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» 2008年11月21日 20時21分 公開

日本市場のニーズが、世界で成功するOS開発のカギに――Symbian Foundationのウィリアムズ氏

携帯電話向けOSの共通化、オープン化の動きが加速する中、Symbian Foundationのエグゼクティブディレクターに任命されたリー・ウィリアムズ氏が来日。Symbian OSの優位性と今後のビジョンについて説明した。

[日高彰,ITmedia]
Photo シンビアン(日本法人)代表取締役社長の久晴彦氏

 シンビアンは20日、Symbian Foundationのエグゼクティブディレクターに任命されたNokiaのリー・ウィリアムズ氏を招いて記者会見を行った。会見にはシンビアン代表取締役社長の久晴彦氏、同ファウンデーションのボードメンバーであるNTTドコモの移動機開発部長、三木俊雄氏も登壇し、Symbian FoundationがリリースするOSの優位性や特徴について説明した。

 今回の会見は、東京でSymbian Foundationの暫定運営委員会が開催されたことを受けて開催したもので、久氏は「通常はロンドンで行っているミーティングを東京で開き、トップのリー・ウィリアムズも来日している。(Symbian Foundationが)日本の市場をいかに重視しているかの表れ」だと、同団体の姿勢をアピール。また、国内市場の飽和で海外市場に活路を見出そうとする日本メーカーにとっても、「Symbian OSが今後、世界共通のプラットフォームとなることで、海外進出しやすくなる」というメリットをもたらすとした。

Photo 久氏は、これまでに発売された250機種のSymbian OS搭載携帯電話のうち、日本市場向けの製品が94機種に上り、累計販売台数は日本だけで4000万台に達したことも紹介した

 Symbian OSは、携帯電話用のOSとして世界で広く使われているが、ユーザーインタフェース部分はNokiaの「S60」、UIQ Technology(MotorolaおよびSony Ericssonが出資)の「UIQ」、NTTドコモの「MOAP(S)」のいずれかが主に使われている。エンドユーザーが実際に触れるアプリケーションソフトはそれらの上で動作していることから、ベースとなるOSが同じであるにもかかわらず、異なるユーザーインタフェース間でのアプリケーションソフトの互換性は保たれていなかった。

 しかし近年、携帯電話OSの重要性が増すとともに、プラットフォーム間の競争が激化していることを受け、Symbianはこの6月、こうした違いをなくした統一プラットフォームを構築すると発表。手続きとしては、現在Symbian筆頭株主のNokiaが他の出資者から2008年中に全株式を取得していったん同社の完全子会社とし、2009年に非営利組織のSymbian Foundationに移行する。

 S60、UIQ、MOAP(S)の知的資産は同Foundationに継承され、2010年前半までに最初のプラットフォームをリリースする計画だ。Foundationの会員はプラットフォームを無償で利用できるため、携帯電話開発においてソフトウェア部分にかけるコストが低減され、各メーカーは独自の付加価値となる部分により多くのコストや人的リソースを投じることが可能になる。

Photo Symbian Foundationのエグゼクティブディレクターに任命されたNokiaのリー・ウィリアムズ氏

 リー・ウィリアムズ氏は現在、NokiaでS60の責任者を務めており、10月にSymbian Foundationトップの役職であるエグゼクティブディレクターに任命された。Foundation発足後に、その活動を率いていくことになるウィリアムズ氏は「モバイルのソフトウェアをあらゆる場所へ浸透させ、コンピューティングの力をいたるところで使えるようにするというビジョンを、世界のトップの端末メーカー、通信事業者、半導体ベンダー、開発者と一緒になって実現していける。このような機会を誰が拒むことができるだろうか」と話し、携帯電話をモバイルコンピューティングの中心となる機器に発展させていくことに強い意欲を見せる。

 プラットフォームには、既に広く利用されているWeb技術やランタイムを積極的に採用していく方針だ。「Symbian Foundationプラットフォームには、Webkit、Flash、Silverlight、Java、Qtなども含まれる」(ウィリアムズ氏)。

