インタビュー
» 2010年08月09日 10時17分 UPDATE

開発陣に聞く「Cyber-shotケータイ S003」:防水もカメラもひと味違う――“苦渋の決断”を経て完成した「Cyber-shotケータイ S003」 (1/2)

auでは3世代目のCyber-shotケータイ「S003では、カメラ機能や使い勝手を改善したのはもちろん、防水性能に対応したことが大きなトピックだ。一方で、ソニー・エリクソンの設計魂を覆すかどうか――という選択も迫られた。

[田中聡,ITmedia]

 au向けCyber-shotケータイとしては3世代目となる、ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズの「Cyber-shotケータイ S003」。1209万画素CMOSカメラやPLASMAフラッシュ、コンティニュアスAFを搭載するなどカメラ機能の強化を図ったのはもちろん、楽しく撮影できる「マジカルショット」や、より使いやすくなったフォトビュワーも採用した。また、京セラ製「SA002」とともに、スライド端末としては世界で初めて防水性能を備えたことも新しい。

 カメラ、デザイン、防水機構でこだわったポイントを中心に、ソニー・エリクソンの企画担当の柏原氏、電気設計担当の柏崎氏、機構設計担当の大内氏、ソフトウェア担当の田中氏、デザイン担当の兼田氏と青柳氏に話を聞いた。

photophoto ソニー・エリクソンの「Cyber-shotケータイ S003」。ボディカラーはメタリックチャコール、クリスタルホワイト、フラッシュピンク、レーザーブルーの4色
photo 左から田中氏、柏原氏、大内氏、柏崎氏、兼田氏、青柳氏

省スペース+省エネの「PLASMAフラッシュ」

photophoto 企画担当の柏原氏(写真=左)と電気設計担当の柏崎氏(写真=右)

 S003のカメラの画素数は1209万だが、他社の夏モデルも12Mピクセル相当のカメラを搭載した機種が多いことに加え、ユーザーによっては最大サイズで撮るメリットが乏しいことを考えると、画素数自体のインパクトはそれほど大きくはない。

 その中でソニー・エリクソンがこだわったのは「フラッシュ」だ。S003は世界初となる超高輝度フラッシュ「PLASMAフラッシュ」を搭載。このフラッシュは電流を“蓄電”できるのが特徴。新開発の「スーパーキャパシタ方式」の蓄電池にためた大容量の電流を放出することで、従来のフォトライト搭載機と比べて約48倍の明るさで撮影できる。柏崎氏によると、デジカメとの比較はしていないものの、本家Cyber-shotのフラッシュと比べても遜色のない明るさを実現できたという。

 高輝度フラッシュといえば、デジタルカメラに搭載されている「キセノンフラッシュ」が思い浮かぶ。キセノンフラッシュを載せる選択肢もあったが、「キセンノンよりも体積を小さく収められる」(柏崎氏)ことから、LEDフラッシュを採用した。また「LEDの方がバッテリー消費を押さえられる」メリットもある。

 今回のPLASMAフラッシュは、暗い場所はもちろん、逆光のシーンでも効果を発揮するという。「逆光のときに、フラッシュを使わないと暗く写りますが、(S003の)強制発光モードで撮ると、ある程度明るく写せます」と柏崎氏は説明する。なお、PLASMAフラッシュの光量は手動では変更できないが、ケータイと被写体の距離によって変わる。「光が届く範囲は9メートル。近くで撮影しても白飛びしないよう調整しています」(柏崎氏)

photophoto 左が初代Cyber-shotケータイの「W61S」のフラッシュで撮ったもの、右がS003のフラッシュで撮ったもの

 海外ではコンパクトなボディが求められるので、フラッシュを搭載するモデルは少ないが、海外のSony Ericsson製モデル「satio」はキセノンフラッシュを搭載している。S003のCMOSセンサー「Exmor(エクスモア)」は、satioと同等のものが使われているが、「カメラモジュールは専用のチューニングをして、小型化を図っている」(柏崎氏)。

コンティニュアスAF対応で撮影しやすく

photo ソフトウェア担当の田中氏

 撮影機能では、Cyber-shotケータイでは初となる「コンティニュアスAF」を搭載したことが大きな進化点。このコンティニュアスAFが生きるのが、「スマイルシャッター」と「おまかせオート」だ。「スマイルシャッターはS001から仕組みを変え、コンティニュアスAFで顔にピントを合わせています。また、S001のおまかせシーン認識をおまかえせオートに改善し、動いている被写体にピントを合わせ続けることが可能になりました」(田中氏)

