ニュース
» 2008年12月08日 07時00分 UPDATE

mobidec 2008:総務省の谷脇氏、携帯業界の“官製不況”説に反論 (1/2)

2008年は、端末メーカーにとって苦しい1年となった。買い替えサイクルの長期化が端末販売の不振を招き、メーカーの再編や撤退も相次いだ。こうした事態を“官製不況”とする声に総務省の谷脇氏が反論。改めてオープン化の本質について説明した。

[日高彰,ITmedia]
Photo 総務省 情報通信国際戦略局情報通信政策課長の谷脇康彦氏

 老舗メーカーの携帯事業撤退や、携帯電話事業の不振による厳しい決算内容など、端末メーカーを中心に苦戦の伝えられることが多い携帯電話業界。その理由の1つとしてしばしば挙げられるのが、2008年9月に総務省が打ち出した「モバイルビジネス活性化プラン」だ。

 移動体通信の世界に、よりオープンで多様なビジネスを呼び込むことを目的とした施策だが、その実施から1年経った今、業界に閉塞感が漂っていることから、これもいわゆる「官製不況」の1つではないかといった声も一部で上がっている。

 mobidec 2008で講演した総務省 情報通信国際戦略局情報通信政策課長の谷脇康彦氏は、こうした見方に対し、「施策の意図が正しく伝わっていない部分がある」として、官製不況説を否定する。

携帯市場は競争不足、しかしARPUは低下

 そもそも、モバイルビジネス活性化プラン導入の目的は何だったのか。さかのぼると、2006年6月の「通信放送の在り方に関する政府・与党合意」に端を発している。ここでは通信業界における公正競争を促進するため、ネットワークのオープン化などをルール化していく方針が固められていた。

 その後、同年9月に総務省がまとめた通信業界の競争促進施策「新競争プログラム2010」では、販売奨励金、SIMロック、ユーザーIDの取り扱いといった具体的なポイントについて、それらの在り方について再検証をするよう求めている。そのほかの競争促進に関するいくつかの提言などを受け、総務省内に「モバイルビジネス研究会」が発足。同研究会が取りまとめた報告書を元に活性化プランが生まれている。

 「競争の促進」という言葉が繰り返し出てきているが、移動体通信市場ではそれほどまでに競争が不足しているのか。ここで谷脇氏は、市場がどれだけ独占状態に近いかを定量化した「ハーフィンダール・ハーシュマン指数」(HHI)と呼ばれる指標を示した。

 これは各社のシェア(%)を二乗して合計したもので、値が大きいほど独占状態に近いことを表している。公正取引委員会のガイドラインでは、指数が1900を超えている場合、寡占性が高く競争が不足している市場とみなしているという。2008年3月の移動体通信市場における指数は3594で、谷脇氏はこれを指して「極めて寡占性が強いマーケット」だとし、さらなる競争促進が求められる根拠の1つとした。

 また、月々の契約者純増数をめぐって、通信キャリア間で熾烈な競争が続いているものの、累計加入者数で各社のシェアを見た場合、長年にわたって大きな変化は起こっておらず、市場が硬直していると見ることもできる。

Photo 通信キャリアの市場シェアの推移。若干の変動はみられるものの、大きな変化はない

 しかし、全体として通信料金は値下がり傾向にあり、各社とも収入は漸減している。携帯3社平均の契約者あたりの収入(ARPU)は2001年度に8235円だったところが、2007年度には6301円まで低下している。こうした市場の成熟期には、競争を促進しながら、新たな収入源を確保するための施策が求められ、モバイルビジネス活性化プランは、こうした問題の解決策として出されたものだった。

垂直統合を認めないわけではない

 新たなビジネスモデル創出のための最大のキーワードが「オープン化」だ。PCでインターネットを利用するとき、利用者は端末となるPC本体や回線事業者、ISPを、各社のさまざまな製品・サービスの中から選択できる。また、閲覧するWebサイトやそのために使用するソフトウェアなども自分で自由に決めることができる。

 これが携帯電話の世界では、端末の仕様から端末の販売、回線、インターネット接続サービス、ポータルサイト、認証課金基盤といった各レイヤーが、すべて携帯電話事業者の手によって提供される「垂直統合」型のビジネスモデルで構築されている。活性化プランでは、これらの各レイヤー間のインタフェースをオープンにし、利用者の選択の幅を広げることを求めている。

Photo 各レイヤー間のインタフェースオープン化のイメージ。垂直統合モデルを否定するものではなく、もう1つの選択肢として「水平分業」型のビジネスモデルを育てるという考え方だ

 しかし、この考え方が「総務省は日本の事業者がこれまで推し進めてきたやり方を否定している」と受け止められることがある。谷脇氏は垂直統合モデルについて「いわばデパート。そこに行けばすべてが手に入る便利なシステム」とその価値を認め、「とにかくレイヤーごとに分ければいい、それ以外のものは認めない、ということを言っているわけではない。政府が特定のビジネスモデルを強制するのは望ましくない」と述べる。

 活性化プランがオープン化を求めるのは、マーケットが成熟化するに従って生まれる、“自分で各レイヤーを自由に組み合わせたい”というニーズの多様化に対応するためであり、垂直統合モデルも継続しながら、もう1つの選択肢として「水平分業」型のビジネスモデルを育てていくものであると説明した。

       1|2 次のページへ

Copyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.