エヴァアプリで花開くiPhoneビジネス松村太郎のノマド・ビジネス(2/2 ページ)

» 2009年03月05日 00時00分 公開
[松村太郎,ITmedia]
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コンテンツと技術でマッシュアップ

 今回の一連のエヴァアプリは、アプリヤが『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』の公式ライセンシーとなり、制作・販売にこぎ着けた。ここにも、アプリヤ流のiPhoneアプリの作り方が存在している。

 まずはコンテンツを見つけてライセンシーになる部分の活動が必要だ。

 「権利者の方々のiPhoneに対する反応はさまざまでしたが、『よく分からない』という声が多かったですね。一方で、担当者レベルで非常に盛り上がるパターンもありました。とはいえ、基本的にはすでに多くの方々がケータイコンテンツの制作には携わっていたので、基本的に抵抗感はなかったですね」(新城氏)

 アプリ化できるコンテンツが集まったら、今度はそのコンテンツをアプリに実装するプロセスに入るわけだが、この際のプロセスも、アプリヤは少々変わっている。

 たいていのiPhoneアプリの制作者は、企業でも個人でも、開発リソースありきでスタートを切るところが多い。しかしアプリヤは開発リソースを社内で丸ごと抱えるのではなく、既存のアプリ開発者とのネットワークを活用してプロジェクトを進める。

 「今回のエヴァアプリのように、ゲームではなくグッズとなると、アプリ開発としては規模が小さくなります。その場合の開発リソースをどう確保するかを考えた結果、すでにどこかで使われているアプリをベースにしながら、ライトに開発を行うことを目指しました。エンジンや土台となるアプリを見つけて、そこにコンテンツを載せていくという手法を採用しています」(小田嶋氏)

 今回のエヴァアプリでは、カレンダー以外の4本のアプリを、ケータイコンテンツでも定評のあるボトルキューブが開発した。カレンダーアプリは「Quick Calendar」を制作したkanotomo氏が手がけている。例えばボトルキューブのWebサイトでiPhoneアプリのカタログを見てみると、今回のエヴァアプリの元になったようなアプリ群を見ることができる。

 「個人・法人を問わず、優れた方々と一緒に仕事をしたいと思います。我々は作り手、権利者、インフルエンサーなど、人々がつながって初めて何かを成し遂げることができると考えています。それぞれがばらばらに本領を発揮するのではなく、そうした人々をうまくつなげてアプリを送り出し続けられれば、と思っています」(新城氏)

 僕も2月末に、毎月アプリヤのオフィスで開かれている「APPLIYA NIGHT」にお邪魔してきた。すでにアプリヤとアプリ開発を進めている企業や個人、そして誘い合って訪れる人たちで賑わっていた。このネットワークが、アプリヤにとってとても大切なエンジンとなっていくのであろう。

日本のコンテンツを世界に売り出す“駄菓子屋”になりたい

 「日本のコンテンツを、世界へ向けて出していくチャンスは、今までなかなかありませんでした。このチャンスを生かせるように頑張っていきたいと思っています。Appleが用意したApp Storeは、アプリをいきなり世界に向けて売れる場です。そこでは個人も法人も関係ありません。そういう中でどのようにして埋もれず残っていくか──。私たちは“特化”した戦略を加速させます」(新城氏)

 アプリヤは、非常にレトロな日本のカルチャーをコンテクストに持っている。最近の傾向でいうと、iPhoneアプリの価格は100円(105円)から200円(210円)、高くても2000円前後に落ち着きつつある。この安い価格帯の“面白いもの”をたくさん扱っているお店は、今でこそ少なくなってきたが「駄菓子屋」のイメージだ。

 「昭和の時代、駄菓子屋には子どもたちが集まってきて、安いお菓子を買いながら過ごす日常がありました。日本のコンテンツを世界に送り出すときに、ちょうどいいのが駄菓子屋の感覚だと思っています。エヴァアプリの経験は、次のアプリ開発にもつながっています。日本らしいコンテンツを開発者と実装する、この形でアプリ作りをしていければ、これからもきっと面白いものが送り出せるのではないかと思っています」(新城氏)

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