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» 2010年06月04日 02時59分 UPDATE

iPadでも視聴できる:不幸なガラパゴス化はしない――MediaFLO陣営が目指す“日本版マルチメディア放送” (1/2)

「受信端末の普及が重要」――KDDIとメディアフロージャパン企画が開催した記者会見で、登壇者3人が口をそろえて述べた言葉だ。6月7日に迫ったマルチメディア放送事業者の認定申請の締め切りに向け、MediaFLO陣営はどのようなサービス像を思い描いているのだろうか。

[田中聡,ITmedia]

 2011年度のサービス開始が予定されている、携帯端末向けのマルチメディア放送。6月7日に迫った総務省の認定申請受け付けの締め切りに向け、MediaFLOを推進するメディアフロージャパン企画と、ISDB-Tmmを推進するマルチメディア放送が準備を進めている。日本での商用化に向けて、MediaFLO陣営はどのようなビジネスモデルを想定しているのか。インフラ、端末、コンテンツの面から、6月3日の記者説明会であらためて詳細を説明した。

 MediaFLOは、米Qualcommが開発した携帯端末向けのマルチメディア放送の規格。すでに米国では商用サービスが開始されており、日本ではKDDIとクアルコムジャパンが共同設立したメディアフロージャパン企画が実証実験を行うなど、2011年度の商用化に向けて準備を進めてきた。日本の携帯端末向けマルチメディア放送では、2011年に停波するアナログテレビのVHF帯(207.5MHz〜222MHzの14.5MHz)が1事業者に割り当てられる。この周波数帯の獲得をめぐり、メディアフロージャパン企画とマルチメディア放送が名乗りを上げており、MediaFLOかISDB-Tmm、どちらの規格が採用されるか注目を集めている。

photophotophoto MediaFLOやISDB-Tmmなどのマルチメディア放送の提供にはVHF帯を利用する(写真=左)。日本のマルチメディア放送ではハード(インフラ)とソフト(コンテンツ)を分離し、インフラを手がける受託放送事業者1社のもと、複数の委託事業者がコンテンツを制作する(写真=中)。受託放送事業者は、MediaFLO陣営とISDB-Tmm陣営の中から選ばれる(写真=右)

通信にはない放送のメリット

 メディアフロージャパン企画 代表取締役社長の増田和彦氏によると、現在は総務省へ提出する受託放送開設計画認定申請の作成を進めており、6月7日の締め切りに向けて最後の追い込みをかけているという。「少なくともマルチメディア放送とメディアフロー企画の2社は申請をするだろう」と同氏は見ている。総務省の審査を経て、マルチメディア放送のインフラを提供する受託放送事業者が早ければ2010年7月ごろに確定する予定。その後、コンテンツを提供する委託放送事業者の選定が始まり、「早ければ2010年内、遅くとも2010年度内には決定する」見通しだ。

photophoto メディアフロージャパン企画 代表取締役社長 増田和彦氏(写真=左)。マルチメディア放送の事業化に向けた想定スケジュール(写真=右)

 なお、ソフトバンクモバイルの子会社で、ISDB-Tmm方式を推進していたモバイルメディア企画は、「受託放送事業者への認定申請は行わず、今後は委託放送事業者としてコンテンツを提供することを検討している」(ソフトバンクモバイル広報部)とのこと。今回の認定申請は、事実上、メディアフロージャパン企画とマルチメディア放送2社の一騎打ちとなりそうだ。

 マルチメディア放送は、リアルタイムに視聴できるストリーミング型と、端末にダウンロードする蓄積型、株価や天気予報などの情報をテキストで配信するIPデータキャストに分類される。増田氏は「マルチメディア放送というと、テレビ的なものが思い浮かぶが、あらゆるコンテンツを携帯端末にダウンロードするように取り込める。放送インフラで配信されるコンテンツはワンセグだけではない」と説明し、幅広いコンテンツを取得できることを強調した。

