触れると分かる「本当の使いやすさ」に自信──Wオープン3代目の集大成「P-01A」開発の真意(前編)開発陣に聞く「P-01A」(2/3 ページ)

» 2008年11月18日 00時00分 公開
[岩城俊介,ITmedia]
photo ディスプレイを縦に開くといつもどおりの配列、横に開くと横向き用の配列にダイヤルキーが変化する「2WAYキー」

── 分かりやすく一番変わったと思えるのは、やはりこの2WAYキーですね。どんな経緯でこれを採用することにしたのでしょう。

商品企画担当の野中亮吾氏(以下、野中氏) Wオープンスタイルと横向き時の文字入力をどう両立させるかは、P905iの開発当時から議論していた大きなテーマでした。

 初めてWオープンスタイルを採用したP905iは、まずワンセグやゲームの用途をメインに据えていました。その中で「文字をそのまま入力できないのがもどかしい」「横向きのままでも使えるようにしてほしい」という声が、予想はしていましたがたくさんありました。P906iは横向きUIを工夫することで途中まで実現しましたが、文字入力はこのキー配列では限界があります。

 一方、縦向きスタイルでは慣れたいつものキー配列がやはり使いやすいものです。横向き用だけならQWERTYキーなどを設ければ解決するかもしれませんが、「縦も、横も」の両立をどうするか。この模索のなかで2WAYキーが生まれました。

── 横向きスタイルの文字入力に関しては、全面有機ELパネルやタッチパネルなどを設けて電子的な仕組みで解決するのかなと勝手に思っていましたが、きちんと押せる“ボタン”としての機能を損ねていないがポイントの1つだと思います。こちらはどのような構造になっているのでしょうか。

機構設計担当の萬田泰辰氏(以下、萬田氏) 逆ヒンジの機構と連結してあるキーシートがボディの内部で上下して配列が変わる仕組みです。

 閉じているときやディスプレイを横に開いたときは横向き用配列、ディスプレイを縦に開くと内部のキーシートが引っ張られて縦向きの配列になります。閉じるときは中のバネ機構と部品でキーシートを押して元に戻ります。ヒンジの回転とキーシートの平行移動が連動して動くのです。特に、この“戻す”部分をかなり苦労して開発しました。

── 確かに引っ張るだけなら簡単にできそうですが、きちんと戻すのは少し複雑になりそうですね。ましてやこの薄くなったボディの内部にスペースを用意するのも困難なことでしょうし。

萬田氏 バネ機構でなく板状のもので連結するのは容易ですが、例えばキーを押さえたまま閉じるとキーシートが元に戻らないまま、中でぐしゃっとキーシートがつぶれてしまうことにもなりかねません。それが起こらないようにこういう場合でもバネで吸収できる仕組みになっています。

 ただ、これを入れたから厚くなる──というのは許されませんでした。最終的にはバネだけのシンプルな構造で構成できるよう工夫し、厚さとしては普通のキーシートと同レベルに収めてあります。

photophotophoto ディスプレイを閉じている時や横に開く時は横向き、縦に開くとキーシートが引っ張られて縦向きのダイヤルキーに変わる

野中氏 社内では「いじわる試験」と呼んでいる、利用想定範囲外の動作検証テストもクリアしています。

 このほかディスプレイの開閉とキー配列の変化が連動する2WAYキーならでは取り組みとして、“どの角度になったときに変化するのか”も重要でした。例えばディスプレイを縦に90度ほどに開いて、机に置いたまま操作するようなシーンも多いと思います。もちろんこの角度であればすでに縦向きに変化しているので、こういった場合も大丈夫です。

photo 逆ヒンジを採用。2WAYキーや背面デザインをすっきりさせる効果とともに、ヒンジの軸をやや手前に配置したことで、逆ヒンジの端末にありがちな画面が奥まる感覚が少ない特徴がある。

沢村氏 このほか、逆ヒンジを新た採用しましたが、ヒンジの軸を少し上げる設計にしてあります。

 逆ヒンジを採用する端末はいくつかありますが、ディスプレイを開くと画面が少し奥に行ってしまいがちです。P-01Aはこの軸を微妙にずらすことにより開けても画面が奥にあるような感覚が少なく、今までとほとんど同じ感覚で使えます。これにより、デザインのすっきり感と使い勝手を両立させています。

── ところで、ドコモだけでなく、今回の2008年冬モデルはソフトバンクモバイルやauのもタッチパネルを搭載する機種が増えました。この点で、P-01Aにタッチパネルを採用しなかったことに何か理由はあるのでしょうか。

沢村氏 タッチパネルを含めた新しい操作デバイスは、以前から継続して研究、検討しています。もちろん今回のP-01Aに関しても、その手のデバイスを搭載するか否かという議論をかなり交わしました。

 ただ、いろいろな検証をしていく中で、現状は十分な満足度を得られないと判断しました。今回はWオープンスタイル+2WAYキーの使い勝手を現在実現できる極限まで高める方向を目指しています。

 もちろん新しい操作デバイスは「鋭意検討・開発中」です。ユーザーの利用シーンやニーズ、使い勝手も含めて、明確な端末のテーマとして提案できるほどに達したところで搭載することになると思います。

野中氏 横向き画面をユーザーさんにどう使っていただくか。これはWオープンスタイル初代機のP905i以前、古くはドコモ初のワンセグ端末「P901iTV」の頃から常に模索しています。

 WオープンスタイルもP905iとP906iでホップ、ステップと来て、今回のP-01Aで集大成の“ジャンプ”といえるほど完成度が高まったと思っています。

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