 撮影時のユーザーインタフェース(UI)も改善し、「表示を大きくしたり、シーンセレクションに挿絵を付けたり、設定の構成を見直して並びを変えたりしました」(田中氏)。さらに、誤操作防止のロック中でも、レンズカバーを開けるとカメラが起動するようになった。これは「社内のユーザビリティ調査でも要望があった」(田中氏)という。ちなみに、S003ではレンズカバーを開くほか、フォトビューアー表示中はシャッターキーの長押しでもカメラの起動が可能となり、カメラとフォトビューアー切り替えが簡単になった。

※初出時に「サイドキーの長押しでもカメラの起動が可能になった」との記述がありましたが、サイドキーの長押しでカメラを起動できるのは、フォトビューアーの利用中のみです。お詫びして訂正いたします。(8/9 19:44)

 田中氏が「ぜひ使ってほしい」と勧めるおまかせオートは、簡単に設定できるよう、撮影画面でEZキーからオンにできる。さらに、1度おまかせオートに設定したら、次回起動時に通常モードに戻るのではなく、おまかせオートのまま起動する。また、フォーカス設定とフラッシュのショートカットアイコンは、これまでは「撮影」アイコンの周りに小さく表示されるだけだったが、S003では、フォーカス設定とフラッシュのショートカットキーを押すと、それぞれのアイコンが大きく表示される。

photophoto 「おまかせオート」はワンタッチで撮影できる(写真=左)。フラッシュやフォーカス設定を選ぶと、アイコンが大きく表示される(写真=右)
photo デコフォトで作成したイラスト

 トイカメラ風の写真や人物の目を大きくした写真などを撮れる「マジカルショット」も新たに搭載した。「ターゲットは10代から30代の女性」(柏原氏)で、楽しく撮影してもらうことを狙う。iPhoneやAndroid端末向けにも、こうしたエフェクトをかけられるカメラアプリが登場していることもあり、時流に乗った機能といえる。

 また、従来のCyber-shotケータイでもおなじみ、説明に従ってフレームやスタンプやエフェクト付きの写真を撮れる「デコフォト」では、マジカルショットの「キラキラ」と「ビューティーアップ」を組み合わせた「シンデレラマジック」を用意したほか、撮影した写真からイラストを作成する機能も楽しめる。イラストは「写真の目や鼻の位置を抽出して描画する」(柏原氏)。

フォトビューアーで「ミニフォト」を一発表示

 大量の写真をスムーズに閲覧できる「フォトビューアー」も、Cyber-shotケータイならではの機能。S003では新たに、日にちや月単位で写真を見られる「タイムライン表示」を用意し、目当ての写真をより簡単に探せるようにした。

 フォトビューアー起動直後に表示される写真一覧は、これまでは「最後に保存したフォルダ」(本体かmicroSD)だったが、S003ではミニフォトフォルダに保存した写真を直接表示する設定も用意した。ミニフォトは、デジカメモードで撮影した写真を、フルワイドVGAまたはVGAサイズに縮小して本体に保存する画像。「ミニフォトをフォトビューアーですぐに表示することで、microSDカードを抜いても、撮影した写真を見られます」と田中氏はメリットを話す。

photophotophoto フォトビューアーは日にちと月ごとの表示が可能になった(写真=左、中)。「Auto」を選ぶと最後に撮影した画像、「撮影保存先」を選ぶと最後に撮影した画像が保存されたフォルダ、「ミニフォト」を選ぶとミニフォトフォルダが表示される(写真=右)

タッチパネルは「今後の検討課題」

 カメラのUIは細かい部分で改良を重ねたが、タッチパネルに対応していれば、よりスムーズに撮影や画像の閲覧ができるだろう。「タッチパネルの要望は確実に挙がっていますので、今後の検討課題として(開発を)進めていきます」と柏原氏は話す。次期モデルでの搭載に期待したい。

 ディスプレイがS001の3.3インチ(フルワイドVGA)の有機ELから、S003では3.2インチ(フルワイドVGA)のTFT液晶に変更されたのも、少々気になる点だ。サイズが0.1インチ下がったのは、防水対応でパーツが増えてしまったことが関係している。「本体の外側にパッキンや接着シートなどを入れている分、ボディが大きくなり、ディスプレイを0.1インチ小さくしました」と大内氏は説明する。

 有機ELからTFT液晶に変更した理由は「いろいろなバランスがあり、難しい話」(大内氏)とのことで詳細は聞けなかったが、KDDIの意向が関係しているのかもしれない。「防水対応の夏モデルなので、屋外の視認性を重視したところもあります」(青柳氏)

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