インタビュー
» 2008年07月25日 20時23分 UPDATE

iPhoneとは真逆のアプローチ:アナログのアプローチで感性に訴える――「ガッキ ト ケータイ」が目指す新たな世界 (1/2)

au design projectの最新コンセプトモデルは、ヤマハとのコラボレーションから生まれた「楽器ケータイ」。楽器とケータイのコラボはケータイのあり方をどう変えるのか。端末開発を担当したヤマハデザイン研究所の田中聡一郎氏に聞いた。

[後藤祥子,ITmedia]
Photo ヤマハデザイン研究所 デザインAVプロダクトマネジャーの田中聡一郎氏

 7月25日朝11時、KDDIデザイニングスタジオではライブセッションが繰り広げられていた。軽快なドラムのリズムやトランペットの音色が流れる中、プレーヤーが手にしているのは、楽器のようなケータイのような不思議なデバイス。そう、これはau design projectの最新コンセプトモデルとして登場した「楽器ケータイ」を使ったセッションだ。

 携帯電話の魅力を引き出す要素が、機能からデザイン、さらにユーザビリティや感性に移り変わる中“時代を先取りするケータイ”を提案するau design projectのコンセプトも変化している。前回のau design projectのコンセプトモデルは「ユーザーインタフェースデザイン」をテーマとし、ケータイの新たな魅力を“親しみやすいユーザーインタフェース”という切り口で表現。7月25日から展示を開始した新たなコンセプトモデルは、「インタラクションデザイン」をテーマに据え、楽器とケータイの融合がもたらす“これまでにないユーザー体験”を提案する。

 今回登場したコンセプトモデルは、ヤマハデザイン研究所とのコラボレーションによる6端末。端末開発を手がけたヤマハデザイン研究所の田中聡一郎氏に、各端末の特徴やこだわり、楽器とケータイのコラボレーションが生み出す新たなコミュニケーションの可能性について聞いた。

  • 楽器ケータイを使ったセッションの様子

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ケータイの力を借りて、楽器をもっと身近な存在に

ITmedia ケータイと楽器を融合させるというテーマのもと、6種のコンセプトモデルを開発されたわけですが、実際に手がけた上で新たな発見はありましたか。

田中氏 普段、私たちは楽器をデザインしているのですが、ご覧になると分かるとおり、楽器は大きいものなんですね。人間の手のサイズは決まっていて、それで扱える大きさ――ということになると、“楽器のサイズは小さくならない”と思っているわけです。

 しかしその一方で、“楽器を持ち歩きたい”という思いもあるんです。私はドラムを叩くのですが、どこかに持って行きたいと思うこともあるんですね。でも、そういうものはない。“とてもコンパクトにまとまる可能性”を、うまく楽器に落とし込めれば面白いものができるだろうと、ずっと前からみんなで思っていたのです。

 そんな折に、たまたま(au design projectで)チャンスをいただいて、ケータイの中に楽器のエッセンスを封じ込めるという取り組みができました。

sa_adp04.jpgPhoto 「Band in my pocket」(左)と「Sticks in the air」(右)。Band in my pocketはその名の通り“ポケットの中のバンド”というコンセプトから生まれた端末で、トランペット、ハーモニカ、ベース、トロンボーン、ベース、シンセサイザーのパーツをケータイに取り付けて使う。マイクに向かって歌うとそれに合わせて音が鳴り、それぞれの楽器の操作でさまざまな効果を付けられる。Sticks in the airは、いわゆるエアドラム。ドラムを叩くようにケータイを振ってリズムを刻む。スティックをしっかり止めないと「タンッ」というキレのいい音にならないところがニクい

 実際に開発を始めたところ、例えば「Band in my pocket」のトランペットは、ピストンバルブのリアルなサイズをケータイに入れることで、手の大きさに依存する使いやすさをキープしながら、あとは全部そぎ落としたような楽器ができました。それが意外と“トランペットとして使える”という発見があったのです。

