スライド型のワンセグケータイとしては世界最薄の厚さ約11.9ミリ(最厚部約14.7ミリ)を実現した京セラ製のau端末「SA001」。SAブランドの端末としては2008年7月発売の「W64SA」以来となるSA001は、京セラが三洋電機の携帯電話事業継承後に開発された初のモデルとなる。SA001で特に注力したポイントとは。今後もSAブランドは継続するのか、そしてKブランドとのすみ分けは――。京セラ 通信機器関連事業本部 移動体通信機器第一統括事業部 マーケティング部 国内企画部 国内企画1課の田中宏幸氏と、同社 通信機器関連事業本部 移動体通信機器第二統括事業部 移動体第2技術部 プロジェクト推進部 プロジェクト課 副責任者の大澤宣昭氏に話を聞いた。
田中氏は「SA001は三洋電機端末の強みだったスライドと、京セラが得意とする薄型技術を生かしたモデルです」と説明する。三洋電機はこれまでも「W54SA」や「W61SA」などのスライド端末を開発してきたが、ボディが厚いことで不満の声が多かったという。そこでSA001は「世界最薄のスライド端末」を絶対的なコンセプトとして開発に着手した。W64SAの発売から1年以上の間隔が空いたのも、「世界最薄を実現する上で検討期間を費やしたため」(田中氏)だという。
薄型化には京セラの技術を採り入れ、最薄の部品を数多く投入した。中でもディスプレイの薄型化には苦労したようだ。SA001のディスプレイには傷が付きにくい「強化ガラス」を採用しており、このガラス自体も薄くしている。「通常の強化ガラスはネジを使って止めるが、SA001では熱をかけて強化ガラスを貼り付けることで、液晶とガラスの隙間も薄くした」(大澤氏)という工夫も加えた。またW54SAで培ったノウハウを生かし、スライド機構のバネもより薄い素材を採用。ディスプレイ面の内部にはマグネシウムとステンレスを使っているので、「曲げようとしても曲げられない」ほどの強度も確保した。
バッテリーカバーには通常、樹脂が使われているが、SA001では厚さ11.9ミリを実現するために金属製のカバーを採用した。ここで苦労したのが「アンテナの配置」だ。「金属の近くだと電波が干渉するのでアンテナは入れられません。今回は樹脂の近くにアンテナを入れました」と大澤氏は説明する。
十字キーには、上下左右に傾けてスムーズにカーソル移動ができる「ジョグキー」を新たに搭載した。これはSA001のターゲット層が10〜20代の男女であることを考慮し、文字入力やWebをよく使う人向けに採用したという。「通常の十字キーは指を左右上下に動かす必要がありますが、ジョグキーは指を置くだけで簡単に操作できるので、指の移動量を減らせます」と田中氏はメリットを話す。
ジョグキーの(凸の)高さとカーソル速度は社内アンケートを採り、ベストな組み合わせを採用した(速度を変更する設定は設けていない)。「高さはあまり出っ張らせたくないので、ギリギリのところに留めました」(大澤氏)。重さについてはバランスを重視し、「決定キーが軽いと上下左右のカーソル移動を誤る恐れがあるので、ある程度重くした」(田中氏)という。
樹脂だと厚さが増してしまうため、ジョグキーとクリアキーにはアルミ素材を採用し、デザインのアクセントとしても一役買っている。また、この2つのキーは「縦向きでも横向きでも操作しやすいよう」(田中氏)、丸形にした。
もう1つ外観のポイントとして、ディスプレイ下部のキー周辺に凸状のスペースを設けた(イノセントブルーなら白い部分)。これは指をかけてスライドしやすくなることを狙ったため。「薄いだけではスライドしにくいので、ツートンのデザインも兼ねて工夫しました」(田中氏)
機能面での注目は、KCP端末の「W51SA」にも搭載されていたスライド連動機能を採用したことだ。本体を開いて着信の応答と通話ができるほか、受信メールを表示して本体を開くと返信メールの作成画面に切り替わる。プライバシーにも配慮し、着信時に相手の名前が画面に表示されない設定もできる。さらに、W51SAにもない新機能として、スライド開閉するたびに待受画像がランダムに表示される「オープンシャッフル」も搭載した。
SAユーザーからの要望を反映したポイントとして、先述の「強化ガラス」と、汚れを付きにくくする「クリーンクリアコート」をディスプレイに施した。中でも女性に喜ばれそうなのがクリーンクリアコートだ。「画面を油性ペンで汚しても、水性ペンのようにインクを弾くので、油汚れやファンデーションなどもキレイにふき取れます」と田中氏はそのメリットを説明する。
SAのKCP端末には、当日のスケジュールが待受画面に表示される「日めくり手帳」や、カレンダーの背景に好みの画像を表示させる「シースルー表示」、特定のユーザーとやり取りしたメールの表示をオフにするプライバシー設定など数多くの便利機能が搭載されていたが、KCP+のSA端末では完全にはキャッチアップできていない。これらの機能は復活するのだろうか。
田中氏は「スライド連動機能など復活させた機能もあります。そのほかの機能については、要求度がどれだけ高いかを踏まえて、どこに注力するかを考えたいです」と回答。三洋電機は2007年のケータイの顧客満足度でトップを獲得した実績もある。田中氏も「気遣いのある機能などカタログには出てこない部分を評価いただいたのでは」と見ているだけに、今後の改善に期待したい。
また、これまでのSA端末は“FMケータイ”として、当初からケータイのFMラジオ機能を訴求してきたが、SA001にはFMラジオは搭載されていない。「SA001も“ほぼ全部入り”だと思っていますが、“世界最薄スライドワンセグ”を優先したので、FMラジオは見送りました」と田中氏は説明する。FMラジオの搭載も、端末のコンセプト次第といえそうだ。
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