英軍向けに開発された“3面ケータイ”Mobile Asia Congress 2008

» 2008年12月01日 18時14分 公開
[山根康宏,ITmedia]
photo 閉じた状態は全面タッチパネルの端末。付属するファーストエイドソフトなどをタッチ操作で利用できる

 Medical Phoneの「iCEphone」はどこでも利用できるスモールコンピュータと、緊急時の応急処置医療データベースをいつでも参照できる小型端末が融合した端末。英国の軍隊向けに開発されたものだという。

 通信仕様はW-CDMA(HSDPA)とGSM(EDGE/GPRS)、無線LAN、Bluetoothに対応し、ワイドQVGA(240×400ピクセル)対応のタッチパネル液晶やGPS、310万画素カメラを搭載する。本体サイズは60.8(幅)×127(高さ)×23.3(厚さ)ミリ、重量210グラム。OSはWindows Mobile 6.0 Professionalを採用する。

 iCEphoneの最大の特徴は、本体が3つのパーツ=3面に分かれており、利用シーンに応じてそれぞれ形状を変えながら使用できることだ。iCE Aidソフトウェア(応急処置データベース)をプリインストールし、ディスプレイを表にしたままタッチ操作で応急処置情報を容易に呼び出せる。例えば心臓マッサージが必要なら、マッサージの実手段方法とともにインターバル時間などもデータベースの動画を参照しながら処置できる。

 さらに本体を開き、さまざまなスタイルに変化できる。中央のQWERTYキーボードとディスプレイだけを開くとノートPCのようなスタイルに、メニューキー面を開けば、カーソル操作など各種操作が行えるサブキーボードとともにWebサイト閲覧などの機能が使える。


photophoto 本体は上・中・下、3つのパーツでつながっている(左)。ディスプレイ面だけを開くと、このようなQWETYキーボードとともに使う小型ノートPC風になる(右)

 ディスプレイを開くのみのスタイルは、ノキアの「Nokia E90 Communicator」とよく似たイメージで利用できそう。iCEphoneはスマートフォンであるため、このスタイルで文書作成やWebサイト閲覧などももちろんできる。

photo Nokia E90 Communicatorとサイズを比較。ほぼ同等のサイズで、片手でもある程度の操作は快適に行えそうだ

 下面のメニューキーはマウス操作やWindowsキー、Deleteキー、Tabキーなど、よくあるスマートフォンにおける「Fn」キーとともに使うようなサブキー類を配置する。机上での利用であればこのスタイルでもなかなか快適に操作できそうだ。モバイル時は自動的にキーロックされるようなので、カバン内などでの誤操作も心配ないとのことだ。

 さらに、アームマウントケースや防水/耐衝撃性を備えたハードケースなど、軍事用途も見越すプロフェッショナルユース向けオプションも用意する。実際に戦場や紛争地域で用いる軍事用途と考えると、制式採用にはこれらオプションも非常に高い“ハードさ”が要求されると思われる。

 iCEphoneは中国のOEM工場で生産が開始されたばかり。このため今回は、動作する実機ではなくモックアップのみの展示だった。2009年3月から4月頃に実働サンプル、2009年第二四半期に市場投入を見込むという。価格や販売ルート、販売手段などは2008年11月時点はまだ未定である。

 さて、このiCEphone、基本的にはプロ向け製品ではあるものの、自在にスタイルを変化させて利用できる仕組みはコンシューマー層にも受け入れられそうだ。The Medical Phoneのブース説明員によると「予想以上に反響があった。コンシューマー向け販売も前向きに検討したい」と話していた。

photophoto 手前のメニューキー面にマウス操作や各種サブキー類が備わる(左)。携帯時は、3面の各パーツを折りたたむ仕様。サイズはやや厚めだ
photophoto ディスプレイ面を隠して折りたたむと裏面にメニューキー面が露出する状態にもなる。コンシューマー向け用途なら、音楽操作やリモコン系(プレゼンテーション時など)などに使えそうだ(左)。The Medical Phoneブース。3面ケータイデモ展示コーナーは常に人が集まっていた(右)

山根康宏:香港在住の携帯電話研究家。一企業の香港駐在員時代に海外携帯電話に興味を持ち、2003年に独立。アジアを中心とした海外の携帯電話市場の状況や海外から見た日本の携帯電話市場についてなど、海外の視点からコラムや記事を日本のメディアに執筆するほか、コンサルティング活動も行う。携帯コレクターとしても知られ、所有する海外携帯電話の数は500台以上。


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