W64SHには新しい操作デバイスとして、上下左右のカーソル移動と決定操作ができる光TOUCH CRUISERを採用し、さらに横画面で快適に操作できるUI「AVメニュー」を搭載した。AVメニューからはデータフォルダやカメラ、ワンセグ、LISMO、PCサイトビューアー、PCドキュメントビューアーなどを起動できる。
谷氏が「横画面UIで特に力を入れた」と話すのがデータフォルダ。フォルダ内のデータを1画面に18枚か50枚のサムネイルで表示できるのが特徴だ。サムネイルの枚数は側面の上下キーで変更でき、カメラキーからmicroSDへのアクセス、クリアキーの長押しでデータの消去もできるなど、操作性を特に追求した。
谷氏はW64SHの開発で最も苦労したのは「光TOUCH CRUISERと加速度センサーに対応させることだった」と振り返る。「KCP+上で直感的な操作を実現するのは難しい部分が多かったですね。1つのアプリケーションに光TOUCH CRUISERを対応させたからといって、すべてのアプリに対応させるということは仕組み上できません。光TOUCH CRUISERを利用するアプリケーションごとに検証して、使える幅を広げていきました」(谷氏)
他キャリアのシャープ製端末を見ると、ドコモは「SH-03A」、ソフトバンクモバイルは「AQUOSケータイ FULLTOUCH 931SH」がタッチパネルを採用している。そんな中で、W64SHがタッチパネルではなく光TOUCH CRUISERを採用したのは「より美しいビューワーを重視したため」(谷氏)だ。KCP+の制約上タッチパネルの搭載が難しいということはなく、あくまでコンセプトの問題だという。
「タッチパネルも視野に入れましたが、『スーパーAVビューワー』をコンセプトの核にしているので、より美しいビューワーを目指しました。タッチパネルはセンサーパネルを1枚入れなければならないので、タッチパネル非搭載の液晶の方がきれいに表現できます。単純に、パネルに触れることが少ないので、ディスプレイの表面を汚さずに済むという面もあります。また、光TOUCH CRUISERでもタッチパネルのような使い勝手をおおむね実現できたと考えています」(谷氏)
横画面で光TOUCH CRUISERを使えるのはauのシャープ製端末では初めてだが、文字入力や一部のツールなど、全操作を横画面でこなせるわけではない。「横画面での文字入力は、サイクロイドスタイルでもう少し頑張りたいという考えはあります」と谷氏。タッチパネルか、サイクロイドか……auのシャープ製端末が今後どんなスタイルに進化するのか、期待したい。
映像機能や光TOUCH CRUISERなどの陰に隠れがちだが、W64SHは基本機能も大きく進化し、シャープ端末らしい使い勝手のよさにも磨きがかけられている。進化した機能は以下のとおり。
シャープは電子辞書を手がけているだけあり、辞書機能には特に力を入れた。8000文例を収録した日英辞書は、例文中の固有名詞や動詞などをシチュエーションに合わせて変更できる。例えば「スペイン料理を食べたいです」の「スペイン料理」を「日本料理」や「シーフード」「肉料理」「中華料理」に変更する、といった具合だ。このように変更できる単語は約2万語を用意した。また、「全部で3個です」など数字が出てくる文では数字の変更もできる。
「この日英翻訳はシャープの電子辞書にも搭載する本格的な機能です。シャープ製端末には初めて搭載しましたが、読み上げる英語の音声のスピードや音量の調節もできるなど、本格的な辞書です」(谷氏)。
スマートリンク辞書のネット辞書は、複数の辞書を一括検索できるようになった。一括検索できる辞書の数に制限はなく、保存してある辞書すべてを使って検索できる。「これは他キャリアのスマートリンク辞書対応のSHケータイでも搭載していない機能です」(谷氏)
メールは見やすさに配慮し、送受信メールの一覧表示でカラーラベルが付けられるようになった。EZキーを押すと、メールリストの色を赤→青→緑に変更できる。ほかに、一覧画面でメールキーを押すと、受信メールを既読化できるようになった。「W64SHはメール一覧画面に(カーソル選択しているメールの)本文も表示でき、短文ならメールを開かずに読めるので、一覧画面でもワンタッチで既読化できるようにしました」(谷氏)
快適に使いこなせるようパフォーマンスにもこだわり、キーレスポンスを改善した。「W62SHでもよく言われていましたが、KCP+になって反応速度が遅くなってしまった感は否めません。使っていてストレスを感じないように、いろいろな機能のキーレスポンスを向上させました。KCP+対応端末の中では速いという評価をいただいています。とはいえ、改善できるところはまだあるので、パフォーマンスの向上はもっと進めていきたいですね」(谷氏)
3.5インチフルワイドVGA液晶、光TOUCH CRUISERや加速度センサーといった、新しいハードウェアとソフトウェアをふんだんに盛り込んだW64SHは、「これぞシャープケータイ」といえるような、auの“全部入り”端末に仕上がった。KDDIが掲げる「究極美」を体現するモデルとしてはもちろん、先進デバイスを搭載した多機能ケータイとしても満足できる1台といえる。
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