インタビュー
» 2008年09月30日 07時10分 UPDATE

The Way We Live Next 2008:激化する携帯プラットフォーム戦争、Symbian陣営の戦略は

W-CDMAに対応した「iPhone 3G」が登場し、米GoogleのAndroidを採用した「G1」が10月下旬にお目見えするなど、携帯OSを取り巻く世界が新たな局面を迎えようとしている。こうした中、端末最大手のNokiaは、どのようなプラットフォーム戦略で戦おうとしているのか。同社のデバイス研究開発 技術マネジメント担当副社長に聞いた。

[末岡洋子,ITmedia]
Photo Nokiaデバイス研究開発 技術マネジメント担当副社長のデビッド・リバス氏

 2008年6月24日に流れた、Nokiaが英Symbianを買収するというニュースは、モバイル業界に大きなインパクトをもたらした。同社はSymbian Foundationを設立し、ソフトウェア資産をオープンにしていく計画を明らかにするなど、モバイル市場が変革期にさしかかったことを実感させる、新たな戦略を打ち出して市場関係者を驚かせた。

 W-CDMAに対応する「iPhone 3G」が登場し、米GoogleのAndroidを採用した最初のスマートフォン「G1」が10月下旬に登場するなど、ケータイOSを取り巻く世界が新たな局面を迎えようとしている中、Nokiaはどのようなプラットフォーム戦略で市場における優位性を保とうとしているのか。デバイス研究開発・技術マネジメント担当副社長のデビッド・リバス氏に聞いた。

ITmedia(聞き手:末岡洋子) ソフトウェアにおけるNokiaの戦略について教えてください。

デビッド・リバス氏 ソフトウェアはNokiaにとって非常に重要です。将来、携帯電話を差別化するうえでの鍵を握るのはソフトウェアであり、「最高のソフトウェアを持つ端末が魅力的な端末」ということになるでしょう。

 フォームファクターやハードウェアも重要ですが、ユーザーの視点からみれば、端末とのやりとりを橋渡しするソフトウェアが最も重要な存在といえます。

 今、モバイル業界には大きな変化が起きており、その1つは「ソフトウェアプラットフォームへの課金」に対する考え方の変化です。

 Nokiaはこれまで英SymbianとS60プラットフォームに大規模な投資を行っており、今後も投資を継続してさらに使いやすいプラットフォームに育てたいと考えています。そしてこのソフトウェアプラットフォームを、より多くのメーカーが利用できるようにすることも重要視しているわけです。

 Symbianのソフトウェアを開発者やサービスプロバイダが利用し、アプリケーションを構築すれば、それがエコシステムの拡大につながり、ひいてはNokiaにも多大なメリットをもたらします。

 このように、Nokiaのソフトウェア戦略はシンプルです。今後もこの分野に投資して最高のプラットフォームを構築し、業界全体でSymbian Foundationを支援していくというものです。

ITmedia モバイルOSの価値はどう変わるのでしょうか。

リバス氏 携帯電話にOSは不可欠ですが、OSにかかるコストは増え続ける一方で、それがビジネスを難しくしています。そこでわれわれはSymbian Foundationを設立し、Symbian/S60をオープンにすることで、より幅広い人々に利用してもらおうと考えたわけです。

ITmedia 開発者支援の取り組みについて教えてください。

リバス氏 Nokiaでは、「Forum Nokia」という開発者向けプログラムを展開しており、すでに6000以上のアプリケーションを提供しています。われわれはC++、HTML、JavaScript、Ruby、Pythonなど多数の言語をサポートして、開発者を支援しています。ネイティブはもちろん、現在インターネットやクラウド環境で提供されるアプリケーションも容易に統合できます。

ITmedia Symbian Foundationには、S60、UIQ、MOAP(S)の3種類のインタフェースがありますが、この3つをどのように統合するのでしょうか。

リバス氏 発足初日からSymbian Foundationの設立メンバー全社が、S60との相互運用性の実現に取り組むことで合意しています。また、NTTドコモはMOAP(S)を、英Sony EricssonはUIQを提供すると約束しています。S60との互換性を維持しながら、この2つの技術から優れた部分をプラットフォームに統合していきます。これは、“開発の断片化”という、Symbian環境における問題を解決するものです。

ITmedia Symbian FoundationでEclipse Public License(EPL)を採用した理由は。

リバス氏 オープンソースライセンスは多数あり、われわれが新しいライセンスを作る必要はないと考えました。そこで、“制約と寄贈”の観点から既存のライセンスを検討した結果、EPLを選びました。

 EPLはソフトウェアへの寄贈と制約のバランスが適切な、柔軟性のあるライセンスです。アプリケーション開発者は、開発したアプリケーションを必ずしもオープンソースにする必要はありません。

ITmedia アプリケーションのエコシステムについては、どのような展開を考えていますか。米Googleの「Android Market」、米Appleの「App Store」のようなマーケットを開始するのでしょうか。

リバス氏 Nokiaはすでに、Nokia端末向けのコンテンツ配信サービス「Download」を提供しており、欧州などでは、ユーザーがDownloadを利用してアプリケーションを入手しています。

 Symbian Foundationが今後、このようなサービスを提供するかどうかは、Foundationのメンバーが決めることなので分かりません。ただ、個人的見解ですが、おそらくこのようなサービスを提供すると思います。

ITmedia 米Microsoftに加え、RIM、Appleと競争が激しくなっています。さらにオープンソースではGoogleの「Android」が注目を集めています。

リバス氏 まず、RIMはRIMの端末でしか動きませんし、iPhoneもしかりです。携帯電話メーカーがこれらのOSを搭載した端末をリリースするためには、何らかの形でOSを手に入れなければなりません。

 次に、OSには成熟したものと、まだ利用されていないものがあります。Microsoftは成熟していますが、自由な改変が認められないプロプライエタリなOSであり、(無料の)Linuxは、まだ成熟しているとはいえません。Symbian Foundationが提供するOSは無料で、しかも2億5000万台に搭載された実績があります。

 こうした意味でも、OEMメーカーが自社のニーズに合ったOSを選択する際に、Symbianは魅力的なプラットフォームだと思います。われわれは今後も、Symbian Foundationの提供するプラットフォームは市場で優位性を保つ可能性が高いと信じています。

ITmedia NokiaはS60のほかにも、S40、S30、Maemoという4種のプラットフォームがあります。

Photo Nokiaが採用している4種のプラットフォーム

リバス氏 Nokiaは端末開発の際に、機能やフォームファクター、ターゲットユーザーなど、さまざまな面から検討しており、OSもその1つです。

 S30は音声通話を主としたエントリー端末に利用し、S40はWebアクセスなどの機能も備えるものの、S60のようなフル機能に対応したプラットフォームではありません。4種とも、われわれの幅広い製品ポートフォリオで使われている重要なものです。

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