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» 2009年09月11日 20時51分 UPDATE

試作機から金を抽出、携帯へ再利用――ソニー・エリクソンの“資源循環プロセス”とは

ソニー・エリクソンが携帯電話リサイクルの新たな取り組みを行う。同社が着目したのは“試作機”と“金”。使用済みの評価用試作機から金を抽出、精錬して金線を作り、これを携帯電話の半導体に用いるという手法だ。

[田中聡,ITmedia]

 ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズは9月11日、携帯電話の評価用試作機から金を抽出し、半導体に加工して携帯電話に再利用する資源循環プロセスを確立したと発表した。このプロセスを採用した最初の携帯電話を、au向け端末として2010年に出荷する予定。すでに市場に販売された使用済みの携帯電話を回収して金を抽出するプロセスはあるが、携帯電話メーカーが自社の試作機を回収して金を新製品に再利用するのは国内初となる。

photo ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ 常務取締役 高垣浩一氏

 ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ 常務取締役の高垣浩一氏は「使用済みの携帯電話を集める自主回収活動はすでに開始しているが、さらに何かできることはないかを考えた際、“試作機”に注目した。現在、携帯電話には1機種あたり数千台の試作品を使っており、これまでは廃棄物として処理していたが、これを再利用したいと考えた」と取り組みの経緯を説明した。

 ソニー・エリクソンは環境への取り組みとして「化学物質管理」「省エネ・地球温暖化防止」「資源循環(リサイクル)」の3つを展開している。今回の資源循環プロセスは、3つ目のリサイクルに踏み込んだものとなる。

 資源循環プロセスでは、ソニー・エリクソンがこれまでに開発した試作機約5000台を自主回収し、そこから約230グラムの金を抽出、約30キロメートルの金線へ加工する。その後、携帯電話約100万台分の半導体を製造し、加工した金線を含む半導体を携帯電話の新製品に利用する。加工された金線は半導体のアンテナ用スイッチMMIC(モノリシックマイクロ波IC)に使われている。

 なお、今回の実験にはソニーグループが排出した廃基板処理や、ソニーが北九州市で2008年9月から実験してきた小型電子機器回収のノウハウを活用している。今回製造した約230グラムの金の中には、ソニーが北九州市で使用済み小型電子機器から自主回収した金が40グラムほど含まれる。この新しい取り組みは「ソニーグループの協力があって実現できた」(高垣氏)。

photophoto 販売された使用済み携帯電話の自主回収はすでに展開している(写真=左)。金の資源循環プロセスの流れ(写真=右)
photo ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ 社会環境室 蔵田竜一氏

 ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ 社会環境室の蔵田竜一氏は金に着目した理由について「携帯電話は電気を通して作動する部品が多いので、導電性の高い金を採用した。また金は金メッキのように広く伸ばして使えることも大きい」と話した。ただし商品の生産数に応じて試作機が作られているわけではないので、「少量の金でも使える半導体を探した」という。

 約5000台の試作機から約100万台分の金を抽出できたということは、試作機1台で200台分の金を抽出できる計算になる。「(日本国内の)ソニー・エリクソン製携帯の試作機は年間5万台ほど製造されている」(蔵田氏)ので、単純計算すると、資源循環プロセスを採用した半導体を利用できる携帯電話は年間約1000万台に上る。

photo ソニー 調達本部 第1調達部門 機構部品1部 資源循環室 室長 山縣朋仁氏

 一方、金の資源循環プロセスの期間は、ソニー 調達本部 第1調達部門 機構部品1部 資源循環室 室長の山縣朋仁氏によると、使用済み試作機から金を抽出して金線へ加工するまでに約3カ月、半導体を製造するまでに数カ月、計半年程度を要するという。蔵田氏は「金鉱山から再生した金も、家電から再生した金も品質は同じだが、金線にするまでの方法が異なるので、材料が一緒でも再評価に時間がかかる。開発ロスを抑えないと、1年という製品開発サイクルでは実現できない」と話す。2010年以降も毎年・毎商戦、金の資源循環プロセスを継続するかは未定とのことだが、いかに効率よく品質を評価できるかがカギとなりそうだ。

photophoto 携帯電話には金が約0.03グラム含まれる(写真=左)。携帯電話には500種類以上の半導体や電気部分が含まれており、使用できる資源と使用量を考慮して対象製品と部品を選定する(写真=右)

 金の資源循環プロセスを立ち上げるにあたり、ソニー・エリクソンはパートナー企業との役割分担を34パターンほど検討した結果、ソニーと組むのが得策だと判断。金属系廃棄物の分別と排出はソニー・エリクソン、貴金属の精錬と部品への再生はソニー、製品への使用はソニー・エリクソンが担当することになった。同社は最初のステップである分別と排出を実践するにあたり、社内ルールを変えたという。「試作機にはバッテリーやポリ袋などがセットになっている。従来はまとめて廃棄していたがこれを分別し、排出は都度ではなく、一定量たまったらまとめて行うようにした」(蔵田氏)

photophotophoto 資源循環プロセスは2009年1月に開始し、ソニー・エリクソンとソニーで分担している(写真=左)。付属品と携帯電話本体は分別して廃棄するようになった(写真=中)。使用済みの試作機約5000台が占める体積は約1立方メートルとなる(写真=右)

 今回の資源循環プロセスで使用する半導体は現在は1品種のみだが、「半導体は複数品種に増やしたい。また対象となる金属についても、銀や銅、パラジウムなどの採用も検討している」(高垣氏)。同社は今後も「環境への負荷を低減する活動に積極的に取り組んでいく」とした。

photophoto これまでリサイクルは廃棄物処理業者にお願いしていたが、ここをソニーの調達本部が担当。部品メーカーに、ソニーが再利用できるよう廃棄物を加工してもらう交渉などを行っている(写真=左)。資源循環材の調達企画について(写真=右)
photophoto 既存の取引先やプロセスを採用することで、効率的な品質管理が可能に(写真=左)。循環材の中間処理には、ウォークマンなどほかの家電と同じ手法を採用している(写真=右)
photophotophoto 資源循環プロセスに使用した100台分の試作機(写真=左)。5000台分の金(230グラム、写真=中)。加工した金線。1つあたり3キロメートル(写真=右)
photophotophoto 製造した半導体のイメージ(写真=左)。実際に製造した半導体のサイズは2(幅)×2(高さ)×0.6(厚さ)ミリ(写真=中)。金線はさらに小さい約0.3マイクロメートルとなる(写真=右)

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