コラム
» 2009年12月30日 09時00分 UPDATE

ITmediaスタッフが選ぶ、2009年の“注目ケータイ&トピック”(編集部山田編):2009年は「モバイルAR元年」だった

モバイル端末の拡張現実(AR)に注目が集まった2009年。火付け役ともなったiPhoneアプリ「セカイカメラ」と、日本のケータイでARが楽しめる貴重なアプリ「実空間透視ケータイ」について振り返ってみる。

[山田祐介,ITmedia]

 漫画「ドラゴンボール」に登場する「スカウター」(相手の戦闘力が分かる片眼鏡型の装置)のように、デバイスを介して目の前の場所や個人の情報を知る――。2009年は、そんな世界が現実になり、大きな注目を集めた年だった。テクノロジーによって現実空間に情報をオーバーレイする拡張現実(AR)の技術が、iPhoneやAndroidといった高機能で多種のセンサーを備えたモバイル端末と組み合わさることで、一般ユーザーが気軽に体験できるようになったのだ。

photo セカイカメラでエアプロフの機能をオンにすると、頭上にプロフィールのアイコンが浮かぶ

 そんな“モバイルAR”の日本における火付け役となったのは、頓智・(とんちどっと)の開発したiPhoneアプリ「セカイカメラ」といっていいだろう。同アプリはiPhoneのカメラ映像に「エアタグ」と呼ばれる位置情報とひも付いたコンテンツを追加するサービスで、ユーザーが自由にテキストや写真、音声などのエアタグを投稿できる。2009年9月24日に日本のAppStoreで配信を開始し、現在は“バージョン2.0”を全世界で公開している。

 現行バージョンでは、ユーザーの頭の上(正確に言えばiPhoneの上)にプロフィールのエアタグが浮かぶ「エアプロフ」機能も設けられ、まさにスカウターの世界観が楽しめる。しかし、街中でセカイカメラをかざして、行き交う人々のステータスが分かるかというと、そうしたケースは少ない。まだまだユーザーは少ないし、自分だけでなく相手側もアプリを起動している必要があるため、なかなか機会に巡り会うことがないのだ。

 モバイルARの世界は誕生したばかりで、サービス像は確立していない。現状では端末の処理能力が追いついていなかったり、位置情報の“最後の数メートルの誤差”を埋める能力がなかったりと、もどかしさを感じる部分もたくさんある。例えば街のイルミネーションをエアタグとして残そうと、冬の寒空の下、iPhone 3Gでアプリが起動するのを待つのはちょっとしんどいのである(iPhone 3GSなら起動も速いので、多少の寒さは耐えられる)。2010年のモバイルARは、こうしたもどかしさを解決すること、あるいは「もどかしくても使いたい」ようなインセンティブを作り上げていく必要があるだろう。

 頓智・では今後、ソーシャル機能の強化、マルチプラットフォーム展開、グーグルのページランクのような情報のフィルタリング機能の開発に加え、3Dキャラクターを画面上で動かすといったことに真剣に取り組んでいくという。取材を通じて筆者が感じたのは、頓智・という会社は「面白そうだけど、実現するのはまだ先だ」と思われるような未来を本気でたぐり寄せようとしているということ。「街角を初音ミクが歩いていた」というような未来がやってくるのは、案外早いかもしれない。いずれにせよ、今後もモバイルARの重要なプレーヤーとして話題を提供してくれるのは間違いない。

日本のケータイでもARは楽しめる!

photo 実空間透視ケータイ

 セカイカメラは近々APIを公開し、サードパーティがエアタグを使ったサービスを展開できるようになるが、こうしたオープンなアプローチを通信キャリアの提供するサービスでありながら実現しようとしているのがKDDIの「実空間透視ケータイ」だ。同サービスは2009年6月25日、β版サービスを公開する「au one ラボ」で提供が開始され、現在もβ版として提供されている。プラットフォームとしての普及を目指すべくAPIの公開を予定しており、セカイカメラをはじめとする他社コンテンツとの連携にも前向きな姿勢を見せる。

 多くのARアプリがスマートフォン専用となっている中、実空間透視ケータイは純国産のケータイで楽しめる貴重なARアプリといえる。カメラ映像ではなくCGマップを使っているので(CEATEC JAPAN 2009ではカメラ映像を使ったデモ版も披露された)、きびきびと動作するのも大きな特徴だ。

 ただ、スマートフォン以外の端末でARを実現しようとしたときネックになるのが、ほとんどの機種が電子コンパスを搭載していないという点。電子コンパスがないと画面と実空間の方位を手動で合わせなければならず、ちょっと面倒なのだ。

 こうした問題を解決すべく、同社は現在、端末のカメラで太陽の向きを検知して方位を検出する仕組みを開発中で、実現すれは圧倒的多数の端末で“かざすだけ”のARが楽しめるようになる。ユーザーの現在地や端末をかざした方角に合わせて広告を表示する仕組みも開発されており、2010年は“β”の外れた正式サービスを見ることができるのではないだろうか。


 そのほかにも、Android向けアプリとしてセカイカメラの配信に先駆けて登場した「Layar」や、渋谷の街情報をユーザーが投稿でき、“メタバグ集め”など面白いプロモーション実験を行っているiPhoneアプリ「pin@clipピナクリ」、地図とAR画面が同時に表示できるiPhoneアプリ「ご近所ナビ」など、位置情報と連動したARアプリが続々と登場した。世間一般からしてみればモバイルARの世界はニッチであり、“端末をかざす”というリテラシーもほとんど広まっていないが、現実空間にインターネットの情報がマッピングされることで生まれるさまざまな楽しさや利便性は、新しいライフスタイルを生みだす力を持っているように思う。

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