 このうちQtは、Linuxのデスクトップ環境のKDEに用いられているフレームワークとして知られ、ほかにも商用製品を含む多数の著名なソフトで使われている。NokiaがQt開発元のTrolltech(現Qt Software)を買収しており、10月にはS60に対応した「Qt for S60」の技術プレビュー版がリリースされている。「QtとWebkitを組み合わせることで、リッチなGUIと、インターネットサービスへの容易なアクセスが実現する。WindowsやMac、Linuxなどでも同じアプリケーションソフトが動作するので、開発者は多くのプラットフォームを対象にプログラムを書くことができる」(同)

 また、Symbian Foundationへの賛同企業として、この日新たに管理工学研究所、ルネサステクノロジ、ソフトバンクモバイルなどが加わったことが明らかにされた。このほかの日本企業としてはアプリックス、アクロディア、ブライセン、富士ソフト、富士通、エイチアイ、NTTドコモ、シャープが既に賛同を表明しており、賛同企業は全世界で59社となった。

Photo ソフトバンクモバイルなどが加わり、世界59社が支持を表明。なお、ソフトバンクモバイルは既にLiMo Foundationにもアソシエイトメンバーとして加わっており、特定陣営のみを支持するわけではないという点においては、ドコモと同じ姿勢だ

 ウィリアムズ氏は「日本はさまざまな技術をリードしてきた実績がある、世界で最も進んだ重要なモバイルの市場だと考えている。LTEの導入も世界最初になるだろう。日本の消費者は端末の性能と品質を非常に重視しており、Symbianが日本ユーザーの要求を満たせれば、世界中どこの市場でも成功できるに違いない」と、日本市場重視の姿勢を強調した。

 携帯向けプラットフォーム市場では、Symbianのライバルとして語られることの多いGoogleらのOpen Handset Allianceが、初のAndroid採用製品「T-Mobile G1」を発売し、Androidのソースコードを公開したことが話題になっている。

 こうした動向に対してウィリアムズ氏は「Symbian OSは既に成熟し、市場で証明されたソフトウェアであり、現在でもかなりの成長率が見られる。Androidは確かに発表はされたものの、このようなことは言えない」とコメントし、Symbianの優位性が揺らぐことはないとアピール。また「競争自体は非常に良いこと。競争によってさまざまな製品が登場し、ユーザーのための機能強化も図られる」とし、競合陣営の存在が市場の活性化につながるという見方を示した。

Photo NTTドコモ移動機開発部長 常務理事の三木俊雄氏

 この日の会見にはドコモの三木氏も出席し、同社のプラットフォーム戦略に言及。ドコモは今後のLinux搭載端末の開発に、LiMo仕様に準拠した「ACCESS Linux Platform」を採用し、iモードなどのドコモの独自機能に関係するソフトウェアを「オペレーターパック」として分離する方針を打ち出しており、Symbian Foundationのプラットフォームを採用する端末についても同様の仕組みを取り入れる。

 こうしたソフトウェアの構造は、日本の端末メーカーの海外進出や、海外端末メーカーの日本市場への参入のハードルを低くすると三木氏。ソフトウェアを大きく手直しする必要なく、オペレーターパック部分を交換すれば同じ機種がさまざまな通信事業者に対応できるようになるのがその理由だ。

 Symbian Foundationの活動によって全世界で共通のアプリケーションソフトが動作するようになることに関して、三木氏は「グローバルなエコシステムが形成され、新しいソフトウェアやサービスが生まれることを期待する」とコメント。携帯電話向けOSの世界はエンドユーザーにとって直接的なメリットが見えにくい分野だが、オープンプラットフォーム化により「新しい魅力ある端末がより早く市場に投入され、構造転換によって端末価格が低減する可能性もある」と話し、結果的にエンドユーザーにも、より大きな価値を提供できる取り組みであると述べた。

Photo Symbian Foundationがリリースする携帯向けOSの構造(左)と、ドコモが推進する今後のプラットフォーム構造(右)

Photo ドコモの端末プラットフォーム展開(左)。ドコモ向けのソフトウェアをパッケージ化した「オペレーターパック」を端末メーカーに提供することで、端末開発の効率化を図るとともに、日本メーカーの海外進出や、海外メーカーのドコモへの参入を容易にする(写真はCEATEC JAPAN 2008、ドコモ 辻村清行氏の講演のもの)

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