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» 2009年02月03日 22時41分 UPDATE

“子供とケータイ”を考える:子供たちは今、ケータイをどう使っているのか──「ネット安全安心全国推進フォーラム」開催

教育の現場では、ケータイを持ち込み禁止にするなど「子供とケータイ」に関する拙速な動きが見られる一方、規制するだけでは問題の解決にはならないとする意見も根強い。今、子供たちはケータイをどう使っているのか。「ネット安全安心全国推進フォーラム」でその実態を見てみた。

[石川温,ITmedia]
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 今、教育現場でケータイの是非が議論の的となっている。便利なツールであると同時に、ネット利用による被害も報告されるなど、“光と影”の部分があるケータイ。そのケータイの利用を一律に規制する動きとして、1月30日には文部科学省が都道府県教育委員会に対し、小中学校へのケータイの持ち込みを原則禁止すべきとする指針を通知した。しかし、単純に「危ないから使ってはいけない」と利用を制限するだけでは、問題の根本的な解決にはならない。禁止されていても使う人は使うし、「子供にケータイを持たせたい」と考える親もいるはずだ。

 こうした、まだあまり議論が進んでいない“子供と携帯電話の関わり”について、高校生や大学生、教師らが意見交換を行う「ネット安全安心全国推進フォーラム」が1月31日、文部科学省が事務局を務めるネット安全安心全国推進会議の主催で開催された。

大学生、高校生のケータイ利用実態

 実際、子供たちはいつ携帯電話を所有し、どのように使っているのか。フォーラムの最初のセッションで登壇した高校生2人と大学生2人が、現状や意見を発表した。

 1人は「小学6年生でプリペイドケータイを持つようになり、中学2年生になってから、利用金額が上がったので普通(ポストペイド)のケータイに切り替えた」と発言。ほかの3人も「中学1年生」「中学3年生」「高校2年生の時に仕方なく買った」と話し、子供の生活に自然と携帯電話が入ってきている様子が伺えた。

 彼らが普段、ケータイをどう使っているかは「部活でメーリングリストがあり、集合時間とかが通知されるので、メールはなくてはならない存在」「学校を休んだ友達にメールをすると喜ばれる。暗い夜道は電話をしながら歩くと安心」「メールだと普段、見えない相手の感情表現が見えるのがいい」と、実体験を交えて紹介した。特に電話とメール機能に関しては「ないと困る」という意見が大半を占めた。

 一方でケータイインターネットの利用に関しては、4人の間でも利用状況に違いが見られた。「ケータイ小説とかにはまっていた時期がある。電車の乗り換え案内も頻繁に使っている」という子供もいれば、「パケット通信料の定額制を使っていないから、めったにネットは使わない。Web接続はPCが中心」「電話代は月額5000円までと決められている。そのため、携帯電話でネットは使わない」など、料金プランがネット利用の抑止力として働いている様子が伺えた。「ネットは携帯電話よりもPCのほうが見やすい」というように、PCと携帯電話を使い分けている子供は、あまり携帯電話でのネット接続は行っていないようだった。

 昨今、子供が携帯電話に依存しすぎて、深夜まで遊んでしまい、日中の学校生活がおろそかになるという指摘がある。「携帯電話に依存してしまってはいないか」という質問に対して、子供たちは「気がついたらmixiをチェックしている。自分の周りにいる人の動きや自分に対する心証が気になる。5分ごとに接続している。依存していると思う」「ケータイ小説にはまっていたときは一日4〜5時間見ていた」「中2の頃、朝から晩までメールしていた」など、ほとんどの子供が何らかの依存状態になっていたことを告白した。

 どうやって依存状態を克服したか、という問いに対しては「ほかに楽しいことを見つけないと依存から抜け出せない」との答え。ただ「必ずしも依存が悪いとは思わない」という本音も聞かれた。

 今回登壇した子供たちは、ネットへの理解度も高く、しっかりと使いこなしているユーザーばかりだった。家庭でのルール作りがしっかりしており、それを子供たちも守っているようだった。

 しかし、「夜何時以降はケータイを使ってはいけないというルールを作っても、ルールが家庭内の取り決めだと子供は(学校などの集団の中で)孤立してしまう。やるならば、学校単位でルールを作った方がいい」という意見も。また「リテラシーはネットの住人から教えられた」など、実際にネットの世界を渡り歩くことで、学習していったという実体験も披露された。

 すでにネットやメールのコミュニケーションに疲れ、「携帯電話はさらりと使うぐらいがちょうどいい」という達観した意見も聞かれた。

「直接面と向かって言えない本音は本来言うべきではない」

Photo 武蔵野学院大学客員教授の木暮祐一氏。大学生の携帯電話利用状況を報告した

 武蔵野学院大学客員教授である木暮祐一氏は、大学生の携帯電話の利用状況として、10大学684人の調査データを公表した。それによれば、すでに19%の学生が2台目の携帯電話を所有している状況だ。ケータイは中学在学中か高校に入学する際に購入するケースが圧倒的に多いようだ。

 大学生に対し、「小中学生に携帯電話は必要か」という質問をしたところ、必要が56%、不要が44%で意見は真っ二つに割れたという。賛成派は「情報リテラシー向上のために必要。規制は意味がない」といった意見が多く、反対派からは「携帯電話のない不便さを知っておいた方がいい。視力が悪くなる」という声が上がったという。

Photo 子供たちと「中学生の中学生による中学生のための携帯ネット入門」という冊子を作った東京都大田区立大森第3中学校の大山圭湖教諭

 東京都大田区立大森第3中学校の大山圭湖教諭は「中学生の中学生による中学生のための携帯ネット入門」という、中学生がつくった小冊子を紹介。その作成目的と経緯を発表した。

 かつて、授業中に居眠りをする生徒が多いことに気がつき、子供たちに何が起こっているのかを調査したところ、深夜、メールやネットに時間を使い、昼間の学習活動に影響が出ている様子が浮き彫りになったという。そこでアンケート調査を実施したところ、子供たちのケータイ依存症が浮き彫りになった。

 その後、子供たちにパネルディスカッションをやってもらい「メールでないと本音が言えないことは正しいことなのか」を議論してもらったという。さらに、ケータイやネットにどのように関わればいいのかをまとめてもらうために、パンフレットの作成を子供たちに呼びかけた。それにより、「メールやチャットは相手の顔が見えないので、本音になりやすい。しかし、直接面と向かって言えない本音は本来言うべきではない」という結論に達した。

 大山教諭は「私自身、携帯電話を使いこなしていない。教員として教えられるものがない。しかし、子供たちの力を借りて、ともに学んでいくことで、授業を成立させていった」と話した。

 第2部では高校教諭やモバイル社会研究所研究員などが登壇。さまざまなネットサービスが登場し、「把握が難しくなっている」という現状が明らかにされた。現状の課題は、「親の情報リテラシーをいかに向上させるか」という点も大きいようだ。

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