クアルコムがにらむ“次の10年”──山田純社長に聞く(後編)日本でのCDMAサービス開始10周年(2/2 ページ)

» 2008年06月16日 10時00分 公開
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コストを抑えつつ、新しい技術を次々と投入

Photo 「今後QUALCOMMが革新的な技術を導入しても、ロイヤリティの料率は上げずに提供していきます」

 無線通信機能をさまざまなデバイスに搭載することを考えると、チップセットのコストをいかに抑えていくかも重要になってくる。高機能、高性能でありながら、それなりに導入しやすいコストでなければ普及は難しいだろう。QUALCOMMはこうしたコストに関して、どのような考えを持っているのだろうか。

 「QUALCOMMでは、現在の携帯電話に対して、メーカーからの出荷価格の5%未満をロイヤリティとしていただいています。これを高いと見るか安いと見るか、という議論はいつもありますが、われわれのメッセージとしては、この5%未満という使用料の料率は過去10数年間まったく上げていないということを強調したいですね。その間に蓄積されてきた技術開発の成果は、特許の数にして何十倍も増えているわけですから」(山田氏)

 例えば携帯電話の技術は、cdmaOneからCDMA2000 1x、CDMA2000 1X EV-DO Rel.0、EV-DO Rev.A、W-CDMAからHSDPAと革新、拡充がなされ、提供されて来たが、ロイヤリティは従来と同じ枠組みを維持している。QUALCOMMはEV-DOやRev.A、W-CDMAやHSDPAを導入し、ライセンス対象の技術が拡大されたからといって、料率を上げるようなことはして来なかったことから、同じ料率で価値を高めた通信技術を提供していったことは評価してほしいと力説した。

 「今後もその方針は徹底していきます。もちろん技術開発は止まることなく進んでいきますが、革新的な技術を導入しても、料率は上げずに提供していきます」(山田氏)

この先の10年も、半歩先、一歩先の技術開発で業界をリードする

Photo 「アイデアの先進性を出し続けることができなくなってしまったら、QUALCOMMの存在意義は薄れてしまいます」

 この先10年間、携帯電話業界はさらなる発展が予想されている。そこで求められる技術がさらに高機能化、高度化していくことは間違いない。こうした未来に対して、山田氏は「QULACOMM本社を含めて、危機感が高まっている」と話す。

 これまでクアルコムは、無線の世界で、高い開発能力で、必要とされる技術を先取りし、これまでの地位を築いてきた。時にライバル会社と熾烈に争ってきたこともある。しかし、今までの10年も決して安泰ではなかった。

 「『クアルコムはロイヤリティでいい商売をしている』と言う人たちも多いですが、実際はそんなに甘い世界ではありません。われわれのような技術と部品だけの会社は、『なくなったら困る』と思われるような技術を提供し続けられて初めて生き残って行けます。かなり厳しい事業環境にあると思いますね。

 知的財産権は、今あるものよりいいアイデアがあれば、ほかに移ってしまいます。QUALCOMMがここまで成長してきたのは、CDMAの技術を開発したからですが、同様に他社が画期的な新技術を開発すれば、今のわれわれと同じ立場になることも不可能ではないでしょう。いつかアイデアが尽きて、他社に抜かれてしまったら、QUALCOMMの会社の立場は不安定になります。半導体そのものをつくることも難しいことではありません。アイデアの先進性を出し続けることができなくなってしまったら、QUALCOMMの存在意義は薄れてしまいます」(山田氏)

 クアルコムでは、売り上げ高の20%以上を研究開発費に投入するなど、技術開発に相当の資金とリソースを割いている。これも「半歩先、一歩先を進んでいきたい」(山田氏)という、クアルコムの考え方が支えるものだ。

PhotoPhoto QUALCOMMのビジネスモデルの概略を表した図(左)と、同社の売上高に占める研究開発費の比率(右)

 山田氏は、「有線のブロードバンド化に比べれば、モバイルのブロードバンド化はまだまだ始まったばかりです。モバイルのブロードバンド環境でも、いずれは数十Mbps、数百Mbpsクラスの環境が提供されていくでしょう。その環境を、限られた周波数資源で実現するためには、創意工夫の余地があります。単に無線の帯域を広くすればいいわけではないですし、複雑な変調方式を導入すればいいというものでもありません。そのあたりの技術に関しては、われわれが貢献できると思っています」と語る。

 日本でCDMA技術がスタートしてからの10年は、クアルコムにとって、単なる通過点に過ぎない。モバイルブロードバンドの実現に向けた次の10年が、もう始まっているのだ。

※6月25日付けで山田純氏は、クアルコム ジャパン 代表取締役会長に就任しました。



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提供:クアルコムジャパン株式会社
企画:アイティメディア営業本部/制作:ITmedia +D 編集部/掲載内容有効期限:2008年7月19日