日本のケータイ市場にじわりと浸透。存在感を増す海外メーカー神尾寿の時事日想・特別編(2/2 ページ)

» 2008年11月05日 14時40分 公開
[神尾寿,Business Media 誠]
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新販売モデルは海外メーカーにとって追い風?

 かつての日本の携帯電話市場は、大きく2つの理由から、海外メーカーが参入しにくい市場だった。

 1つは「キャリア主導のエコシステム」。日本では携帯電話キャリアが商戦ごとに独自のサービス仕様を策定し、それにあわせて携帯電話メーカーが端末を作るという垂直統合型モデルを長く採用してきた。このモデルではハードウェアとソフトウェア、サービスが一体的に進化していくため、開発にはキャリアとメーカーの二人三脚的な連携が必要になる。さらに日本では3商戦期ごとに大半の新機種を入れ替えるというハイペースな製品投入を行い、ワンセグやおサイフケータイなど独自のハードウェア仕様やサービスも多い。そのため日本市場向けだけに専念した製品開発ができない海外メーカーは、どうしても日本市場で不利になる。

 そして、もう1つ参入障壁だったのが、携帯電話販売の「販売奨励金制度(インセンティブモデル)」である。これは携帯電話キャリアの出す奨励金を原資にし、携帯電話本体の店頭価格を調達原価よりも安くして売るというものだ。キャリアは毎月の利用料金によって、端末販売時に負担した奨励金分を回収する。

 この販売奨励金制度の下では、本来は5万円以上する高性能・高付加価値のハイエンド端末を安価で販売し、短期間で普及させられる。また、一定の奨励金回収期間を経た後は、同じユーザーに再びハイエンド端末を安価に販売することが可能だ。これによりユーザーは、高価な最新デバイスを多用したハイエンド端末を1年〜1年半あまりで買い換えて、新たな機能やサービスを利用することができた。「ハードウェアとソフトウェアが一体となって進化する」日本型の“ケータイ進化”を支えたのが、旧来の販売奨励金モデルだったのだ。

 しかし、この販売奨励金モデルは、新規契約者数が右肩上がりで増えるという「普及拡大期」ならばこそ成立するビジネスモデルだった。日本の携帯電話・PHS契約者数が1億を超えると、最大手のNTTドコモを筆頭に次第に経営に対する重荷になった。さらに総務省が「販売奨励金制度」の矛盾や不公平さを指摘し、携帯電話ビジネスの水平分業モデル導入を促したこともあり、2007年後半から各キャリアが一斉に販売奨励金制度を見直し、奨励金を端末値下げ原資としない「新販売モデル」に移行した。

 この新販売モデルでは端末の店頭販売価格が上昇する。キャリアはこれによる販売への影響を緩和するために、最大24回の端末の割賦払いプランを用意したが、それにより端末の買い換えサイクルは長期化した。

 だが、これはスマートフォン化を推し進め、ユーザーニーズの変化に「ソフトウェアで対応する」姿勢を早くから取っていた海外メーカーにとって、むしろ有利な流れだ。Appleの「iPhone 3G」や、今回発表されたNokiaやHTC製の新機種では、端末の購入後もソフトウェアの追加や更新で機能アップが可能だ。

 このように新販売モデルによる市場環境やユーザーニーズの変化が、海外メーカーにとって追い風になりはじめている。

 市場環境の激変もあり、日本の携帯電話端末市場は大きな地殻変動期に入っている。ハイエンド市場や、デザインや高級感が重視されるコンシューマー市場を中心に、来年以降、海外メーカーの勢力はじわじわと拡大していきそうである。

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