逮捕されたKTF社長、警察を呼べない電話、反米デモを拡大した1通のSMS――韓国ケータイ最新事件簿韓国携帯事情(2/2 ページ)

» 2008年10月08日 12時55分 公開
[佐々木朋美,ITmedia]
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“タダ”ではない「タダケータイ」

 「タダケータイ!」という文字が、いまだに販売店の店頭に踊っている。補助金制度がなくなった今、どうやって“タダ”を実現するのか。ここに、販売店による巧みな売り方があるようだ。

 2008年9月末、韓国政府の放送通信委員会は「携帯電話に加入する際、“タダケータイ”に注意」という告知を行った。韓国ではこのところ、タダケータイによる被害報告が増えている。実際の被害事例から、その手法を紹介してみよう。

 A氏は携帯電話の代理店で「月々の通話料が割引となる特定の料金プランに加入すれば、携帯電話料金を月3万ウォン(約2300円)以上利用するだけで、携帯電話が無償提供される」と言われ、指定された割引料金プランを24カ月契約した。しかし、後に送られてきた請求書を見てみると、携帯電話本体の割賦料金がしっかり請求されていた。

 しかも売り文句の“月3万ウォン以上の携帯電話料金”というのは、あくまで国内の通話料と基本料とを合算したものであり、それ以外の料金は合算されない。パケット通信やコンテンツ代、国際電話などでトータル月7万ウォン(約5400円)以上使っているのに、基本料と国内通話料の合計が3万ウォンに満たなかったため、割り引きを受けられなかったというのだ。

 こうした一件の裏には、ユーザーには「タダ」といいながら、実際には携帯電話料金が24回の分割払いになっているというからくりがある。40万ウォン(約3万1000円)の携帯電話を24回払いする場合、月々1万6000ウォン(約1250円)程度を支払うか、基本料+国内通話料が3万ウォン以上になるよう、電話を使わなければならない。どのみち、端末相当分はきっちり請求される。契約書上でも、端末代は分割払いとして取り扱われているのだ。

 韓国では携帯電話の新規加入に、キャリアが推薦する料金プランやオプションサービスへの加入が必須ということが多い。店舗側も、さまざまなサービスに加入させてキャリアからリベート(日本で言うところの販売奨励金)をもらおうと、必死ということだ。

 8月には同様の件があったとして、裁判沙汰にもなっている。原告は、無料をうたいながら端末代金が差し引かれていたことに対して不当であると主張したものの、結局この訴えは退けられた。やはり確認しないユーザーにも非はあるという結論で、気をつけるしか方法はないといえる。

 今回紹介してきたように韓国では今、経営陣の犯罪から端末のバグ、1通のメッセージが起こしたデモ騒動まで、携帯電話を巡ってありとあらゆる事件が起こっている。

 社会に参加する多くの者が使う携帯電話だけに、それが社会に与える影響は非常に大きい。今回紹介した事件の中には未解決のものもあり、どんなきっかけで社会に影響を及ぼすのか興味深い。

佐々木朋美

 プログラマーを経た後、雑誌、ネットなどでITを中心に執筆するライターに転身。現在、韓国はソウルにて活動中で、韓国に関する記事も多々。弊誌「韓国携帯事情」だけでなく、IT以外にも経済や女性誌関連記事も執筆するほか翻訳も行っている。


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