インタビュー
» 2010年07月05日 15時45分 UPDATE

開発陣に聞く「BRAVIA Phone S004」:“60コマワンセグ”はKCP3.0だから実現できた――「BRAVIA Phone S004」の進化点 (1/2)

ソニー・エリクソン製の「BRAVIA Phone S004」は、「BRAVIA Phone U1」に続く、映像機能に注力したモデルだ。一般のケータイでは珍しく、チップセットに「Snapdragon」を採用した理由とは。そして“防水デュアルオープン”のこだわりとは。同社の開発陣に聞いた。

[田中聡,ITmedia]
photo 「BRAVIA Phone S004」

 auの2010年夏モデルとして発売されたソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ製の「BRAVIA Phone S004」は、新しいプラットフォーム「KCP3.0」を採用した意欲的なモデルだ。1GHzのCPUを搭載したチップセット「Snapdragon」を備えており、快適な動作速度を実現。ワンセグ映像のコマ数を4倍の60フレーム/秒にする「モーションフローLite」や高速お出かけ転送に対応するなど、“BRAVIA Phone”として映像機能にも力を入れた。また「BRAVIA Phone U1」(以下、U1)に引き続き、IPX5/IPX7の防水性能もサポートしている。

 S004は、ディスプレイが縦と横に開閉するデュアルオープンスタイルを採用しているのも特徴の1つ。同スタイルは、2009年春モデルの「Walkman Phone, Premier3」でも採用していたが、今回はどんな工夫を施したのだろうか。そしてKCP3.0を搭載した狙いとは――。ソニー・エリクソンの企画担当の土屋氏、機構設計担当の桜井氏と電気設計担当の牧野氏、ソフト担当の西本氏、UI担当の立川氏、デザイン担当の杉山氏と守屋氏に話を聞いた。

photo 上段左から、S004の機構設計担当の桜井氏、ソフト担当の西本氏、UI担当の立川氏、デザイン担当の杉山氏、電気設計担当の牧野氏、企画担当の土屋氏、デザイン担当の守屋氏

KCP3.0だから実現できた60フレーム/秒のワンセグ

photo 企画担当の土屋氏

―― S004は、U1から続くBRAVIAブランドを冠するモデルですが、どんなところに違いがあるのでしょうか。

土屋氏 U1は30代の男性を主なターゲットにしていましたが、S004では美しい映像を手軽に見てもらうことを考え、20〜30代の女性をメインターゲットにしています。お風呂で半身浴をしながらワンセグを見るといったシーンを想定し、端末を横向きに固定できるデュアルオープンスタイルを採用しました。

―― ちなみに、型番が「U2」ではなく通常の「S004」となっていますね。

土屋氏 U1は映像機能に注力した1機種目であることと、新たに「おでかけ転送」に対応したことから、映像系の戦略モデルとして「U1」としました。KDDIさんの考えにもよりますが、機能的に大きな進化があれば、今後も商品名に「U」を付けるかもしれません。

―― すでに発売から数日が経ちましたが、反響はいかがでしょうか。

土屋氏 実際に触ってもらって、速さに驚いて買っていただくケースが多いようです。やはり紙のカタログやWebの情報だけでは足りないので、店頭にはなるべく多くの実機を置いてもらっています。

―― KCP3.0を採用したことで、具体的にどのあたりが速くなったのでしょうか。

土屋氏 主なところは画面の遷移が挙げられます。ほかにデータフォルダの表示やEZwebの表示速度も向上しています。メールではデコレーションメールも、よりスムーズに作成できるようになっています。U1ではデコレーションメールの操作法を改善しましたが、デコレーション絵文字の表示速度が遅かったので、S004ではこの表示速度を向上させました。

photophoto UI担当の立川氏(写真=左)とソフト担当の西本氏(写真=右)

立川氏 これまでの機種ではパラパラ……と表示されていたデコレーション絵文字のサムネイルが、S004ではパッと表示されます。

―― 通常のケータイに、1GHzのSnapdragonを採用したことも話題を呼んでいます。

西本氏 KCP3.0は、KCP+から機能として進化した部分はありませんが、Snapdragonの快適な操作感を発揮することに努めました。CPUの世代が変わったので、我々もびっくりするほど速くなりました。特に高負荷の処理を必要とするシーンで、従来機種との差を体感できます。

土屋氏 1GHzのCPUのパワーを最大限生かす機能として、1秒間に60フレームの表示ができる「モーションフローLite」をワンセグに搭載しました。KCP+端末でも30フレームの倍速表示はできましたが、60フレームはできません。60フレームの再生は、KCP3.0だからこそ可能になった機能です。

