ドコモ山田氏「月額315円程度の価格にする」、KDDI小野寺氏「高品質なエリアが重要」携帯端末向けマルチメディア放送の公開説明会(第2回)(2/2 ページ)

» 2010年07月28日 09時08分 公開
[田中聡,ITmedia]
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リアルタイム放送のみで10〜15ドルは高い――MJP

 続いて論点となったのが「料金」。「ドコモのBeeTVはリーズナブルな料金だが、米国のMediaFLOは月額10〜15ドルで、ビジネスモデルとしては成立していない」とmmbi取締役経営企画部長の石川氏が話すと、増田氏は「米国の10〜15ドルはリアルタイム放送の料金で、蓄積型コンテンツやIPデータキャスティングは含まない。我々もリアルタイム放送のみで10〜15ドルは高いと考えている。沖縄の実証実験の被験者へのヒアリングを通して適切な価格を考えたい」と述べ、米国ほど高額な料金は想定していないことを示した。

 実際にどのようなビジネスモデルが成り立つかという点については「料金は最終的には委託事業者の判断になるが、月額300円程度の固定型や、リアルタイム放送は300〜600円のパッケージ料金、1番組で1000円くらいのタイプや、月額900円くらいの電子新聞もあるかもしれない。月額、コンテンツ、チャンネルあたりなど、マルチメディア放送ならではの料金体系になるだろう」と説明した。

 小野寺氏は「我々は新しいビジネスモデルを作ることが重要だと考えているし、我々が委託事業者として参入することもあり得る」と補足した。

東京スカイツリーでビル陰もカバーできる――mmbi

 MJPからmmbiの第2回の質疑応答では、mmbiが東京スカイツリーを利用して東京地区をカバーする計画について、増田氏が「ビル陰をはじめ、スカイツリー1局でどのようにエリア構築をするのか」と質問した。

 これには近藤氏が地図を提示しながら「品川や新宿などの都心部は、電界強度90dBμV/m以上を確保できている」と説明。その上でビル陰の影響も調査し、東京タワーの実験とデジタルラジオの電波を用いて、ビル陰で実際にどの程度電波が減衰するかを調べたという。その結果、条件が厳しいと思われる六本木ヒルズの真裏で10dBμV/mほどの減衰があったが、「70dBμV/m以上は確保できたので、屋内の受信は問題ない」と同氏はみている。

 さらに、新宿の高層ビル街では、反射波を用いたビル陰のシミュレーションを実施。「反射波の効果で、ビル陰でも強いレベルのエリア化ができている。都庁の裏側は1回の反射波では60dBμV/m程度だったが、3回反射をすると10dBμV/m以上レベルが上がっている」(近藤氏)

photophoto スカイツリーの電界強度図。千葉の房総半島の先はエリアに含まれていないが、都心部に近づくほど電界レベルが上がっている(写真=左)。赤とオレンジ色が90dBμV/m以上、緑色が約60dBμV/mを示している(写真=右)

 なお、125局の基地局にギャップフィラーは「入っていない」(石川氏)とのことだが、「大きなコストではないので、(電界強度を)実測して速やかに対応したい」とした。「ギャップフィラーを使うのは、実際に電波を吹いてここがダメだというところをやる」(山田氏)

料金か、エリアか――山田氏と小野寺氏の主張

 MJPの設備投資(865局の建設)は2015年度に終了する予定。「865局でニーズを満たせるかは、実際に電波を発射しないと分からない。事業計画上は、10年で投資を回収できる見通し」(増田氏)。この点について辻村氏が「これだけで技術革新が激しい中で、10年で回収というのは長すぎでは?」と疑問を投げかけると、小野寺氏は「5年間は割引料金を設定しているので、10年かかるのはやむを得ない」と述べた。

 辻村氏がさらに「3年単黒、5年累損一掃じゃないと回収は難しいのでは。10年での回収は事業として疑問だ」と迫ると、小野寺氏は「一般論としては正しいが、きっちりしたインフラを作ってサービスを提供するのなら、5年単黒10年累損一掃でも十分だと思っている」と返した。辻村氏が「(MediaFLOに決まった場合に)ドコモとソフトバンク端末を採用しても、(投資の回収には)10年がかかるのか」と問いかけると、「どちらの方式になるにせよ、携帯端末の普及は重要だと考えている。MediaFLOが認定を受けたら、広く事業者の方々に参入を呼びかけていきたい」と増田氏は話した。

 小野寺氏は「(MediaFLOに決まった際に)ドコモがどういう行動を取るかは読めないが、我々もISDB-Tmmの詳細な説明は受けていない」と話しながら、「サービスが魅力的ならメーカーは端末を開発するだろう。米国では実際にMediaFLO端末が出ている。本当に魅力的なコンテンツがそろえば、事業者がお互いに導入しないと満足されない。すべてはそこにかかっている。これは方式とは全く関係ない」と補足した。

 この意見には(ドコモの)山田氏も「一理ある」と同意しつつ、「たくさんのお客さんを集めるためにはリーズナブルな料金が大原則。MediaFLOが採用された場合、実績が証明されないと対応端末を出そうとは思わない。MediaFLOは委託料も高いのではないか」と指摘した。これを受けて小野寺氏は「リアルタイムの映像サービスだけで月額300円……これは周波数の無駄遣い。日本ではリアルタイム放送も1つのサービスだが、有料ではうまくいかないだろう。であれば、電子新聞やニュース、これを映像サービスにして数秒から1分で定時配信する。300円や500円などいろいろな料金があると思うが、やりようによってはもっと周波数を有効利用して、いろいろなサービスを提供できる」と主張し、新たなビジネスモデルを創出する姿勢を強調した。

 山田氏が「受託事業者として、一定の品質でいかに効率よくインフラを構築するかが重要だ」と述べると、小野寺氏は「それはやってみないと分からない。我々は顧客単位でエリア調査をやっている。それだけケータイのお客さんはエリアの要望が高い」と説明。山田氏が「料金」、小野寺氏が「エリア」を最重視している印象を受けたが、小野寺氏が「コストを下げる必要があるのは全く一緒。(エリアの品質は)最終的にはお客さんが判断する。ドコモはエリアをきっちり作っていて、お互いにエリアがサービスの競争要素になっている。マルチメディア放送をどう立ち上げるか、お互いに知恵を絞らないとできれない」とまとめ、目指すところは一緒であることを示した。


 今回の説明会では料金とエリアが大きな論点となった。mmbi陣営はBeeTVを例に「月額315円程度」の安価な料金を強調したが、具体的なコンテンツについては言及しなかった。東京スカイツリーの基地局でビル陰もカバーできるとのことだが、この“シミュレーション”の実現性も気になるところだ。MediaFLO陣営は、米国での商用サービスがまだ多くのユーザーに普及していないことを踏まえると、いかに日本独自のビジネスモデルを確立できるかがカギを握っているといえる。マルチメディア放送の舵を取るのはどちらの陣営になるのか――。総務省の決断が注目される。

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