法人顧客に“オンリーワン”サービスを――KDDI、法人ソリューションの新戦略(2/2 ページ)

» 2009年01月25日 23時22分 公開
[日高彰,ITmedia]
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PC/携帯アプリの開発環境を一元化する「.net by au」

 法人向けサービスに関する、もう1つの大きな取り組みが、マイクロソフトの.NET Frameworkと互換性のあるソフトウェア実行環境をBREW上に構築した「.net by au」である。

 au携帯電話上で動作するアプリケーションソフトはBREWアプリとして開発・提供されており、法人向けの業務アプリでも一定の実績がある。しかし、Windows用アプリやJavaを扱う開発者の数に比べると、BREWのそれは少ない。.NETアプリがBREW上で動くようになれば、Windows XP/VistaやWindows Mobile向けに.NETアプリを開発している技術者が、それまでの資産やノウハウを活用してau向けの業務アプリを開発できる。

 .net by auは.NET Frameworkのサブセットであり、またWindows Mobile向けの.NET Compact Frameworkとも別ものであるため、PCやスマートフォンと全く同じ業務アプリが動作するわけではない。しかし開発環境としては、同じVisual Studio 2008を使えるので、開発の負担は大幅に軽減される。

 また、BREWは電話帳など携帯電話の基幹機能にアクセスできるのが特徴だが、一方でこれがセキュリティ上の弱点となる部分でもあるため、原則としてKDDIによる検証を経たアプリしか配布できなかった。.NETアプリは自由に配布可能なため、さまざまな用途に向けたより柔軟な応用が可能となるほか、検証などのプロセスが必要なく、開発から運用開始までの時間も短縮できる。

 端末の基幹機能にアクセスできるというBREWの優位性を活かすため、業務アプリで必要性が高いと考えられる機能については、.NETアプリからも利用できるようなAPIを用意する予定。ただし、自由度が広がる代わりに、開発者やユーザー自身の手によってセキュリティを確保しなければならない部分が増えることになる。この点ではPC用のアプリと同じようなリスクを持つことになる。

通信企業から総合ソリューションベンダーへ

 KDDIでは、今後の法人向け戦略として、既に用意された製品やサービスの中から必要なものを顧客に選択してもらうという従来の形態から、KDDI自身が顧客の業務に応じた製品・サービスを事前に組み立て、運用・管理の請負までを含めたトータルソリューションとして提案する形へ進化させるという方針を打ち出している。

 言い換えればこれまでは、あくまで通信企業として回線をいかに契約してもらうか、契約した回線をいかに使ってもらうかという視点で、端末やサービスのラインアップを拡大し、メニューとして顧客に提示していたのに対し、今後は“顧客の業務を支援すること”そのものをKDDIの生業に位置づけ、そのために同社が持つさまざまな商品群を活用し、既存製品で足りない部分は個別にカスタマイズしていくという考え方に転換する。

Photo 固定から無線までをトータルで提供できる強みを生かすために、より法人顧客のニーズをくんだソリューションを提供できるよう体制を整える

 以前の考え方であれば、構内PHSなど同社が手放した技術をサポートする必要はないかもしれない。しかし、顧客がインフラとしてそれを保有しており、今後も活用することが顧客のビジネスにとってプラスになると考えられるのであれば、足回りはau網や無線LANにこだわるのではなく、PHSも当然選択肢の中に入ってくる。アプリケーションについても同じで、すべてをBREWの世界だけで実現する必要はない。

 従来は半ば“暗黙の了解”の下に受け入れられていた「通信キャリアの都合」を見直し、柔軟に対応することで、法人市場におけるKDDIは通信企業から総合ソリューションベンダーへの脱皮を図ろうとしているように見える。

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