 (ドラムのスティックを模した)「Sticks in the air」のような、単に2つに分けた棒だけのものでも、2つあることでエアドラムのように楽しめる。ソリューションはシンプルなのですが、案外、底の深さを出せるという面白い結果になりました。

 楽器にとって“モビリティ”はいつも障害になっていて、ヤマハでも「サイレントシリーズ」のように、できるだけ大きなところを取り除いて、軽くコンパクトにするシリーズを出しています。でも、やはりここまでは思い切ってできなかった。これは“ケータイの力を借りてできた”と思います。

ITmedia 素材の質感も、楽器に忠実なものに仕上がっています。

田中氏 今のデジタルツールはプラスチックに塗装しているものが多く、これからやっとさまざまな素材へのトライが始まるのでしょう。楽器はそもそも、手に当たるところは優しい手触りの木にしていたり、精度が必要なところには金属を使ったりと、音に合わせて最適な材料を使っています。“長く使える道具”を作るために、ふさわしい材料をあしらえれば、長く愛着をもって使いたくなるモノができてくるのではないかと考えました。

 今回のコンセプトモデルでは、金属にしたいところは金属を使ってますし、木を使うことにも(Sticks in the airで)挑戦しました。「Key to touch」の鍵盤も、昔のピアノの鍵盤に使われていた象牙を模したタッチになるよう、表面処理を工夫しています。それぞれに“質感で人が愛着をもてるようなきっかけをつくろう”というトライをしています。

 (エレキギターとケータイを融合させた)Sttrings for fingersにも、ギター弾きにはピンと来るエッセンスを入れています。ギターの弦を張った周辺の金属の部分は、ギターにテンションをかけるブリッジという部品の質感をうまく使って重厚感と柔らかさを出しています。

sa_adp09.jpgPhoto 「Sttrings for fingers」。普段はPDAのようなタッチパネル端末で、ディスプレイ部をスライドさせるとギターの弦が現れる(左)。「Key to touch」はストレート端末を開くと中からキーボードが現れ、場所を選ばず演奏を楽しめる(右)

ITmedia 「Box to play」には楽器らしい要素が見られませんが、どのような特徴を持った端末ですか。

田中氏 これは楽器でも何でもなくて、ふだん何気なくやってしまう“ペン回し”みたいな行為を、ケータイの操作や機能の切り替えに使おうという試みです。知らないうちに繰り返している行為をトリガーにしたインタラクションができないかと考えました。

 Box to playは、普段はストレート型の端末なのですが、指を差し込んで送っていくような操作をすると、メニューや機能が切り替わります。ボタンやメニューから機能を呼び出すのではなく、パタっと送ると電話になり、もう1回パタっとやるとMP3プレーヤーになる――といった具合です。何気ない繰り返しの行為に機能を紐付けして、スイッチのように使うアプローチですね。

Photo 「Box to play」は普段はストレート型の端末で、中央部に指を入れると写真のような形になる。キャタピラのように送り出すことで機能が切り替わる仕組みだ。円形のタッチセンサーはMP3プレーヤーの操作を行うもので、中央にカメラが搭載される。このセンサーはDJがレコードをスクラッチするように内蔵の音源をスクラッチで加工できる。なお、内側はスピーカーになっている

 「Trio in your hand」も、楽器というアプローチではなく、操作部分を1つ足すことで、“ケータイから急にケータイではない新しい道具に生まれ変わる”ことをイメージした端末です。この端末は、普段は折りたたみ型なのですが、折りたたみ部分を動かすと操作部分が2つになります。中央に画面があって、左右下方向に操作部があるという形から、新しい作法や使い方が生まれそうな気がするのが面白いかなと思いました。

Photo 「Trio in your hand」。折りたたみケータイにもう1つ操作部を加えることで、新たな操作や使い方を生み出そうというアプローチ。「キーで音を出し、センサー部でスクラッチするといったDJ的な利用もできます」(田中氏)
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