S003のデザインはS001をベースにしているが、さらにブラッシュアップさせ、極力凹凸のない持ち心地のよいボディを目指した。また、カメラのレンズカバーはS001の右から左へ開くタイプから、上から下に開くタイプに変更した。これは「S001で本体をスライドさせると、レンズカバーも一緒に開いてしまうという意見があったことと、カバンの中などで勝手にレンズカバーが開くことを防ぐため」(大内氏)。
レンズカバーが閉じていても開いていてもフラットになるよう、工夫を施した点にも注目したい。詳細は以下の写真を見てほしいが、レンズカバーを開けると、カバーの下にある部品が凹むので、(上に重なった)カバーが出っ張らずに済む。この機構は「カバーを開けると下の部品のバネにロックをかけている」(大内氏)ことで実現している。また、カバーが出っ張らないことで、誤って開いてしまうことも防げる。
なお、本家Cyber-shotのレンズカバーは金属で作ることがほとんどだが、S003のカバーは樹脂で作っている。これは「金属だと重くなり、落としたときに変形してトラブルを起こしやすいため」(大内氏)。
カメラ周りのデザインも、高級感と金属感を出すことにこだわった。S001と同様にS003のレンズ周りにもスピン加工を施したが、S001で採用した金属ではなく、樹脂を素材に使っている。これは金属を使うとアンテナと干渉しやすくなるほか、レンズ周りに自分撮り用ミラーを埋め込んでいることも関係している。「樹脂の表面を加工してミラーを埋めているので、金属だと難しくなります」(大内氏)
本体色のこだわりはどうか。4色のカラーバリエーションのうち、クリスタルホワイト以外のフラッシュピンク、レーザーブルー、メタリックチャコールは「金属感が出るよう、3回コーティングをして陰影を付け、より立体的に見えるようにしました」と青柳氏は説明する。一方、クリスタルホワイトは「メタリックなカラーにすると暗くなる」(青柳氏)ため、角度によって微妙に青く見せることで陰影を出した。「白はいろいろな色がありますが、さりげなく目立たせることにこだわりました」(青柳氏)
防水ケータイらしさ表現するよう、側面には奥行き感と透明感のあるパーツを採用した。兼田氏によると、これは裏側に金属調の加工(蒸着処理)を施し、表側を着色することで実現したという。なお、Sony Ericssonの海外端末「Vivaz」の側面にも、透明感のあるパーツを用いている。
S003の防水構造は「BRAVIA Phone S004」と同じく、バッテリーカバーの裏側ではなく、本体の内側にパッキンを入れることで実現している。バッテリーカバー裏側にパッキンを入れると、本体のロックスイッチを入れる必要があり、出っ張りが生じてしまうので、構造を変えた。
スライド端末のS003を防水する際にネックとなったのが、ディスプレイ側とキー側をつなぐフレキシブルケーブルを防水する方法だ。大内氏は「ディスプレイ側とキー側のフレキシブルケーブル先端にあるコネクタに防水テープを貼ることで、防水しています」と説明する。なお、同じく“防水スライド”の「SA002」と「F-06B」も、フレキシブルケーブルに耐水性を持たせることで防水性能を実現している。
ソニー・エリクソン製のスライド端末といえば、ディスプレイの裏側にスライド用のレールがなく、フラットな面を形成しているのが大きな特徴。S003でもこの手法は踏襲されているのかと思いきや、今回はレールが敷かれている。これは「本当に苦渋の決断だった」と大内氏は話す。
「デザインの意匠とサイズ感を両立させて、何とかレールをなくせないか考えましたが……。防水性能を確保することで厚くなっている筐体にレールをなくすと、さらに厚さが増すので、断念しました。歴代の機種にはレールがなく、メーカーとしてこだわっていた部分なので、とても残念です。ただ、レールは見えていますが、ディスプレイの裏側はある程度キレイにまとまっていると思います」(大内氏)
PLASMAフラッシュと防水性能に対応したことで、さらに利用シーンが広がったS003。一方で、ディスプレイサイズが小さくなり、スライドのレールを省けなかったなど、“防水化の弊害”も少なからず生じた。日本でもトレンドになりつつあるタッチパネルの対応も待たれる。ともあれ、カメラ機能とデザインはS001から大きくブラッシュアップし、使い勝手も向上した。防水機構にも工夫が見られる。S003は“ケータイ兼デジカメ”として、アクティブに活躍してくれそうだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.