インタビュー
» 2008年07月01日 19時13分 UPDATE

開発陣に聞く「Cyber-shotケータイ W61S」(前編):「W61S」の作り方――まず、この狭いスペースに“Cyber-shot”を詰め込みましょう

「Cyber-shotケータイ W61S」は、Cyber-shotのDNAを継承した高性能なカメラを備えつつ、auの新プラットフォーム「KCP+」に対応する多機能なモデルとして注目を集めている。カメラ機能へのこだわりを中心に、ソニー・エリクソンに話を聞いた。

[田中聡(至楽社),ITmedia]

 ソニーの“Cyber-shot”ブランドを冠した「Cyber-shotケータイ W61S」は、511万画素CMOS、光学3倍ズーム、顔検出AFの顔キメLiteと笑顔自動シャッターのスマイルシャッターLite、手ブレ補正、高感度撮影、高輝度LEDフラッシュ、スーパーマクロなど、ケータイ最高クラスのカメラ機能を搭載したソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ製のハイエンドモデルだ。

photophoto 「Cyber-shotケータイ W61S」。ボディカラーはスペクトラムピンク、プリズムホワイト、シャドウブラックのほか、リフレクションゴールドとルミナリーピンクも追加された

 “デジカメなみ”の撮影機能に加え、写真のブログアップやGPS情報の付加、撮影画像のスムーズな閲覧を可能とする「フォトビューアー」、音楽付きスライドショーを再生できる「音フォト」など、撮影後に楽しめる関連機能が充実しているのも特筆すべき点だ。また、電動式のレンズカバー、押しやすく高級感のあるカメラ専用キーなど、操作性やデザインにもCyber-shotケータイとしてのこだわりが反映されている。

 充実しているのはカメラ機能だけでない。ワンセグ、デジタルラジオ、Bluetooth、LISMO、おサイフケータイ、au one ガジェット、マルチプレイウィンドウ、au Smart Sportsなどに対応し、「KCP+」対応の“ほぼ全部入り”端末としての完成度も高い。

 カメラの機能や操作性、デザインのこだわり、先行してドコモからリリースされた「Cyber-Shotケータイ SO905iCS」との違いなどについて、開発を担当したソニー・エリクソンの開発陣に話を聞いた。

photo Cyber-shotケータイ W61Sの開発スタッフ。上段左から商品企画担当の冨岡氏、機構設計担当の安西氏、デバイス開発担当の梅原氏、デザイナー(GUI)担当の神山氏、デザイナー(本体)担当の大倉氏、ソフトウェア(カメラ)担当の平澤氏

“カメラスペックを上げただけ”の端末ではない

photo 商品企画担当の冨岡氏

 携帯電話にCyber-shotブランドを冠する条件とはどんなものだろうか。商品企画担当の冨岡氏は、「Cyber-shotとしての使い勝手と画質、Cyber-shotの世界観を感じられるカメラ機能を備えていること」と話す。この条件は、ドコモのSO905iCSであっても、海外のCyber-shotケータイでも変わりはない。ただし、同じCyber-shotの世界観を共有しながらも、モデルごと実現したいテーマや、目指す方向が違っているのだ。

 「ケータイにハイスペックなカメラ機能を求めるニーズがあることは認識していましたが、単純にカメラ性能を上げるだけではなく、何か違う提案ができないかと考えました。そこで我々が着目したのが、ブログやSNSが普及したことで、ケータイカメラがコミュニケーションツールとしての役割を強めているというトレンドです。こうしたWebを通じた自己表現や情報発信、コミュニケーションにカメラを役立ててほしいと考えました。さらに、時を同じくしてCMOSセンサーの『Exmor(エクスモア)』など、優れたデバイスが完成したことも大きいですね」(冨岡氏)

 ケータイを使ったネットコミュニケーションニーズの高まりと、すぐれたデバイスの完成――という企画経緯はSO905iCSと同様だが、冨岡氏はW61Sならではの特徴として「W44S」以来となる“ほぼ全部入り”モデルの実現を挙げる。

 「カメラを積極的に使って情報発信をするようなトレンドセッターにとって、“全部入りケータイ”のニーズが高いことは分かっていました。であれば、Cyber-shot以外の付加価値もW61Sに搭載し、高いレベルのユーザー体験を提供しようということになったのです。ちょうど、ワンセグやBluetooth、そしてauの新サービスをサポートする新プラットフォームのKCP+が利用できるタイミングでしたので、全部入りのCyber-shotケータイをスムーズに完成させることができました」(冨岡氏)

光学3倍ズームへのこだわり

photophoto デバイス開発の梅原氏(写真=左)と機構設計担当の安西氏(写真=右)

 W61Sは最厚部が約24ミリあり、最近のケータイの中ではやや厚いが、ここに500万画素CMOSと光学3倍ズームレンズを一体化させたカメラユニットが収まっている。これはドコモ向けのSO905iCSと同じもので、W61Sも画素数やズーム倍率など基本的な仕様に違いはない。

 このカメラユニットは、W44Sのカメラユニット(317万画素CMOS)と比べて体積比で5倍ほど大きいという。特にサイズ面でネックになるのが光学ズームのための鏡筒で、「単なる5メガカメラであれば、もっと小さいサイズにできた」(デバイス開発の梅原氏)という。

 「ユーザーが体験できる最高峰の楽しみ方を提供するには、遠くの被写体をきれいに撮るための機能が必要。そのためには、たとえサイズが大きくなっても光学3倍ズームが必要と判断しました」(冨岡氏)

 また、W61SにはワンセグやBluetoothが搭載されており、SO905iCSの開発にはない苦労もあったという。開発陣は「本当に可能なのか? という声が出るほど難易度が高かった」と振り返る。

