第22回 タッチUIと“ガラケーサイト”コンテンツ業界の底辺でイマをぼやく(2/2 ページ)

» 2009年11月09日 19時30分 公開
[トミヤマリュウタ,ITmedia]
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まずは気遣い・心遣いレベルで対応しはじめましょう

 今後、タッチUI対応ケータイがどれほど普及し、タッチ操作でのブラウジングがどれほど一般化するのか、それは正直分かりません。分かりませんが、デザインはとどのつまりが気遣い・心遣いと申すもの。「タッチ操作でもハードウェアキーによる操作でも使いやすく」といったことを念頭においておく必要があるのではないでしょうか。

 改善はほんの些細なところからも可能だと思います。例えば、

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というサムネイルとテキストの組み合わせがあった場合、どうやってリンクを貼るべきでしょうか。ありがちなのは、

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と、[トミヤマリュウタ]の部分にだけリンクを貼るというパターンでしょうが、これではタップ範囲が小さくなってしまいます。また、タッチUI操作では、とたんに画像をタップしたくなるものですから、ここでは、

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と、サムネイル画像および紹介文側にもリンクを貼ってしまうことをオススメします。良くないのは下記のパターン。

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 隣接するテキストに異なるリンクを貼るやつです。例えば、「[トミヤマリュウタ]」のリンクを押したら連載の一覧が現れて、「連載更新! コンテンツ業界の底辺でイマをぼやく」を押したら最新の記事が表示されるという意図を持ったものですね。

 その意図は分かるのですけど、これはタッチUIに向いていないばかりか、“ガラケー文化”に慣れ親しんでないユーザーにとっても分かりづらいものなのではないでしょうか。ここら辺の話、私的にいうと、「分かっている人しか使えないガラケーサイト」「マニア受けに走るメジャーサイト」「複雑化しすぎた料金体系」「いつまでカタカナは半角なのか」という問題も目の前には横たわっているのですが、それはまた別の機会ということで……。

ビューワーに対してお金を払う時代

 iPhone後……というか、Androidも含めてですが、“ポストApp時代”である現在の視点から見ると、ケータイのブラウザ&サイトは、セットでビューワーアプリのような位置づけになっていくのではないでしょうか。

 ビューワーは、目的のコンテンツが、見やすく、利用しやすくなっていなければ、その役目を果たしません。すでに現在は「多くのコンテンツが並列にネット上に存在し、そのコンテンツを取り出す優れたビューワーが支持され、消費される」という時代。どこで買っても内容も金額も同じなら、近く or 素敵な街にある、選びやすくて買いやすい(さらに素敵な笑顔で応対してくれるならなお良い)お店で購入したいわけで、それはWebコンテンツも同じことでしょう。同じコンテンツなのであれば、より使いやすいビューワーで楽しみ、コンテンツを消費したいわけです。

 ケータイ小説の“書籍”がパッと消費されていったのも、ノベルティグッズ的な側面のみならず、「同じコンテンツであれば、見やすいビューワー=書籍で」という側面が、多分にあったのではないかと考えます。ちょっと脱線しますけど、安上がりなプラットフォーム(例:ブログ、路上ライブ)でコンテンツを育てて、お金を払うに値する利便性を持ったビューワー(例:書籍、CD)に移植し、マネタイズするというのは、ある意味とっても普通の話ですよね。コンテンツがビューワーに縛られる必要性はないわけです。

 そんな風に考えていくと、いわゆる日本の“ガラケーサイト”も、ユーザーが「タッチUIで使う」「ハードウェアキーで使う」などとメインのUIを選択できるようになるのがベストなのでしょう。もちろん、そこまで対応できるのは大手サイトだけでしょうが、そこまでできるのであれば、大きな強みになるともいえます。コンテンツがフラットになっていく時代における、1つの差別化手段です。

 iPhone市場で乱立するTwitterアプリのようにして、ケータイの公式サイトを利用しやすく見やすくするビューワーを、外部の第3者が容易に作れる時代がくる……とは到底思えないので、“ガラケーサイト”におけるUI面での革新は、ひとえにCPさんのがんばり(もしくは通信会社さんとのコラボレーション)以外にありえません。

 そして、すでに目の前にはタッチ操作とハードウェアキー操作というUI上でのギャップが横たわっています。考えなしに汎用なインフォメーションデザインにしてしまえば、タッチでもハードウェアでも、いまいち使いにくい「ビューワー」になってしまう可能性大……とまではいいませんが、“可能性中”くらいは感じるところ。タッチUI対応ケータイの普及と、タッチパネルでのウェブブラウザ操作の一般化がどのように進むのかを注意深くみて、どこかのタイミングで割りきる必要が出てくるのかもしれません。

プロフィール:トミヤマリュウタ

ときにライター、ときにデザイナー、ときにプランナー。某携帯電話関連会社にて某着メロ交換サイトを企画するなどといった若気のいたりを経て、2001年に独立。2004年には有限会社r.c.o.を設立し、2008年に株式会社化。書籍、雑誌、ウェブの執筆・デザインなど、各種制作業務を中心に活動。2006年あたりから始まったケータイ業界再編の波にもまれていうるちに、近年では大手携帯電話会社のコンテンツ企画を手がけることになっていたりと、なんだか不思議な毎日。


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