防水性能は、ドコモ向けに発売した「SO902iWP+」で培ったノウハウを生かしつつ、BRAVIA Phone U1ならではの工夫を施した。その大きなポイントが形状だ。防水ケータイは角ばったボディになりがちだが、BRAVIA Phone U1は裏面(バッテリー側)が丸みを帯びており、手にフィットする。機構設計担当の今井氏によると、これはパッキンの位置を変えることで実現したという。「バッテリー側にアールをつけるためにはバッテリー側の構造物を減らし、空いたスペースを削ってアールを施す必要があります。そのため、通常はバッテリー側に施すパッキンをダイヤルキー側に移動させることで、アールを付けられるスペースを確保しました」(今井氏)
デザイン担当の鈴木氏も「防水だから握りが悪くなるのはあり得ません。防水でも非防水ケータイと同じ使い勝手を目指しました」と操作感へのこだわりを強調した。
ボディの厚さにもこだわり、回転2軸型の防水ケータイとしては世界最薄の16.7ミリを実現した。「大きなディスプレイと多数のデバイスを搭載するとボディサイズが大きくなります。今回は映像を楽しんでもらうきっかけを作りたかったので、サイズ感と薄さを追求しました」と田中氏はその意図を説明する。さらに、サイドキーの配置も工夫し、ビュワースタイル時に右手だけで違和感なく操作できるよう、4つのキーを近くに備えた。
ただ、使い勝手を損なわずに薄型を実現するには苦労したようだ。「バッテリーカバーの裏側にもパッキンがあるので、内部に使えるスペースが減ってしまいます。また、サイドキーを搭載するには側面の“壁”が必要になりますが、パッキンがキー側にあると壁がなくなってしまい、配置しにくくなります」と、今井氏はパッキンがスペースを食う要因となったことを説明する。
そこで新たに開発したのが、今までの同社のケータイでは“最細”の基板だ。この基板を用いることで端末の面積を縮小でき、サイドキーも配置できるようになった。バッテリーもこれまでの同社端末と同じものを採用した。「キー側にパッキンを配置したことで二重構造になるので、幅がいじめられます。それでも、違和感なく操作できるようダイヤルキーのスペースを確保しました」(鈴木氏)
ボディのアールはディスプレイ面にも施し、ビュワースタイル時に左右対称に見えるようにした。鈴木氏は「BRAVIAというブランドを付けるからには、この形(ビュワースタイル)でテレビの形を訴求したかった」と話す。
閉じた状態ではBRAVIA Phone U1の顔となる背面パネルは、水回りのシーンでも映えるよう、深みと透明感が出るよう努めた。特にレッドは奥行きが出るよう調整を重ねたという。「これまでは透明の樹脂の表裏に“箔”を転写して色を付けていましたが、箔で出せる色には限界がありました。そこで、透明の樹脂そのものにも色を付けることで、より深みのある赤を出せるよう調整しました」と今井氏は説明する。従来の“箔の色”よりも“色の付いた樹脂”の方が奥行きが出るというわけだ。
なお、樹脂自体に色を付けたのはレッドのみで、サファイアブラックとゴールドでは透明の樹脂を使っている。ゴールドは光沢が出るよう“蒸着箔”を使った。「最後までデザイナーと色味を議論した」(田中氏)というゴールドは、最初は男性寄りの沈んだ色だったが、男女両方に響くよう最終的には明るい色になった。「ディスプレイ側面のシルバーラインと合うよう調整しました」(田中氏)
ソフトウェアではデコレーションメールの使い勝手を向上させた。デコレーション絵文字を3000種類内蔵したほか、受信したデコレーションメールに含まれるデコレーション絵文字をカテゴリーごとに保存できるようにした。また、従来の機種ではEメールとデコレーションメールの入り口が分かれており、デコレーションメールでは(本文に直接文字を入力できる)インライン入力に対応しておらず、1ステップ多かった。BRAVIA Phone U1では入り口が統一されたので、Eメールと同じ操作感でデコレーションメールを作成できる。
ソニー・エリクソンのKCP端末のユーザーから復活を望む声が多かったという「スマートバー」を搭載した点にも注目したい。この機能を利用することで、EメールとCメールの差出人や件名、緊急地震速報、再生中の音楽情報などが画面上部にテロップで表示される。
撮影した写真を音楽とスライドショーで再生できる「音楽付スライドショー」は、カレンダーを写真と一緒に表示できるようになった。これは「デジタルフォトフレームからヒントを得た」(田中氏)という。また、カレンダーの当日には下線が出るようにし、目立たないが細かい部分にも手を加えた。
BRAVIA Phone U1を投入したことで、ソニー・エリクソンのau向け端末は「Cyber-shotケータイ」「Walkman Phone」「BRAVIA Phone」という3つの家電ブランドを冠したモデルがそろった。今後もこうしたブランド連携は深めていくのだろうか。
田中氏は「AVエンターテインメントを軸にしながら商品を投入していく思想は変わりません。お客様に提供したい新しい機能や使い勝手はその時々にあるので、そこを最大限訴求するのに必要なブランドを付けたいです。ブランド連携はどんな機種かを分かりやすく伝えるには有効な手段なので、ニーズがある限りは出していきたいです」と話す。
ケータイの映像機能がカメラや音楽ほど使われていないということは、潜在的なニーズがあるともいえる。BRAVIA Phoneが動画市場を掘り起こせるのか、今後の展開も含めて注目したい。
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