 「SO905iCSとW61Sは、サイズはほぼ同じですが構造がまったく違う。そのため内部のレイアウトは全面的に変えています」(安西氏)

photo 「Cyber-shotケータイ W61S」の裏面(カメラ側)。唯一のつなぎ目はバッテリカバーのもので、それも曲線にするなど工夫させている

 「裏面(カメラ側)などは、デザイナーから“カメラとしてきれいな面を見せたい”という要望がありました。そこで、バッテリーカバー以外のつなぎ目をなくし、ネジ穴も裏面には設けないようなパネル構造を採用しています。そのため、側面からしっかり保持できるよう多少厚くなってしまいました。ネジで裏面パネル直接留める構造なら、もう少し薄くできたと思います。でも美観が損なわれますね」(機構設計担当の安西氏)

 SO905iCSもW61Sと同じく厚さは24ミリだが、同じ数字を目指して開発したのではなく、結果として両機種とも同じ厚さになったようだ。「基本的に設計チームは別なので、両方で競い合って、向こう(SO905iCS)がコンマ1ミリ縮めてきたら、こっちも縮めようと。その結果、ほぼ同じサイズになりました」(梅原氏)

 「全部入りケータイだからといってどこまでも大きくできるわけではありません。明文化されているわけではありませんが、許容できるサイズについてのイメージはありました。『高さは115ミリ以下にしないと絶対まずいよね』『厚さも25ミリは切ろう』とか……最低限守るべき目標値は意識していました」(冨岡氏)

SO905iCS、本家Cyber-shotとのカメラ性能の差

 同じカメラユニットを採用したSO905iCSとW61S。では、同じ被写体や景色などを同時に撮影した場合、色味などは変わってくるのだろうか。

 「絵作りに関してはCyber-shotの開発部隊から承認をもらいながらチューニングを行いました。また、輪郭をもう少し強くするなど、KDDI側からの要望も入れているので、SO905iCSとはすこし異なるチューニングになっています」(梅原氏)

 では、本家のCyber-shotとはどのような違いがあるのだろうか。

 「例えば『DSC-T100』と比較すると、レンズはW61Sのほうが明るいですね。広角側の開放F値はW61SがF2.8ですが、DSC-T100はF3.5です。またW61Sは手ブレ補正は電子式ですが、Cyber-shotの手ブレ補正ユニットは光学式です。さらにCyber-shotは画像処理用に『BIONZ(ビオンズ)エンジン』を採用していますが、W61Sではこれを縮小したDSP(Digital Signal Processor)を採用しました」(梅原氏)

 当たり前のことだが、デジタルカメラであるCyber-shotは、ボディ全体が“写真を撮ること”を目的に作られている。しかし携帯電話では、限られたボディサイズの、さらに限定されたエリアにカメラ機能を詰め込まなければならない。W61Sでは、先述したカメラユニットと側面に配置された画像処理用のチップの2つの部品でそれを実現した。

 梅原氏ら開発陣は、「光学性能はどちらも3倍ズームですが、W61Sでは小型のレンズユニットにも関わらず、Cyber-shotと同等の光学性能を内蔵できた」と胸を張る。

photo ソニー製のBluetoothレシーバー「DRC-BT15P」

 また、W61Sならではのカメラ機能として、Bluetoothを使ったシャッターリモコンにも注目したい。「これまでと同じBluetoothの使い方だけだと面白くないので、カメラに結び付けた新しいユーザー体験ができないかということで搭載しています」(冨岡氏)という。

 ソニー製のBluetoothレシーバー「DRC-BT15P」とW61Sをペアリングさせてカメラを起動すると、レシーバーの再生ボタンを押すことでW61Sのシャッターを切ることができる。レシーバーからシャッターを切るとオートフォーカスは作動しないが、事前に本体のAFロックボタンを押せばピントを合わせられる。このシャッターリモコン機能は、DRC-BT15P以外のBluetoothレシーバーでもA2DPに対応していれば利用できるという。

 ちなみに、W61Sのカメラは決定キーでシャッターを切ると、オートフォーカスが作動せずパンフォーカスで撮影される。これはKDDIの仕様によるところが大きく、「起動してすぐに撮ること」を優先したためだという。これもAFロックボタンを押せばピントを合わせられるが、オートフォーカスを必須機能として使う人にとってはやや不便。オートフォーカスを手動でオン/オフに切り替えられる設定を採用してほしいところだ。

photophoto メニュー画面のUIはクロスメディアバー(XMB)に似たデザイン(写真=左)。簡単な操作説明を表示する「カメラ機能ガイド」機能(写真=右)

photo ソフトウェア(カメラ)担当の平澤氏

 カメラのUI(ユーザーインタフェース)は、SO905iCS、W61S、本家Cyber-shotどれも同等の使い勝手を実現しているが、「ドコモとauではプラットホームが違うので、ちょっとした仕様の違いはあるが、できるだけ同じ使い勝手になるように努めた」(梅原氏)という。

 あまり大きくはアピールされていないが、W61Sのカメラメニューには「カメラ機能ガイド」が用意され、W61Sのカメラでできることがイラストと文章で分かりやすく説明されている。この機能もSO905iCSにはないものだ。

 「説明書ではないので細かい操作方法は載せていませんが、『こんな機能があるんですよ』ということを簡潔にまとめています。W61Sには使われなくなってしまいそうなカメラ機能もたくさんあるので、掘り起こして使ってほしいですね。『ウォークマンケータイ W52S』にも音楽関係のチュートリアルを入れていたので、その流れで採用しました」(ソフトウェア《カメラ》担当の平澤氏)

 次回は、ソニー・エリクソンが得意とする“スライドケータイ”としての作り込みや、“カメラ”として見せるためのデザイン処理、そして国内端末としては初めてという、自動レンズカバーについて詳しく話を聞く。

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