ヒンジだけでなく、どのスタイルでもデザイン的に違和感がなく、持ちやすくなるよう、ボディ全体の小型化にも注力した。「幅、高さ、厚さの3寸法を小さくしたのに加えて角を落とし、より小さく薄く見えて手にしっかりなじむ形を目指しました」と青野氏。しかし、角を削いだ分だけ部品の実装体積が減るので、その中で部品を収めるのは難しくなる。
「バッテリーと基板を並列に置くか、重ねるか、それとも厚くて小さいバッテリーにするか、薄くて大きいバッテリーにするか……など、部品の構成は何パターンも考えました。製品版では、キーに近い部分にメイン基板があり、その上に主な部品を載せています。コネクタ類など長いものも、キーに近いところにまとめました。もう少し薄くできるパターンもありましたが、全体的なサイズのバランスを考え、ベストな構造を選びました」(青野氏)
バッテリーがスペースの多くを占めるボディの裏側は、バッテリーカバーが斜めにスライドするようカットした。そして「斜めにカットすることででき上がった内部の空間に(通信用の)サブアンテナを搭載した」(青野氏)という。
ワンセグのアンテナを完全内蔵タイプにしたことも、ボディの小型化と薄型化に貢献した。プロジェクトマネージャーの田上氏は「ワンセグの特性を考えるとロッドアンテナの方が有利ですが、薄型化を実現するために、ハードルの高い内蔵アンテナにトライしました。もちろん、ロッドアンテナと同等の感度を実現しています」と説明する。
細かいところでは、microSDスロットがサイドキーの間にあるのが珍しい。サイドキーは再生、音量調節、早送り/巻き戻しの5つは必要だったため、最も自然な「音量調節、早送り/巻き戻し」と「再生キー」の間に配置した。スロットのカバーは、ほとんどの機種が採用する縦に開くタイプではなく、360度回転するタイプが使われている。
「通常の(縦に開くタイプの)タイプだと(スロットカバーの)接続部が長く、すぐ近くにバッテリーがあるため、これ以上伸ばせませんでした。ACアダプタのカバーが回転式だと、充電中にプラプラして邪魔になりますが、microSDなら着脱するときだけなので、問題ないと思います」(青野氏)
ボディカラーの配色にも注目したい。本体の表側と裏側のパーツごとに色を変えている機種はあるが、(パーツが表裏の2つのみなので)通常は2色しか使われない。しかしPremier3は表裏に左右を加えた4つのパーツで構成されており、パーツごとに計4色を使っている。
「単に左右のパーツを重ねたただけでは本体が太くなってしまうので、4方向からパーツを組み合わせました。つまりパーツ同士が重なり合う部分がなく、どれか1パーツを取ると、解体されます」と鈴木氏。左右にさらに2色を加えたのは、「本体を閉じたときに帯がぐるっと1周したトラック形状を作りたかったから」だという。
ダイヤルキーやソフトキーには、シート上に正方形のキーを配した「ブライトスクウェアキー」を採用した。
薄型化に注力したケータイにはシートキーがよく使われるが、クリック感がなく操作性では劣る傾向がある。そこでPremier3では、シート上にさらに正方形のキーを乗せたキーを採用し、薄型化と操作性を両立させた。キー自体は小さいが、クリック感があり押しやすい。
「このキーは、サイズや感触別にかなりの数を試作しました。キーはユーザーが一番触る部分なので、薄型化に注力しつつも優先的にスペースを使いました。最終的にはどのキーもクリック感があり押しやすくなりました」と鈴木氏は自信を見せる。
さらに、「各キーの周囲に凹凸を付けてタイル状に区切り、通常のキーと同じ感覚で押せるよう配慮しました」と鈴木氏。ちなみに、タイル状のキー周辺部はダミーなので押しても反応はしない。
本体を閉じた状態からワンタッチでLISMO Playerを起動できる背面のキーは、円形の下半分が窪む独特の形状を採用した。「キーが突起していると誤操作する恐れがあるので、極力フラットにしようと思いました。ただ、フラットすぎると押しにくくなるので、円の窪みの片側だけ押せるよう工夫しました」と鈴木氏は説明する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.