―― 60フレームの表示となると、かなりのパワーを使いそうです。バッテリーへの影響はどの程度あるのでしょうか。

photo 電気設計担当の牧野氏

牧野氏 モーションフローLiteをオフにした状態と比べて、20%ほど消費電力は上がるので、初期状態では(モーションフローLiteは)オフにしています。ただ、待受時間は従来の機種と遜色ないレベルを実現できたので、普段使いをする上では問題はありません。

―― 今回、「Cyber-shotケータイ S003」がKCP+、S004が新しいKCP3.0を採用しています。そもそもKCP3.0の採用は、どんな経緯で決まったのでしょうか。

土屋氏 KDDIさんから募集があり、名乗りを上げました。なぜCyber-shotケータイではなくBRAVIA Phoneで……というのは難しい質問ですが、映像系の処理で差をつけたいと考えたのが大きいですね。CPUの負荷が一番かかるのが、映像のレンダリングです。Cyber-shotケータイでも恩恵を受ける部分が多いと思いますが、まずは映像機能の特徴を生かすことを優先しました。

―― BRAVIA Phoneならではの、映像や音質へのこだわりも教えてください。今回も「モバイルブラビアエンジン」を搭載しているのでしょうか。

土屋氏 実は、S004にはモバイルブラビアエンジンは搭載していませんが、実行している処理が違うだけで、画質はU1と同等です。これもKCP3.0のお陰で、Snapdragonの処理能力で十分な画質を実現できたからです。

Premier3、U1から進化した“防水デュアルオープン”

photo 機構設計担当の桜井氏

―― U1から続いて防水性能に対応しています。U1との違いも含め、苦労したところを教えてください。

桜井氏 今回は防水モデルっぽく見せたくないというデザイナーの意向もあり、本体内側で防水機構を完結させています。具体的には、バッテリーカバーにロックのスイッチを設けず、通常モデルと同じくスライドしてカバーを開けられるようにしています。これはバッテリーカバーの裏側ではなく、筐体側にパッキンを入れることで実現できました。

―― なるほど。S004はパッキンが本体の内側にあり、バッテリーカバーが通常のケータイと同じタイプなので、ロックする必要がなくなったわけですね。

photo 左がBRAVIA Phone U1、右がBRAVIA Phone S004のバッテリーカバー内部の防水構造。U1はバッテリーカバーの裏側にパッキンがあるが、S004は筐体にパッキンがある

土屋氏 U1は裏面にロックスイッチが付いていますが、爪の長い女性など、使いにくいと感じた方もいました。もう1つ、ユーザビリティを向上させるために、U1ではバッテリーカバーの内側にあったmicroSDスロットを、S004では外側に設けています。

―― 防水ケータイでは珍しいですね。やはり外側にスロットを入れるのは難しかったのでしょうか。

土屋氏 スロットが増えると(カバーの)パッキンが増えるので、外側にはコネクタを置かないようにと設計には言われていますが、そこは折れずにお願いしました。あとはサイドキーも極力減らしました。

photo 左がPremier3、右がS004。どちらもデュアルオープンスタイルを採用しているが、S004の方がディスプレイが後ろに倒れる

―― S004はPremier3と同じくデュアルオープンスタイルを採用していますが、工夫したところを教えてください。

桜井氏 ヒンジ部分の割れ線(部品と部品の組み線)をなくし、カプセルのように美しく見せるよう工夫しました。横に開いて置いたときの角度にもこだわり、Premier3よりもディスプレイが後ろへ倒れるようにしています。Premier3は卓上ホルダに載せるともっと後ろの角度に固定できますが、S004では卓上ホルダなしでも、同じ角度で固定できます。これはS004のボディが厚くなったことと、ヒンジの軸位置を変えたことで実現できました。

 また、Premier3は左手で縦に開けようと親指を中に入れると、ディスプレイが横に開いてしまうことがありました。そこでS004ではヒンジのトルク(バネの反発)を調整し、軽さと重さのバランスを取りました。

photophoto Premier3(写真=左)では本体を縦向きに開けようとすると、ディスプレイが横に開くことがあったが、S004(写真=右)では勝手に横に開かないよう改善した
photophotophoto Premier3(写真=左)とS004(写真=中)の横オープン用のヒンジ。S004は丸みを帯びたカプセル状になっている。ヒンジ部の突起をなくすことは技術的には可能だが、「軸位置をずらすことで高さが伸びてしまう」(桜井氏)ことから見送った。Premier3(右)は裏から見るとヒンジが目立っているが、S004では筐体で隠し、裏面からは目立たなくしている(写真=右)
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