「iPhone」とはターゲットも開発思想も異なる――Samsungの「OMNIA」が生まれるまでCommunicAsia 2008(2/2 ページ)

» 2008年06月19日 00時00分 公開
[山根康宏,ITmedia]
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UIに高まる関心、Samsungの開発方針は

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ITmedia Samsungの考える使いやすいUIとはどのようなものなのでしょうか。また、UIの開発はどんな方針に基づいていますか。

リー氏 そもそもUIとはハードウェア、ソフトウェア、機能など、さまざまな要素のコンビネーションによって構築されます。技術だけが進化したとしても、使いやすいUIを実現できるとは限りません。UIの開発とは技術の開発ではなく、製品コンセプトに最も適した操作方法を開発するものだと考えています。

 またUIは技術を争うものではないと思います。時には技術ではなくルックスやフィーリング、すなわち見た目を強化することも必要です。見た目を変えただけで使いやすくなれば、例え技術的に進化がなくてもUIそのものは大きく改良されたことになります。

ITmedia ユーザーが利用するコンテンツがリッチなものになっていくのに伴い、より大きな画面を求める声も高まっています。今後の携帯電話はインターネットやマルチメディア関連の利用が増えていくと予想されます。OMNIAには3.2インチのディスプレイを搭載していますが、今後はより大きなディスプレイを搭載するのでしょうか。

リー氏 たしかに映画を見るなら、より大きな画面で見たほうが臨場感がありますし、迫力も違います。しかし携帯電話は毎日持ち運ぶツールであり、手で持って利用しますから、おのずと使いやすいサイズは決まってきます。もし大きな画面サイズの端末を発売した場合、おそらく人々は画面のクオリティの高さより、持ちにくい大きさにデメリットを感じるのではないでしょうか。携帯電話のマルチメディア機能を強化することは重要ですが、前提として“ポータブルで持ちやすいサイズ”であることが重要です。

 では、そのサイズはどれくらいなのか。これはユーザーが決定するものだと思います。本体サイズと画面サイズは相反するものです。どのサイズが最も適しているかは各メーカーが開発に苦心しているところでしょう。もしもベストと考えられるサイズがあるのならば、Samsungはそれに対応する製品を開発する力を持っていると自負しています。

iPhoneとOMNIAを比べることに意味はない

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ITmedia 各社からタッチUIを搭載した端末が登場していますが、OMNIAはどのような形で差別化を図った製品なのでしょうか。

リー氏 それは、例えばiPhoneのことでしょうか(笑)。たしかにAppleはいい製品を市場に投入しました。一方、当社のOMNIAは、我々が現時点でベストと考える製品として開発しており、どちらが優れた製品なのかを1つ1つの機能で比較してもあまり意味がないと思います。例えばOMNAは、高機能な500万画素カメラを搭載していますが、これはOMNIAがカメラの機能も重要視しているからです。

 開発コンセプトや、ターゲットとするユーザー層が違う製品を単機能ごとに比較したからといって、製品の優劣をつけられるものではないはずです。我々はOMNIAが優れた製品であると自負していますし、使っていただいた方々には製品の良さが十分伝わるはずだという自信も持っています。

ITmedia OMNIAをはじめ、御社には多数の優れた製品があります。それらは韓国で発売され、同じモデルがそのまま海外でもヒットしている例も多くあります。一方、日本に投入している製品は、日本向けにデザインなどをカスタマイズした端末も出ています。グローバルの同一モデルを日本にも投入する考えはないのでしょうか。

リー氏 もちろん、日本にも当社が韓国や海外で発売している製品をそのまま出したいと考えています。たしかに日本には通信キャリアとの関係など、海外とは若干業界構造の異なる部分もあります。しかし、日本にもグローバルなデザインが好きな方もいると思います。我々が「いい製品」と考えて開発し、それが韓国のみならず海外でも好評な製品なら、日本でもきっと受け入れられるものと考えています。

ITmedia OMNIAを日本で発売する予定はありますか。

リー氏 個人的にはぜひ出したいところです(笑)。特に日本のユーザーは携帯電話の使い方が世界でも進んでいますし、製品に求めるクオリティは非常に高いものがあります。だからこそ、OMNIAを使ってみてほしいと考えています。

クオリティで勝負――Samsungの携帯戦略

ITmedia 今後のSamsungの戦略を教えてください。

リー氏 当社は2007年、1億6000万台の携帯電話を出荷し、世界シェアで2位を獲得しました。しかし当社の携帯電話ビジネスにおける哲学は「シェア」や「量」ではなく「クオリティ」であり、消費者に新しい経験や高い満足度を与える製品を開発することが使命と考えています。クオリティを追求するために“スタイル”を強化したところ、結果として売上げが伸びたというわけです。

 つまり“消費者にとって、何がベストなのか”を考えて製品を開発することが売り上げを伸ばす最も重要な要素だと考えています。今後はOMNIAのように、機能を強化した端末の開発にも注力することで、製品ポートフォリオをより強化したいと考えています。そしてそれがSamsungのシェアや利益の向上に結びつくものになると期待しています。

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