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» 2008年07月24日 15時41分 UPDATE

ワイヤレスジャパン2008:“ケータイでもPCでもない、その間の市場”を狙う――見えてきた、UQのWiMAX戦略

広帯域・大容量、高速モビリティ、常時接続環境、世界標準仕様――。2009年夏、こんな特徴を備えたモバイルWiMAXの商用サービスがスタートする。ワイヤレスジャパン2008の基調講演に登壇したUQコミュニケーションズ代表取締役の田中孝司氏がサービスのビジョンと目指す方向性について説明した。

[後藤祥子,ITmedia]
Photo UQコミュニケーションズ 代表取締役の田中孝司氏

 広帯域・大容量、高速モビリティ、常時接続環境、世界標準仕様――。こんな特徴を備えたモバイルブロードバンドサービスが、2009年の夏にスタートする。下り最大40.4Mbpsという高速モバイル通信を実現するモバイルWiMAXだ。

 このモバイルWiMAXを手がけるUQコミュニケーションズ代表取締役の田中孝司氏がワイヤレスジャパン2008の基調講演に登壇し、サービスの位置付けやビジネスモデル、今後の展開について説明した。

sa_uq03.jpgPhoto モバイルWiMAXは「いつでも、どこでも、誰でも、あらゆるデバイスでブロードバンドに接続できる環境を用意する」と田中氏。「どのデバイス、どの端末でも接続できる」ことや、世界標準に準拠した仕様のため「日本で開発した端末を海外に輸出できる」ことが従来型のキャリアと異なる点だと強調する

sa_uq05.jpgsa_uq06.jpgPhoto モバイルWiMAXの大きな特徴は「広帯域・大容量」「高速モビリティ」「常時接続環境」「世界標準仕様」の4つ。高速モビリティについては「時速200キロ超えで最大十数メガbpsの通信が可能」(田中氏)とし、新幹線でも使える環境を目指す

固定なみの高速通信を出先でも――LTEの世界を先取り

 家庭内で利用しているインターネット環境を外出先でも――。これが、モバイルWiMAXを手がけるUQコミュニケーションズが目指す世界だ。現在、外出先で利用できるネット接続環境は3GやWi-Fiが主流となっているが、いずれも固定通信の速度に慣れたユーザーにとっては不満な点も多い。「無線LANはブロードバンドでインターネットに接続するには使い勝手がいいものの、いったん外に出るとなかなか接続環境がない。(固定に比べて)3Gやスマートフォンのユーザーは“これがインターネットか”というようなストレスを感じている」(田中氏)といった具合だ。

 3Gのデータ通信が、いまだ接続に手間がかかるダイヤルアップの世界であり、また高速通信と省電力性を兼ね備えたプラットフォームやデバイスが不十分である点もネックになっていると田中氏は指摘。こうした不満を解消できるのがモバイルWiMAXだと胸を張る。

 「モバイルWiMAXは、今の無線LANの延長線上にあるもの。家庭内で無線LANを使ってブロードバンド接続している環境が、外でも利用可能になる。ダイヤルアップがADSLやFTTHになったように、モバイルでも“すぐつながる世界”を実現できる」(田中氏)

 プラットフォームについても、「(同社に出資する)インテルと一緒にローパワーでハイスピードのプラットフォームを提供する」という。スマートフォンでのインターネットの使い勝手は、必ずしもPCの環境と同じではない――。そう感じている人の問題を解決できると自信を見せた。

 なおモバイルWiMAXの速度は、サービス開始当初は下り最大40.4Mbpsで、これはドコモが導入を予定しているLTEとほぼ同等の通信速度を先取りして提供する格好になる。「WiMAXの10MHz幅の通信速度は、LTEとほぼ同じ。20MHz幅ではIEEE802.11a/gと同等のスピードを出していく」(田中氏)

sa_uq08.jpgsa_uq09.jpgPhoto WiMAXの位置付け(左)とHSDPA、EV-DO Rev.Aとのパフォーマンス比較(中)、Wi-Fiとの比較(右)

2011年度末には90%のエリアカバー、屋内も積極的にカバー

 出先で快適に無線データ通信を利用するためには、カバーエリアの広さが重要なポイントになる。UQコミュニケーションズでは、2009年2月の試験サービス時には東京23区/横浜/川崎、2009年夏の商用サービス開始時には中部と関西圏、2009年度末には全国の政令指定都市をカバーする計画だ。「KDDIの基地局に一緒に載せてもらう形でエリアを広げる」ことから、早期のエリア展開が可能であるとし、2010年に76%、2011年末に90%のエリアカバー率を実現したい考えだ。

