途上にあり、今後も性能の大幅な向上が予定されている。QUALCOMMは、今後も強力な無線システムとして、W-CDMAとCDMA2000の拡張を継続していく。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2024年04月18日 更新
  1. 「ポケモンGO」大幅アップデート より自分に近いスタイル変更、現実世界を反映したビジュアルなど (2024年04月16日)
  2. ソフトバンク版iPhone 15 Pro、Pixel 8 Proの一部容量が実質24円 1年で買い替える人向け「新トクするサポート(プレミアム)」の内訳とは (2024年04月17日)
  3. 縦折りスマートフォン6機種のスペックを比較する サイズ/カメラ/価格の違いは? (2024年04月17日)
  4. Back Marketの「リファービッシュ製品」が中古と違うワケ 売れ筋はiPhone 13、バッテリー“100%保証”の計画も (2024年04月17日)
  5. 「なめてんの?」前澤友作さん、Metaの“他責的声明”に激怒 著名人なりすまし広告問題で (2024年04月17日)
  6. HMDとハイネケン、透明で“退屈な”折りたたみ携帯を発表 (2024年04月17日)
  7. ソフトバンク、「新トクするサポート(プレミアム)」を4月18日に開始 対象機種は? 現行プログラムとの違いは? (2024年04月16日)
  8. バッファロー製Wi-Fiルーターに脆弱性 対象機種は今すぐファームウェア更新を (2024年04月17日)
  9. ガストの「テーブル決済」をPayPayで試してみた 便利だけど思わぬワナも (2024年04月14日)
  10. 「改正NTT法」が国会で成立 KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルが「強い懸念」表明 (2024年04月17日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2024年