マイクロソフトが4月12日(現地時間)、Windows Phone 7をベースに、SNSやTwitterなどのソーシャルサービスとの連携機能に特化した新しいデバイス「KIN」を発表した。米国では5月にVerizon Wirelessから販売される予定だ。またドイツ、イタリア、スペイン、英国でも、秋にVodafoneからリリースされる。
KINは、これまで“Project Pink”という開発コード名で呼ばれていたMicrosoftが企画した端末で、コンパクトな手のひらサイズのスライド型端末「KIN ONE」と、大きなQWERTYキーを搭載した横スライド型の「KIN TWO」をラインアップする。端末はシャープが製造している。
KINの公式サイトやMicrosoftのプレスリリースでは、KIN ONE、KIN TWOともに静電式のタッチパネルとQWERTYキーボードを備えることや、Zuneと同等の音楽機能を備えることが分かる。またKIN ONEはフォトライト付き5Mピクセルカメラ、モノラルスピーカー、4Gバイトの内蔵メモリを搭載すること、KIN TWOはフォトライト付き8Mピクセルカメラ、HD動画撮影機能、ステレオスピーカー、8Gバイトの内蔵メモリを搭載することなどが明らかにされているが、詳細なスペック情報はあまりない。
米国のメディアは、KIN ONEおよびKIN TWOのスペックを以下のように報じている。
製品名 | KIN ONE |
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外形寸法(幅×高さ×厚さ) | 67.7×84.15×18.75ミリ |
ディスプレイ | 2.6インチQVGA(320×240ピクセル)TFT 静電式タッチパネル |
カメラ | 5MピクセルCMOS(AF、手ブレ補正付き) フォトライト付き |
スピーカー | モノラル |
メインメモリ | 256Mバイト |
ユーザーメモリ | 4Gバイト |
無線機能 | CDMA2000 1X EV-DO Rev A(米国)/W-CDMA(欧州)、IEEE802.11b/g、Bluetooth 2.1、USB 2.0 |
そのほか | A-GPS、FMラジオ、加速度センサー |
製品名 | KIN TWO |
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外形寸法(幅×高さ×厚さ) | 60.05×111.06×15.6ミリ |
ディスプレイ | 3.4インチハーフVGA(480×320ピクセル)TFT 静電式タッチパネル |
カメラ | 8MピクセルHDR CMOS(AF、手ブレ補正付き) フォトライト付き |
スピーカー | ステレオ |
メインメモリ | 256Mバイト |
ユーザーメモリ | 8Gバイト |
無線機能 | CDMA2000 1X EV-DO Rev A(米国)/W-CDMA(欧州)、IEEE802.11b/g、Bluetooth 2.1、USB 2.0 |
そのほか | A-GPS、FMラジオ、加速度センサー |
KINの最大の特徴は、デバイスとソフトウェアをすべてMicrosoftが企画したこと。FacebookやMySpace、Twitterなどのソーシャルサービスを使いこなすユーザーが使いやすく、快適に楽しめることを最優先に開発された端末となっている。
待受画面に相当するホーム画面はKIN Loopと呼ばれ、この画面から友人の近況などがすぐ確認できる。友人は“お気に入り”を設定することもでき、お気に入りに登録された人の情報を優先的に表示する。また画面上にはKIN Spotと呼ばれる特別な場所が用意されていて、ここに写真や映像、メッセージ、WebサイトのURL、自分の位置情報やステータスなどをドラッグ&ドロップすると友人と共有できる仕組みになっている。
KIN上で作成されたデータはすべてクラウドに保存されるのも特長だ。写真や動画はもちろん、テキストメッセージや発着信履歴、アドレス帳なども自動的にバックアップされる。データはWebブラウザでアクセスできるKIN Studioから参照でき、特に意識することなくPCなどとデータを共用できる。
音楽機能は米国で展開しているオーディオプレーヤー「Zune」の音楽機能と動画機能を備え、Zune Passに契約すればオンラインストアZune Marketplaceなども利用可能。Internet Explorer MobileベースのWebブラウザ、Bingによる端末内およびWebの検索機能、RSSリーダーなども備え、スマートフォンとしての基本的な機能も備える。
「ソーシャル世代向け」とうたうKINは、現在開発中の次世代Windows Mobile OS、Windows Phone 7をベースに、SNSやTwitterとの連携を強化し、Zuneの機能を取り込むなど、Microsoftならではの広がりが見られる端末だ。自社で手がけたモデルだけに、細部にまでMicrosoftの思いが反映されているようで、使い勝手や操作性はこれまでのWindows phoneとは大きく異なる。
“何でもできる”のではなく、あえてSNSという、エンドユーザーがインターネットでよく使う機能に特化することで、これまでとは異なる側面を打ち出したKINは、これまでの先進ユーザーとは異なる、SNSが快適に使いこなせる“小さなPC”が欲しいユーザーにも受け入れられる可能性がありそうだ。
一方で、KINにはサードパーティ製のアプリケーションをインストールする機能が用意されていないという報道もある。細かなスペック情報も公開されておらず、スマートフォンのライトユーザーをターゲットにした端末らしいといえばらしいが、既存のWindows phoneユーザーにとっては、今後のWindows Phoneの展開も含め、改めて気になる端末と言える。
AppleのiPhoneやOHAのAndroidなど、スマートフォンのプラットフォームはライバル陣営が急速に成長し、シェアを拡大している。PDAの時代から先行するWindows phoneは、これまでの「使いにくい」「分かりにくい」「ビジネス向け」といったイメージを払拭し、コンシューマー市場でブレイクするのか。KINがどのように受け入れられるのかは非常に興味深い。
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