秋冬モデルに“自信あり”――KDDIの小野寺社長

» 2008年09月17日 20時46分 公開
[後藤祥子,ITmedia]
Photo 社長会見に登壇した小野寺正社長。会見の冒頭で「じぶん銀行」の推移について「9月はじめの段階で口座の開設数が10万件を超え、ほぼ計画通り。今後はクレジットカードの発行やカードローン、外貨預金などサービスの品揃えを増やす」と説明した

 新たな販売方法の導入による端末販売の冷え込みやコンシューマー市場の飽和、キャリア間の競争激化など、ケータイキャリアを取り巻く環境は厳しさを増している。KDDIもこうした影響と無縁ではなく、以前ほどの好調さを維持しているとは言い難い状況だ。

 こうした中、9月17日に行われた社長会見で小野寺正社長が、auを取り巻く現状と今後のビジョンについて説明。“auらしさ”を取り戻すための施策の一端をかいま見せた。

端末の総販売台数は前年比7〜8割

 各キャリアが端末代金と通信料金を分ける“分離プラン”を導入して以来、端末の販売台数が冷え込む状況が続いている。KDDIもその影響から、端末の総販売台数は「前年比で7〜8割」(小野寺氏)という状況で、小野寺氏は冬商戦についても「前年比8割程度に落ち込むのではないか」と予測する。

 さらにauは、他キャリアに比べて「新たな取り組みが遅れた」(小野寺氏)ことから、以前に比べて“auらしさ”が失われ、純増数で他キャリアの後塵を拝しているのが現状。また、7月には番号ポータビリティで初の転出超過となるなど、かつての好調さは影を潜めている。

 こうした課題をKDDIはどう解決しようとしているのか。1つは今後の端末ラインアップの強化だ。冬商戦に向けた端末ラインアップについて小野寺氏は「(夏モデルは他キャリアに比べて魅力がなかったものの)秋冬モデルについては、かなりのところを出せるのではないか」と自信を見せた。

 もう1つは法人需要の喚起だ。KDDIは以前から法人向けソリューションに注力しており、MCPCアワードでは同社のソリューションが3年連続でグランプリを受賞するなど高い実績を誇っている。「ソリューションをからめたところではかなり先行していると思っており、成果を上げている」(小野寺氏)という強みを生かし、2009年春に投入するスマートフォン「E30HT」との連携で、法人市場でのシェア拡大を狙う。これは「法人向けソリューションをからめることで、スマートフォンのいいところが出てくる」という考えに基づいた戦略で「ケータイ以上の付加価値を見いだせるかどうか。それがなければ(スマートフォンを投入する)意味がない」(同)と、“auならでは”の法人サービスの提供を目指す考えだ。

 また、「端末の無料提供が当たり前で、あとは料金をどれだけ安く提供できるかという乱売合戦になっている」という中小規模の法人向けには、主な利用が音声であることから「機能を限定したローコスト端末を開発する必要があるかもしれない」という見方も示す。同社はこれまで、法人専用端末として防水・タフネスケータイや無線LANケータイなどのハイエンドモデルを投入しているが、よりニーズとコストに見合ったローコスト端末を用意する可能性もあるとした。

 3つ目として挙げるのは、“2台目需要”の喚起だ。ドコモの「2in1」、ソフトバンクモバイルの「ダブルナンバー」のような“1台で2回線”を利用できるサービスを導入する可能性を問われた小野寺氏は、「本当に需要があるかどうかを疑問に思っている」とし、個人用途とビジネス用途で使い分けるなら「2台持っていただいた方が使い勝手がいい」という。それは(1)アプリの追加や機種変更などは、企業が管理する端末を別に持つ方が利便性が高い(2)遠隔操作によるセキュリティなどの法人向け機能を提供する「ビジネス便利パック」のようなサービスは、個人と法人の共用では利用しづらい といったことが理由だ。

 2台目需要については、個人と法人の使い分けだけでなく、個人利用のニーズもあると小野寺氏。「若者には“ファッションに合わせた端末を持つ”というニーズもあるかもしれない。現場には“早くそういう端末を開発しろ”といっているが……」

 なお、2in1的なサービスについても、市場が飽和する中ではニッチな市場も拾っていく必要があることから「考えなければならないのも事実」と付け加えた。

ケータイ市場は“少量多品種”時代へ

Photo 「フルチェンケータイ re」をサザンオールスターズ仕様にカスタマイズした「サザンケータイ」は3000台の抽選販売に10倍の応募が殺到したと小野寺氏。「(最小ロット)数が少なくてもペイできる面白い仕組みで、さまざまなコラボの話をいただいている」(同)

 キャリアの好調さを示す指標として、“純増数”が取りざたされがちだが、携帯市場を取り巻く環境が激変する中、“回線数だけを追っていいのか”という疑問が残ると小野寺氏は指摘する。「回線数が目安になるのも事実だが、極端にARPUの低い顧客を大量に獲得するのがいいのかというところもある。利益面と回線数のバランスをどう取るかが重要になる」(小野寺氏)

 それをうまくバランスさせるためにも、「加入していただいた方に、どう使い続けてもらうか」が重要になるという見方だ。「この部分は、いろいろな意味で“まだまだ”だと思っている」(小野寺氏)。

 継続利用を促す施策として検討しているのは、「料金プランを分かりやすくすること」だ。携帯キャリアの料金体系が、ほぼ横並びになりつつある中、「今の時点で料金をさわらなければならない――ということはない」としながらも、分かりやすさの面では改善の余地があるとし、「分かりやすいパッケージがあるなら検討する」という。

 端末面では、携帯電話が“少量多品種”の時代に入ったとし、1つの端末の外装や機能をカスタマイズできる「フルチェン」「ナカチェン」で、こうした需要に対応できると話す。「例えばPCを買ったときに、自分で設定できない人はショップでやってもらう。携帯電話もまさにそういう時代に入ってきている」(小野寺氏)

 ナカチェン、フルチェン対応端末については、時期は未定ながらラインアップの拡大を検討しているという。

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