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» 2008年08月19日 08時51分 UPDATE

神尾寿のMobile+Views:“2年間つきあうケータイ”のデザイン、大切なのは普遍性と衝動性――Kom&Co. 小牟田氏に聞く(後編) (1/2)

キャリアの販売方式が変わったことから、ユーザーの携帯との向き合い方も変化している。頻繁に端末を買い替える時代から、“2年間つきあえる”ケータイを探す時代になった今、ケータイデザインには何が求められているのか。

[神尾寿,ITmedia]
Photo Kom&Co.の小牟田啓博氏

 その時々で、最も普遍的な価値を現す「スタンダード」。これは作り手であるクリエイターと、消費者であるユーザーが、その普遍性をお互いに認めたときに初めて生まれる“価値”である。そして、あらゆるアートやプロダクトがそうであるように、一時の前衛的存在になるよりも、スタンダードになることの方が実は難しい。なぜならそれは、多くの人々の暗黙の合意、コミュニケーションの上にしか成立しないからだ。

 携帯電話のデザインにおいて、今、この「スタンダードの向上」が重要であると、Kom&Co.代表取締役社長の小牟田啓博氏は強調する。シンプルで優れたデザインを持ち、今後のケータイにとって灯火になるもの。次世代に向けたスタンダードが必要だというのだ。

 では、その“スタンダードなデザイン”を考える上で、何が重要なのか。今回のMobile+Viewsでは、Kom&Co.の代表取締役社長を務める小牟田啓博氏にケータイデザインの今後について話を聞いた。

特徴的な機能をプレーンなデザインで包み込む

 周知のとおり、小牟田氏はKDDI在籍時代に「au design project」を立ち上げ、携帯電話におけるデザインの重要性を世に示した人物である。KDDI卒業後は自身のスタジオとなるKom&Co.を設立し、プロダクトデザイン全般で幅広く活躍。携帯電話についても、現在は“キャリアの外”からフラットな立ち位置で、デザイン分野のコンサルティングを手がけている。直近では、ソフトバンクモバイルの端末デザイン向上に協力した実績があるなど、携帯電話のデザインプロデュースにおいて、業界の第一人者といえるだろう。

 その小牟田氏の眼に、今年の夏商戦の注目ポイントはどのように映ったのだろうか。

 「まず先の夏商戦モデルで言いますと、各キャリアのスタンスというか、立ち位置が現れているなと思います。

 まずNTTドコモは、よくも悪くも『万人向け』。ラインアップ全体の裾野を大きく取り、個々の端末を見ると、どちらかというと“嫌われないようなデザイン”に終始しています。

 それに対して、auとソフトバンクモバイルはテーマが明快ですね。auは『au Smart Sports』を訴求し、そのために「Sportio」や「G'zOne W62CA」といった個性的な端末を投入している。さらにラインアップ全体でテーマを明快に打ち出したのがソフトバンクモバイルで、『夏らしさ』と『女性』にターゲットを絞りきり、一見するとラインアップ全体がまとまって見えるのですが、個々の端末の個性もしっかりと打ち出しています」(小牟田氏)

Photo ドコモの906iシリーズ
Photo ドコモの706iシリーズ
Photo ソフトバンクモバイルの夏モデル

 その中で、小牟田氏が特にフォーカスするのが、「防水」へのアプローチである。

 「これまで防水機能というと、タフネスやビジネスといったイメージが強かったのですが、ここにきてもっと普通のケータイにも防水機能が盛り込まれるようになってきました。しかも、『824SH』や『823P』を見れば分かるとおり、防水だからといって、デザインで妥協しなくてすむようになってきています。

 防水のように、これまで携帯電話では『特別』だった機能でも、プレーンなデザインに包み込んでしまう。これが今後のスタンダードを考える上で、重要な要素なんです」(小牟田氏)

 カメラやワンセグ、高速データ通信など、携帯電話には機能的・性能的な優位性や特長になる部分はある。デザインの手法としては、その機能・性能を目立たせるためのフォルムを与えるという選択肢もあるが、今後の“ケータイを長く使う”時代においては「むしろ(機能・性能的な高付加価値を)際だたせず、フラットにしてしまうデザインが求められます」(小牟田氏)という。

 「防水の(デザインでの)あしらい方を例にしますと、823Pなどは日常シーンでの防水が素直にイメージできるまとめ方をしています。細かな部分で見れば、色合いや質感を出すための塗装技術にはものすごい労力がかかっているのですが、それを際だたせないような腐心もしています。そのようなアプローチが、これからのケータイにとって大切です」(小牟田氏)

Photo 823P

素材とカラーで同一モデルで“違い”を出す

 もう1つ、小牟田氏が今後のデザイントレンドを見る上で注目すべきポイントとするのが、同一モデルでの「作り分け」が従来よりさらにレベルアップした点だ。具体的には、824SHにそれを見ることができる。

 「824SHでは『Elegant Line』5色と『Active Line』6色で、同一モデルの中に2つの“顔”があります。実際に手を取ると分かりますが、素材感を変えることで、この2つのラインは異なるモデルのように見えます。これは(824SHの)ベースデザインが高い完成度を持っていないと、できないことなんです」(小牟田氏)

Photo 824SHのActive Line(上段)とElegant Line(下段)

 1つのベースデザインの意匠を変えて、異なる顔を見せる――。これはクルマ時計などでトレンドの手法だ。例えば、最新型のメルセデス・ベンツ Cクラスでは、伝統的なスリーポインテッドスターをボンネット上に配置する「エレガンス」と、フロントグリルの中に力強く内包する「アバンギャルド」を、同一モデルの中で選べるようになっている。実車を並べて見ると分かるが、このデザイン表現の違いで、同じベンツCクラスがまったく違うクルマに見える。

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