NTTドコモのスマートフォン「Xperia」は、ハードウェアとソフトウェアのほか、デザインもソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズの日本のスタッフが開発に携わっている。日本向けモデルとは違うグローバル端末ならではのこだわりとは。後編ではデザインとグラフィックユーザーインタフェース、そしてソニー・エリクソンの日本向け端末とXperiaの今後を聞いた。
ITmedia 海外でも同時に発売するグローバル端末として、Xperiaのデザインでこだわった点を教えてください。
鈴木氏 2010年に発売するソニー・エリクソン端末は、デザインコンセプトを世界全体で統一してきました。我々が考えるデザインの基本は「Human Centric(ヒューマンセントリック:人間中心)」ですが、これにエモーショナルな部分を加えたいと考えていました。
そこで考えたのが、「Human Curvature(ヒューマンカーバチャー:人間的な曲線)」と、「Precision by Tension(プレシジョンバイテンション:緊張感による精密さ)」という2つの要素です。前者は裏面のなだらかな曲線や、側面のS字ライン、後者はフラットなディスプレイ面などで表現しています。これら2つを合わせて感情に訴えるとともに、使いやすさにつながる造形を目指しました。
ITmedia 日本のケータイとはデザインの考え方が違うのでしょうか。
鈴木氏 グローバル端末だからといって、特別に意識したわけではありません。ただ、Xperiaは“ソニー・エリクソンの商品”として提供できたので、ソニエリらしい、ストレートなメッセージを表現できました。海外向けモデルとの違いは、裏面にあるドコモのロゴだけです。海外版にはここにXperiaのロゴが入っています。また、正面にはソニー・エリクソンとXperiaのロゴがありますが、ここにキャリアのロゴがないのは、実は非常に珍しいんです。
ITmedia 本体のカラーはブラック(Sensuous Black)とホワイト(Luster White)という、オーソドックスな色を採用していますね。
鈴木氏 Xperiaはさまざまなユーザーエクスペリエンスを提供できる端末なので、本体色はいろいろな経験が重なっていく様子をイメージしました。ブラックはすべての色が重なり合うものを表し、ディスプレイとの一体感を重視しています。ホワイトは「純白」ともいえる色で、何もない真っさらな状態を表現しました。この白に行き着くまでに、いろいろな白を作りました。候補に挙がった段階でようやく10種類に絞れたほどです。
ITmedia ブラックは表と裏で質感が違いますね。裏面はマットな手触りです。
鈴木氏 ブラックは裏面にこだわり、シルバーの粒子を散りばめています。黒の中に表情が出るようにしました。
ITmedia ほかの色は考えていなかったのでしょうか。
鈴木氏 候補にはありましたが、経験を重ねるというコンセプトを表せるのは、ブラックとホワイトだけだと考えました。
ITmedia 兄弟モデルの「Xperia X10 mini」と「Xperia X10 mini pro」も同様ですが、裏面はバッテリーカバーの切れ目が入っていない、フラットなデザインになっています。
鈴木氏 Xperiaのデザインコンセプトを示す場所は裏面です。パーティングライン(分割線)は入れたくなかったので、設計者に協力してもらって外しました。海外向けモデルではいくつか見られる手法ですが、日本向けモデルでもauの「S002」で採用しています。
ITmedia 裏面のソニー・エリクソンのロゴやカメラなど、パーツの配置場所にも意味があるのでしょうか。
鈴木氏 (パーツは)なるべくセンターに集めました。カメラの部品は厚いので、なるべく中央に配置して、できるだけラウンドを取るようにしました。また、中央にレンズがある方が(指かぶりがなく)、縦と横向き、どちらでも撮影しやすいメリットもあります。
ITmedia Xperiaのカメラは810万画素ですが、カメラレンズは目立っていませんね。
鈴木氏 Xperiaはカメラだけを訴求するのでなく、カメラを使ってできるコミュニケーションを訴求するモデルなので、カメラのデザインは強調しませんでした。
ITmedia デザインで最も苦労したところを教えてください。
鈴木氏 カーブを取ってラウンドさせることを狙いましたが、部品は垂直水平で基板に乗るので、曲面と相反します。削る要素が多い中で部品を配置していくのが大変でした。
ITmedia 使い勝手の面で気になったのが、Micro USB端子が本体上部にあり、なおかつカバー付きであることです。本体下部にカバーなしの端子があれば、iPhoneのように卓上ホルダに挿して手軽に充電できると思います。
鈴木氏 端子の位置については、いくつか議論がありました。スタイルとしてはケーブルを直接挿すパターンも一般的だとは思うのですが、卓上ホルダを使いたいという要望はあるので、今後の検討課題です。また、本体の下部にはストラップホールを付けているので、バランスを考えてMicro USB端子は上に備えました。
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