 マルチメディア放送は“通信と放送の融合”を実現するサービスでもあるが、両者の特徴は異なる。通信はネット上の膨大なコンテンツをユーザー自身が探すのに対し、放送はユーザーのニーズに合わせてコンテンツを送り届けるので、プッシュ配信のように新しい情報が端末に蓄積されていく。「通信の利用には一定のリテラシーが必要だが、マルチメディア放送は誰もが手軽に楽しめる」と増田氏は利便性を説明する。

photophotophoto 映像コンテンツは、ストリーミング型と蓄積型に大きく分けられる(写真=左)。能動的に情報を取得する通信サービスに対し、放送サービスは、待っていてもコンテンツが振ってくる(写真=中)。MediaFLOでは、ストリーミングとクリップキャスト(蓄積型コンテンツ)、IPデータキャストを提供する(写真=右)

 もう1つ、マルチメディア放送は通信網ではなく、複数ユーザーへの同報配信が可能な放送波を用いることから、アクセスするユーザー数にかかわらず、効率よくコンテンツを届けられるというメリットもある。さらに、通信サービスの利用にはパケット代を気にするユーザーが多いが、放送サービスなら、1度加入手続きをすれば通信料を気にせず利用できるので、増田氏も「デジタルコンテンツの消費層や市場拡大に寄与できる」と期待を寄せている。

photophoto ケータイの通信トラフィックは今後さらに伸びることが予想されるが、マルチメディア放送ならユーザー数にかかわらず効率よくコンテンツを配信できる(写真=左)。MediaFLOの開始により、デジタルコンテンツ消費者層の拡大が期待される(写真=右)

スマートフォンやiPadも――受信端末の普及が最重要

photo MediaFLOは今後、スマートフォンや電子書籍端末などにも搭載される見通しだ

 このように、マルチメディア放送はEZwebやiモードに並ぶ、大規模な市場に発展する可能性を秘めているが、そのためには受信端末の普及が必須となる。「端末の普及なしにビジネスは成功しない。従来の日本型ケータイからスマートフォンが拡大している中で、スマートフォン市場をどれだけ新しいサービスに取り込めるかも1つのポイント」と増田氏が話すように、日本型のフィーチャーフォンのみならず、スマートフォンやiPad、電子書籍端末といった幅広い端末への実装が想定される。

 メディアフロージャパン企画は実証実験用に、「W64SA」をベースにしたMediaFLOの受信端末を開発しており、MediaFLOとワンセグ両方に対応したチップを装備している。ワンセグ端末と同規模の実装面積を実現しているので端末のサイズが増すことはほぼない。また、MediaFLOは一定時間データを受信しない間欠受信により、消費電力を抑えられるメリットもある。

 端末はケータイのみならず、ポータブルテレビや車載型、Wi-Fi転送型なども米国では投入されている。増田氏も「日本でも(さまざまなMediaFLO対応機器が)採用されれば、新しいマーケットが続々と誕生する」と期待を寄せる。

photophotophoto 日本のMediaFLO端末は、W64SAをベースにした携帯電話型、USB接続型とWi-Fi転送型チューナーを開発している(写真=左)。サイズを増やすことなくMediaFLOとワンセグのチューナーを内蔵できる(写真=中)。間欠受信できないシステムに比べ、間欠受信が可能なMediaFLOは約3分の1の消費電力を抑えられる(写真=右)

 日本の放送サービスではワンセグが普及していることから、「ワンセグとMediaFLOの両立は必須」と増田氏は考えている。その一方で、「日本の技術にこだわるあまり、ガラパゴス化をして日本のユーザーを不幸にするつもりはない。ワンセグとMediaFLOの組み合わせでグローバルな普及を促進する」との考えも示した。「放送技術の比較審査はこれまでほとんど行われなかった。日本での実績を踏まえて審査されることを期待したい」(増田氏)

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