不幸なガラパゴス化はしない――MediaFLO陣営が目指す“日本版マルチメディア放送”iPadでも視聴できる(2/2 ページ)

» 2010年06月04日 02時59分 公開
[田中聡,ITmedia]
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「iPad」はMediaFLOに最適なデバイス

 先述のとおり、MediaFLOは米国で商用サービスが提供されているほか、英国、台湾、香港、マレーシアでもトライアルが実施されている。米国ではVerizon Wirelessが2007年に、AT&T社が2008年にサービスを開始し、各事業者が10機種以上の端末を投入している。サービスエリアは112都市、2億人以上をカバーしている。また、南米では日本と同様に、ワンセグとMediaFLOを同時に利用することを前提とした導入も検討している。

photophoto 米国では2007年にMediaFLOを開始し、ほか17カ国での導入も検討されている(写真=左)。米国でも多彩なMediaFLO端末が投入されている(写真=右)

 また、Qualcommは2010 FIFA ワールドカップの全試合をMediaFLOで放送する権利を獲得した。メディアフロージャパン企画 取締役 クアルコムジャパン代表取締役兼社長の山田純氏は、「メジャーなスポーツイベントは多くの関心を持ってもらえるコンテンツ。Qualcommがサービスの普及に向けていかに本気で取り組んでいるかが分かる」と胸を張った。

photophotophoto メディアフロージャパン企画 取締役 クアルコムジャパン代表取締役兼社長 山田純氏(写真=左)。米国ではMediaFLOでワールドカップの全試合を放送する予定(写真=中)。QualcommはMediaFLO技術のグローバルな標準化と普及活動を行う「FLO Forum」を設立した(写真=右)
photo 蓄積したMediaFLOコンテンツをWi-Fi経由で視聴するスタイルも普及しそうだ

 山田氏は、MediaFLOに最も適したデバイスにiPadを挙げ、「iPadのような大画面のタブレット型デバイスを活用するための技術開発を進めている」という。会見では「PocketFLO」と呼ばれる試作機を使い、無線LAN経由でMediaFLOコンテンツを視聴するデモを披露した。

 MediaFLO用のチューナーを内蔵しているPocketFLOは、端末に保存した蓄積型のコンテンツを無線LAN経由で送信し、iPadなどのWi-Fi機器で番組を視聴できるのが特長だ。このほか、タブレット端末やiPhone用ジャケット、USB型のデバイスにMediaFLOチューナーを内蔵することも可能。山田氏が「(チューナーを搭載する)技術の成熟には十分な自信を持っている」と力説したことから、日本でもさまざまな形でMediaFLOを楽しめることが期待される。

 端末メーカーにとっても、世界規模で展開しているMediaFLOに参入するメリットは大きい。山田氏は「米国の市場は魅力的。日本のメーカーも海外にMediaFLO端末を投入するのではないか」と見ている。

photophoto 米国で発売中のMediaFLO端末。米国のMediaFLOは動画の解像度はQVGAで、フレームレートはワンセグの2倍となる30fps
photophotophoto 蓄積したMediaFLOコンテンツをWi-Fi経由で送信できる端末の試作機(写真=左、中)。山田氏がデモで使用したiPad(写真=右)
photophotophoto MediaFLOチューナーを内蔵したMini USB型端末(写真=左)。こちらはUSB型端末(写真=中、右)
photophoto USB型端末をPCに接続して視聴する(写真=左)。PCに内蔵したタイプもある(写真=右)

より嗜好性の高い蓄積型のコンテンツも配信する

photo メディアフロー放送サービス企画代表取締役社長 神山隆氏

 携帯端末向けのマルチメディア放送の実現を目指し、KDDIは「メディアフロー放送サービス企画株式会社」を5月26日に設立。テレビ朝日、スペースシャワーネットワーク、アサツー ディ・ケイ、電通、博報堂の5社が資本参加する。この新会社は、ケータイや電子書籍端末、タブレット型PC、カーナビなどを対象としたMediaFLO向けのコンテンツや事業モデルを開発する。

 メディアフロージャパン企画とKDDIが沖縄ユビキタス特区で実施したMediaFLOの実証実験では、70%のユーザーがストリーミング放送、75%のユーザーがファイル蓄積配信のさらなる利用意向を示した。この調査結果を受け、メディアフロー放送サービス企画代表取締役社長に就任した神山隆氏は、「マルチメディア放送の興味と期待をひしひしと感じている」と手応えを話した。

 マルチメディア放送は有料サービスが中心となるので、ストリーミングではスポーツや音楽、アニメ、海外ドラマ、ファイル蓄積配信では映画や雑誌、ゲームなど、より嗜好性の強いコンテンツ配信を目指す。「電子書籍や映画1本のダウンロードなども取り入れていきたい」(神山氏)

 また、神山氏は「ケータイと組み合わせることで、ターゲティング型の広告ビジネスも期待できる」と話し、同社はB to Bモデルの可能性も追求する。KDDIはEZチャンネルやEZチャンネルプラスなどでコンテンツ制作のノウハウもあることから、「MediaFLO向けに自社コンテンツの制作も考えていく」構えだ。もちろん、ファイル配信や課金システムなど、これまでKDDIがEZwebでも実施してきた、コンテンツプロバイダーが参入しやすい環境作りにも注力する。

 Qualcommが米国で証明したMediaFLOサービスの実績と、KDDIが日本で培ったコンテンツプラットフォーム。この2つが融合し、日本でどんなマルチメディア放送が誕生するのか。まずは総務省が下す、受託放送事業者選定の動向を見守りたい。

photophotophoto EZチャンネル、FMラジオ、EZチャンネルプラス、デジタルラジオ、EZニュースEXなど、KDDIはこれまでも通信と放送を組み合わせたサービスを提供してきた(写真=左)。KDDIがコンテンツ制作で得たノウハウも生かす(写真=中)。沖縄ユビキタス特区で実施したMediaFLOの実証実験では、70%以上のユーザーがマルチメディア放送の利用意向を示した(写真=右)
photophotophoto EZチャンネルやEZチャンネルプラスで、ユーザーから比較的高い評価を得ていることから、蓄積型コンテンツも積極的に提供する(写真=左)。より嗜好性の高いコンテンツを提供し、ワンセグとの差別化を図る(写真=中)。コンテンツプロバイダーが参入しやすい環境の整備にも努める(写真=右)
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