 また屋内エリアについても、小型の基地局を配備して積極的な展開を図るとした。

sa_uq11.jpgPhoto エリア展開のロードマップ(左)と屋内展開(右)


“ケータイでもPCでもない、その間の市場”を狙う

 UQの調査では、7割が「モバイルWiMAXに魅力を感じる」と回答するなど、期待が大きい。その理由は、ケータイインターネット、データ通信カード、固定インターネットでユーザーが感じている不満をモバイルWiMAXが解消できるからだと田中氏は説明する。

 「(ケータイインターネットには)“ケータイの小さな画面でストレスを感じながらインターネットを使うのは勘弁だ”“なんちゃってインターネットはいらない”という不満の声があがっている。PCのデータ通信カードにしても、遅い3Gのカードを差して高い料金を払うのはたまらない。また今どきの学生は家に電話回線を引かないが、インターネットを使うためには固定回線を引かなければならないことに不満を感じている」(田中氏)

モバイルWiMAXは、無線LANのようにPCへの組み込みが進むと予想され、固定とほぼ同等の通信速度を利用でき、「ADSLなみの価格帯を検討している」(同)モバイルWiMAXなら、こうした不満を解消できるというわけだ。

sa_uq23.jpgPhoto ケータイインターネット、データ通信カード、固定インターネットの不満点をWiMAXが解消できると田中氏。これまでブレイクしなかった“ケータイとPCの中間”という新たな市場も開拓できると自信を見せた

sa_uq26.jpgsa_uq27.jpgPhoto WiMAXプロダクトの投入計画とエンベデット化の推進計画

 無線LANの延長線上の技術であることから、当初はPCへの搭載からスタートするモバイルWiMAXだが、田中氏はMID、UMPCといった新たなデバイス市場の創出にもつながると見ており、これがケータイインターネットユーザーの不満を解消できると予測する。

 携帯電話市場では可搬性に優れた端末のニーズが高く、“携帯の小さな世界”からスマートフォンが出てきてはいるものの、PCインターネットの快適さを実現するのが困難なのが現状だ。一方のPCは、インターネットは使いやすいものの、可搬性の面ではモバイルに劣る。「可搬性が高くて使いやすく、高速な世界を作っていこうということで、真ん中の世界を最初に立ち上げる。狙うのはケータイでもなくPCでもない、その間の市場。(商用サービスが始まった直後の)2009年秋頃に、スマートフォンでもPCでもない、WiMAX時代のデバイス(MID)が出せたら、と思っている」(田中氏)

sa_uq17.jpgPhoto WiMAXの利用シーンとサービスの展開イメージ

sa_uq32.jpgsa_uq33.jpgPhoto UQコミュニケーションズは、さまざまな業界のMVNOパートナーと協力して新たな価値の創出を目指す(左)。UQのインフラでサービスを展開したいと申し入れた企業は7月15日時点で57社(中)。今後の課題として田中氏は、ネットワークの早期構築とリーズナブルな料金設定を挙げた。「本当の意味でWiMAXを使っていただくためには、ADSLと同じような料金レベルに持っていかなければと思っている」(同)

sa_uq19.jpgsa_uq20.jpgPhoto 広告配信やカーソリューションなどの業界からの引き合いが多いと田中氏。株主の1社であるJR東も積極活用するとしている

モバイルWiMAXの試験サービスはこうなる

 田中氏は、モバイルWiMAXの導入計画にも言及。2009年2月に(試験サービスの利用者に)モバイルWiMAXを利用できるカードを配布し、「夏の商用サービスまでは通信料金を無料で提供したいと考えている」とした。「カードもおそらく無料で配る」(同)

 2009年の夏頃には複数メーカーのPCが「すでにWiMAXが入った形で」発売される予定だという。

 なお、対応デバイスの開発については、「試験サービスで提供するデータカードのように、新たな市場を切り開きたい時にしかUQブランドの端末を出す予定はない」とし、メーカーやMVNOに任せる方針だ。「黒子になって、モバイルWiMAXが多様多種な形で提供できる方向に持っていきたい」(同)




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