インタビュー
» 2008年09月05日 02時00分 UPDATE

開発陣に聞く「WILLCOM D4」 前編:「WILLCOM D4」「WILLCOM CORE」に託されたウィルコムのメッセージ

ウィルコムが発売したシャープ製の小型ノートPC「WILLCOM D4」。スマートフォンとは別にPCをラインアップする理由とは何か、「WILLCOM CORE」に隠された真の狙いを含めて開発担当者に聞いた。

[平賀洋一,ITmedia]

 ウィルコムが発売したシャープ製の「WILLCOM D4」。W-SIMを内蔵するPHS端末だが、メインディスプレイに5インチの1024×600ピクセル表示対応タッチパネル液晶を搭載し、OSにWindows Vista、CPUにインテル製のAtom Z520(1.33GHz)、1Gバイトのメインメモリーと約40GバイトのHDDを採用した小型ノートPCだ。

 なぜウィルコムとシャープはPHS端末としてUMPCを開発したのか、スマートフォンの「WILLCOM 03」に引き続き、ウィルコム サービス計画部課長の須永康弘氏に話を聞いた。

photophoto 「WILLCOM D4」。QWERTYキーボードを収納したViewスタイル(写真=左)と、QWERTYキーボードを引き出したInputスタイル(写真=右)

「WILLCOM CORE」で何をするのか

photo ウィルコム サービス計画部課長の須永康弘氏

 ウィルコムは2009年の春から、次世代PHS「WILLCOM CORE」サービスを一部地域で開始する。通信速度は、現行PHS(最大800bps)やHSDPA(最大7.2Mbps)を上回る上下20Mbps程度から最大100Mbps以上と言われ、同時期にスタートする「モバイルWiMAX」とともにモバイルブロードバンドサービスとして期待されている。

 須永氏はWILLCOM D4の開発を前に、“ワイヤレスブロードバンドを使って何をするのか”という疑問に答えられる、WILLCOM COREが指し示す新しい世界を表現するデバイスが必要と考えたという。

 「WILLCOM COREでは、モバイル環境でも自宅のブロードバンド環境と同じようなスピードでデータ通信ができます。そのため外出先でも、YouTubeなどPCで人気のWebコンテンツをそのまま楽しめるのです。我々はこれを“コンテンツのFMC”(携帯と固定を融合したサービス)と呼んでいますが、家庭のデスクトップPCと同じように使える新しいモバイル端末を、今から用意するべきと判断しました」(須永氏)

 PC向けのリッチコンテンツをフルに楽しむことは、WILLCOM 03などスマートフォンに使われているWindows Mobile OSや、ARM互換プロセッサでは難しい。例えばYou Tubeやニコニコ動画を見る場合、PCでは常に最新のFlashプラグインがサポートされるが、スマートフォンでは簡易版のFlash liteがかなり遅れて登場するのが現実だ。ドコモの音声端末には、専用のモバイル向けYouTubeサイトが用意されているが、他キャリアの端末では利用できない。

 また須永氏は、コンシューマ向けのモバイル市場は“バリエーションの世界”になっていることも挙げた。ニーズが多様化したことで、どんなサイズや形状がベストなのか、一概に言えなくなってきている。スマートフォンよりパワフルで、ノートPCよりも持ち歩きやすい――。こうした特徴を提案することで、新しいニーズを掘り起こすのも、WILLCOM D4に託された期待の1つだ。

