Nokiaが再参入、カシオは独自端末を投入――個性派ぞろいの2009年韓国ケータイ春モデル韓国携帯事情(2/2 ページ)

» 2009年04月09日 07時00分 公開
[佐々木朋美,ITmedia]
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ユニークさで勝負のシンプルケータイ

photo 厚さ11ミリというスリムデザインのSKYフー。ディスプレイに2.6インチ液晶を採用、200万画素カメラとmicroSDスロットを搭載する。地上波DMB、HSDPAに対応している

 2007年に経営難に陥っていたPantechだが、最近は好調で6四半期連続で黒字を計上している。昨年は約2兆900億ウォン(約1550億円)の売上と、約2000億ウォン(約148億円)の営業利益を上げるなど好調だ。KDDIなど海外キャリアへの積極的な販売が実を結んだようだ、一方で国内ではシンプルながらユニークな端末を多く販売している。

 最近の話題作は“SKYフー”こと「IM-S410」(SKTとKTF)だ。名前の由来となったのが、マイクに向かってふーっと息を吹きかけることで操作する風認識機能。例えば待受状態で息を吹きこむと、画面画面の植物の葉が落ちて蝶が羽を動かしたり、ろうそくの灯が揺れるなどの変化が楽しめる。そのほかにも、カメラやテレビ電話中のアイコン送信などの実用的な操作も行える。

 最初は“吹いて”携帯電話を操作するということ自体に戸惑いがあるが、慣れると送る風の強さを自在に調整でき、遊び感覚で利用できるのが楽しい。カラーはホワイトとブラック、グラデーションレッドの3種類で、価格は50万ウォン(約3万7000円)台だ。

 日本と同じく韓国でも治安の悪化が心配されている。ぶっそうな世の中で募る不安感に、セキュリティを強化した携帯電話が販売されるのも時代を象徴しているのかもしれない。

 Samsung電子は“ボディーガードフォン”こと「SPH-W7100」(KTF)を発売した。最大の特徴は、背面上部につけられたリングを引っ張ると、最大70メートル先まで伝わるという100デシベルの警告音が鳴り響く点だ。また本体右側面にある呼び出しボタンを押すと、家族や友人など、あらかじめ指定しておいた相手の番号にSOSメッセージやGPSを利用した位置情報を送信できる。GPSが受信できない場合は、基地局の位置情報からユーザーの所在地を測位する。

 大人はもちろん、子ども用としての需要も高まると見込まれていることから、英単語や漢字練習、数学計算法など学習機能も搭載した。また親がメッセージ発信件数を制御できる機能もあるほか、子ども好みのカラフルなキャラクター別UIも搭載されている。

 背面には36種のアイコンを表現できるLEDを搭載。モーションセンサーを搭載しているので、本体を振り動かすことでLEDアイコンが変化する。このアイコンはユーザーの好みでカスタマイズすることも可能だ。

photo 透明感のある丸みのある本体が特徴のボディガードフォン。学習ソフトの中には、ニンテンドーDSの「ます×ます百ます計算」ソフトも内蔵され、楽しく計算を勉強できるようになっている

 LG Electronicsは3月末の韓国市場での占有率において、2000年10月以来の30%超えを達成したと発表した。中高年をターゲットとしたシンプルケータイ“ワインフォン”や、若者をターゲットにかわいらしさを全面に出した“アイスクリームフォン”など、年齢層別のシンプル携帯が、躍進の原動力だ。

 そんな同社が大々的なマーケティングを展開しているのが、“ロリポップ”こと「LG-SV800(SKT)/LG-KH8000(KTF)/LG-LH8000(LGT)」だ。カバー部分に220個のLEDを搭載し、花火やハート、くじらなど多彩な模様が表示される。同様の機能はアイスクリームフォンにもあったが、LEDの数が多い分、動きが多く見ているだけで楽しめる。

 カメラは300万画素と、さほど高画素ではないが、撮影した際に顔が小さく写り、近距離でもたくさんの人が一緒に構図に入る広角レンズを採用した。またモーションセンサーを搭載し、着信音が鳴った際に本体を裏返すだけで無音にできる便利機能もある。画面のアイコンは、手描き感覚のパステル調で、ケータイというよりおしゃれな雑貨といった印象も受ける。

 性能はシンプルだが、ちょっとした部分に“こういうのが欲しかった”と思わせる魅力が光る。ユーザーのニーズをきっちり把握しているからこそ実現できる、細やかな気配りが感じられる端末だ。

photophoto 10代後半から20代前半が主要ターゲットとあり、かわいらしさが全面に出されている「ロリポップ」。DMBに対応していないなど機能が削られている反面、50万ウォン(約3万7000円)台前半と安価な普及型モデルだ(写真=左)約8カ月で25万台を売り上げた「アイスクリームフォン」の後続作「アイスクリームフォン2(LG-LU1600)」。カバー部分には、LEDで26種類の模様が浮かぶ(写真=右)

 スマートフォンや高機能なUIを搭載したフルタッチパネル端末が注目を集めるのは変わらないが、シンプルケータイでもLEDによる光の演出やカラーリング、モーションセンサーやマイクを使った機能など、ユニークな特徴が際立っている。また、機能やデザインが国内メーカーとは一味違う、目を引く海外製端末も種類が増えてきた。セキュリティや健康など、ユーザーのライフスタイルに直接かかわる機能やサービスも浸透し始めている。

 市場が成熟するなかで、ユーザーのニーズは多様化し、売れ筋商品も多岐に渡るようになる。韓国の携帯市場では今、人気端末の中にもはっきりとした棲み分けがみられるようになった。2009年を境に、今後もこうした傾向はますます強まっていくとみられる。

佐々木朋美

 プログラマーを経た後、雑誌、ネットなどでITを中心に執筆するライターに転身。現在、韓国はソウルにて活動中で、韓国に関する記事も多々。弊誌「韓国携帯事情」だけでなく、IT以外にも経済や女性誌関連記事も執筆するほか翻訳も行っている。


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