韓国の携帯キャリアは今、待受画面にさまざまな情報を配信するウィジェットサービスを充実させている。各キャリアとも便利さを全面に打ち出し、インターネット上のサービスに直結するツールを提供している。そんなウィジェットを実際に使ってみた。
韓国のウィジェットサービスは、2007年に各社がこぞって開始した。3月にLG Telecom(以下、LGT)が「今日は?」というサービスを始め、4月にはSK Telecom(以下、SKT)が「Tインタラクティブ」を、9月にはKTFが「SHOW ウィジェット」をスタート。今では広くユーザーに認知されはじめている。
LGTの“今日は?”は、月額900ウォン(約86円)の基本料金で、ニュースや天気、運勢などの基本情報を待受画面上に表示。ニュースや天気などの基本情報とは別に、ショッピングやニュース、求人など、より多様で専門的な情報をチェックできる「選択チャンネル」サービスを用意している。
選択チャンネルに加入すると、各チャンネルに直結するリンクが待受画面上に現れる。チャンネルは、オンラインショッピング最大手の「Gmarket」や「GSホームショッピング」、経済/英字新聞、求人サイト「ジョブコリア」、人気スターへのファンレターを送れる「UFO Town」などさまざまだ。選択チャンネルの中には、利用が有料のものもある。実用性の高いサイトや著作権管理が必要なサイトは有料である一方、無料利用できるショッピングモールでは、割引クーポンを発行するなど、お得さをアピールしている。
KTFのSHOWウィジェットは“DIY”をコンセプトに、特定サイトへリンクする複数のアイコンを画面の好きな位置に配置できるなど、カスタマイズ性に優れる。特に最近流行中のタッチパネルケータイでは、ユーザーが使いやすい場所にアイコンを配置できる機能が重宝する。アイコンを指でドラッグするだけで上下左右に、自由に移動・配置できるからだ。
またはSHOWウィジェットは、PCと携帯電話を連動した機能も提供している。PCのSHOW ウィジェットサイト上で、携帯電話上のアイコン配置を操作できるようになっている。必要ないアイコンを削除したり、アイコンの配置を変えたりといったことが可能で、タッチパネル以外の音声端末を使う人には便利といえる。
SKTのTインタラクティブは、これまでもっとも多くのアップグレードを繰り返してきたサービス。天気やニュース情報を携帯画面上に送る基本的なサービスのほか、映画情報・チケット前売りサービス「Cizzle」や、音楽配信サービス「MelOn」などの自社サービスを生かし、これらの情報を毎日5〜10回ほど、自動で携帯電話に送るサービスも提供している。例えばCizzleであれば映画情報が、MelOnであれば、音楽関連情報が、携帯電話に自動的に送られてくる。
これに加え、最近「i topping」という新サービスが登場した。これは3種類の待受画面を利用できる「マルチパネル」方式を採用しており、もちろんアイコンを画面上に自在に配置できる。また、i toppingのPCサイト上で(待受画面上の)アイコンの位置を決めることも可能だ。
このほか、安いガソリンスタンドを知らせてくれるサービスやサッカーのパク・ジソン選手の情報を伝えてくれる「パク・ジソンウィジェット」、生活の知恵情報を掲載している「生活の知恵ウィジェット」など、豊富な数十種類の追加機能も提供している。
では実際に韓国のウィジェットはどんなサービスを提供しているのか。9月に新たなサービスが開始されたばかりの、SKTのi toppingを試してみた。i toppingの対応機種は今のところ、「SCH-W360」「SCH-W410」「SCH-W420」だけだが、9月中には20〜30機種、10月中には70機種以上で使用可能になるという。
専用のソフトウェアをダウンロードすると、待受画面に天気情報や時刻などのアイコンがいくつか現れる。またi topping最大の特徴といもいえる画面構成は、3つに分かれており、待受画面を3通りにくるくると変えられる。
i toppingをインストールすると、待受画面に時刻や天気情報などを表すアイコンが配置される。2ページ目には、SKTがモバイルインターネット上で料金情報や告知などを行う「M顧客センター」のアイコンがある。3ページ目はSKTによる告知やウィジェット情報が掲載される画面となっており、SKTおすすめのウィジェットインストールにつながる、ミニアイコンが表示されている。
i toppingは、天気情報や記念日など比較的単純な機能は、インターネットへの接続なしで自動で情報が更新される。一方で、ネット検索はもちろん、M顧客センターなどから提供される専門的な各種サービスは、利用のたびにインターネットに接続することになる。通信料が発生してしまうが、それだけに内容の濃さに期待できるサービスだ。
後から追加するウィジェットは、基本的なウィジェットよりもさらに個性的で実用的な機能を持ち合わせたものが多い。先に出たパク・ジソンウィジェット、生活の知恵ウィジェットのほか、「恋愛探し(恋占い)」「当選ロト(当選番号案内、現在位置に近いロト販売店探し)」「禁煙(禁煙のための情報提供)」、電子辞書、日程管理など、多種多様だ。証券関連やショッピング関連など、まだ準備中のウィジェットも多いが、これらの数がそろえばウィジェットを選ぶ楽しみも増えそうだ。
先述のとおり、i toppingはPCと連動して利用することも可能だ。i toppingサイトに加入すれば、PCと携帯電話とを連動したウィジェット操作ができる。
i toppingサイトの「ウィジェットステーション」で公開されているさまざまなウィジェットから、好きなものを選んで買い物かごに入れ、携帯電話を模した画面に配置する。その後、PCと携帯電話とを同期すると携帯電話に反映される。
今のところi toppingは、ウィジェット追加のためにインターネット接続しても、通信料はほとんど無料だ。ウィジェット自体のコンテンツ料も、専門性や実用性の高いものでない限りは無料で提供されている。
これはKTFでも同様だ。実用的かつ専門的なウィジェットは料金が発生するが、コンテンツ料は500ウォン前後(約48円)、通信料も3.5ウォン(約0.34円)/1Kバイトとそれほど高くはない。とはいえ、これも積み重なれば高額になるので、ヘビーユーザーは定額制と合わせて利用する必要がありそうだ。
またPCと携帯電話とを連動して利用できる点も便利だ。画面上のアイコン配置を自由にできるだけでなく、今後追加したいウィジェットを買い物かごに一時的に入れておけるので、ウィッシュリストのように整理しておくことができる。
逆に物足りないと感じたのは、ウィジェット自体の数と、サービスそのものの充足感だ。準備中のサービスが多かったほか、コミュニティ関連やショッピング関連のサービスにいたっては、まったくない状態。また、生活の知恵ウィジェットなどは、単に1日1回役立つ豆知識を表示するだけで見応えがない。せめてユーザーの関心分野に関する豆知識や雑学など、コンテンツの掘り下げがほしかった。
これまで韓国では、モバイルインターネットの利用がそれほど多くなかった。こうした中、ウィジェットサービスは待受画面上にさまざまな情報につながるリンクを表示し、インターネット利用を大い促進できるという意味で、利用拡大に向けた待は大きい。
さらに、急速に普及しているタッチパネルケータイであれば、アイコンを好きな場所に配置したり、追加/削除が簡単なため、自分だけの待受画面を演出することもできる。ウィジェットの利便性が「インターネット接続=面倒・課金の心配」というイメージを超える可能性もあり、今後の成長を期待したいモバイルサービスの1つといえる。
プログラマーを経た後、雑誌、ネットなどでITを中心に執筆するライターに転身。現在、韓国はソウルにて活動中で、韓国に関する記事も多々。弊誌「韓国携帯事情」だけでなく、IT以外にも経済や女性誌関連記事も執筆するほか翻訳も行っている。
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