 「ハードウェアに制限があるモバイル環境では、たとえ通信速度が速くてもリッチコンテンツを再生するためのプラグインが遅れてサポートされます。ならば、スマートフォンのように携帯できるWindows PCを作れば、フルにリッチコンテンツを楽しめると考えました。また、競争が激化するモバイル端末市場、データ通信市場の中で、これくらいのインパクトがある製品をださなくては、WILLCOM COREの先進性を理解してもらうのが難しいと思います」(須永氏)

photo ワイヤレスジャパン2008に参考出展されたWILLCOM CORE対応W-SIM

 とはいえ、今のWILLCOM D4が対応する移動体通信方式は最大204kbpsまでのPHS通信のみ。USBやBluetooth経由で他キャリアのデータ通信サービスを利用することも可能で、自宅や会社、公衆無線LANスポットでは無線LAN(IEEE802.11b/g)によるネット接続も可能だが、WILLCOM COREを見据えたというWILLCOM D4の真の実力は発揮できていないのが現実。ではWILLCOM D4ユーザーは将来、どんな形でWILLCOM COREを利用できるのだろうか。

 「WILLCOM COREに対応したW-SIMの開発は現在チャレンジ中です。いずれは、現在同梱しているW-SIMと差し替えることで、WILLCOM COREを利用できるようになります。最初はWILLCOM CORE対応のデータ端末をUSB接続するスタイルになるかもしれませんが、いずれにせよ、WILLCOM D4の製品ライフサイクルに間に合うようにWILLCOM COREを提供します」(須永氏)

PCとして、モバイル端末としてギリギリのサイズ

photo A4ノートPC、B5ノートPCと、WILLCOM D4の比較

 WILLCOM D4発表の際、そのデザインと端末コンセプトから、これは「W-ZERO3(WS003SH)」の後継機種ではないかという声が聞かれた。最新のWILLCOM 03は、W-ZERO3から派生した「W-ZERO3[es]」「Advanced/W-ZERO3[es]」の進化版であり、大型タッチパネルでよりPCライクに使うというW-ZERO3の後継モデルはその後発売されていない。

 須永氏は、WILLCOM D4がW-ZERO3の後継機種であることを否定すると同時に、将来登場するW-ZERO3の純粋な後継機種と、WILLCOM D4の後継機種が同じになる可能性を明かした。

 「将来、W-ZERO3のような大型のタッチパネルを備えるスマートフォンと、WILLCOM D4のような超小型PCの境目がなくなっているかもしれません。PC用のOSを採用したケータイサイズのデバイスが出ているかもしれませんし、ケータイOSを採用したノートPCサイズのデバイスが登場する可能性もあります。法人市場ではともかく、コンシューマ市場では何かのプラットフォームに依存することはないでしょう」(須永氏)

 WILLCOM D4がW-ZERO3を意識しているのは、そのサイズだ。須永氏はW-ZERO3と同じ厚さになるようWILLCOM D4を開発したという。また、幅や高さについては、搭載ディスプレイの選択がポイントだったと振り返る。

photophoto WILLCOM D4とW-ZERO3(WS003SH)。標準バッテリーを付けたWILLCOM D4の厚さは約25.9ミリで、W-ZERO3の厚さ約26ミリとほぼ同じ。ただし、WILLCOM D4に大容量バッテリーを付けると厚さは約35.3ミリになり、9.4ミリ厚くなる

 「Windows Vistaを使うなら、ディスプレイは1024×768ピクセル程度の解像度が必要です。そこで、3インチから7インチくらいまでのパネルを用意して、どの大きさで文字が読みにくくなるのか、そのサイズ感をチェックしました。見比べていくと、4.8インチが微妙なラインでした。この寸法を境に、実用的かどうかが分かれたのです。そこで、1つ上の5インチパネルを採用することにしました」(須永氏)

 なお、当初用意した中で最大の7インチを採用すると、本体の重さが1キロに近づいてしまうという。その場合、当初企画したモバイル端末としてのバランスが崩れてしまう。持ち歩きやすさ、必要な解像度、文字の読みやすさを勘案して、このサイズになったのだ。

 次回の開発陣に聞くWILLCOM D4後編では、ノートPCとして重要なキーボードの使い勝手、電話としてかかせない通話機能、そしてWindows Vistaを採用した理由やライバルと目される他社のMIDやUMPCとの違いを聞く。

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