「iPhoneの完成度」を改めて感じさせられた2010年ITmediaスタッフが選ぶ、2010年の“注目ケータイ&トピック”(ライター神尾編)(2/2 ページ)

» 2010年12月30日 09時00分 公開
[神尾寿,ITmedia]
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「iPad」のインパクトと不運

Photo コンピューティング体験を変えた「iPad」

 スマートフォン以外ではもう1つ、Appleの「iPad」も今年の注目トピックスだった。

 iPadはデジタルコンテンツやインターネットをカジュアルに使えるマルチメディアタブレットとして2010年5月(米国では2010年4月)に発売。PCとスマートフォンに並ぶ、新たなデジタル端末として注目された。

 筆者もiPadを発売時から使っており、その優れたUIデザインとポテンシャルの高さに舌を巻いた。iPadは“デジタルコンテンツやインターネットを指で触る”という体験を洗練された形で実現しており、これまでPC中心だったコンピューティングやデジタルコンテンツ利用のUIデザインや世界観を一変させるものだった。その点で、iPadはiPhone 4以上に注目のトピックスだったと言える。

 しかし、その一方でiPadには不運もあった。

 1つはiPad発売直後、日本の多くの一般メディアがiPadを「電子書籍端末」かのように取り扱ったこと。iPadにとって電子書籍は1つのコンテンツ分野ではあるが、それがすべてではない。その背景にあるコンピューティングとインターネットの利用スタイルを一変させる“デザインの革新”こそが最大の注目ポイントであるにもかかわらず、そこがきちんと伝わらず、可能性と評価が矮小化されてしまった。

 そしてもう1つ、iPadの真価を発揮させるAppleのコンテンツストアが、日本では当初から出そろわなかったのもiPadの不運だった。電子書籍の「iBookstore」と映像配信の「iTunes Movie Store」はiPad発売時には間に合わず、iPadを用いた新たなコンテンツ利用スタイルが訴求しきれなかった。結果として当初のiPadは、一般コンシューマー層に注目はされたものの、プロダクトとコンテンツ・サービスの連携という部分で、Appleらしいシームレスさ・統一感が実現できなかった。

 iPadは大きな可能性を秘めたものであるが、今年の日本においては不完全燃焼だった感は否めない。今年後半になってiTunes Movie Storeがはじまり、一般ユーザーがiPadを活用しやすい利用環境は整ってきているが、まだ発展途上だ。来年に期待したい。

仕事・生活を変えた「BF-01B」と「Evernote」「TweetMe」

Photo ワークスタイルやライフスタイルを変えたモバイルWi-Fiルーター「BF-01B」

 筆者のワークスタイルやライフスタイルを変えた、という観点では、ドコモのモバイルWi-Fiルーター「BF-01B」と、個人向けドキュメント管理サービスの「Evernote」、そしてiPhone向けTwitterクライアントの「TweetMe」を挙げたい。

 バッファロー製のBF-01Bは、イー・モバイルの「Pocket Wi-Fi」(Huawei製)から続くモバイルWi-Fiルーター市場において、いま最もバランスが取れている製品だ。インフラはエリアの広さ・品質で定評のあるドコモのFOMAエリアが使えて、都市部の地下・屋内から地方郊外まで安心してどこでも使える。高速移動中にも切れにくく、出張が増えた筆者にとって使い勝手がよかった。さらにBF-01Bの連続バッテリー駆動時間は約6時間と長く、充電をしながらの利用もできる。ドコモの公衆無線LANサービス「Mzone」(U「公衆無線LAN」コースに契約すると利用できる)と併用すれば、一部の店舗や施設では公衆無線LAN経由の高速インターネット接続も可能。ノートPCや複数のデジタル機器を持ち歩くモバイルワーカーにとっては、BF-01Bの高機能さと実用性の高さはありがたかった。

 次にEvernote。これは今年3月の日本語化を皮切りに、対応する周辺機器やスマートフォンが軒並み増えて、かなり使いやすくなった。筆者は以前からPFUの「ScanSnap」を愛用しているが、これと組み合わせてあらゆる文書をEvernoteで管理し、MacBok AirやiPhone、iPadでいつでも確認できるようにしている。また会議の議事録や日常的なメモ、ニュース記事のクリップまですべてEvernoteに保存することで、仕事とプライベート両面での生産性が向上した。

 そしてTwitterクライアントとしては、TweetMeが今年の真打ちになった。実は筆者は今年ずいぶんとTwitterクライアントで試行錯誤をしてきた。公式アプリの「Twitter」、「Twittelator Pro」「Twitterrific」「Echofon Pro」などを渡り歩き、最終的にたどり着いたのが「TweetMe」だ。これは無料アプリであるにもかかわらず多機能で、UIがすばらしく洗練されている。また「ATOK Pad」とのシームレス連携機能もあるので、iPhoneが弱い日本語変換精度の悪さもカバーできる。iPhoneユーザーは是非いちど試してもらいたいTwitterクライアントである。

「誰もが参加できる世界」が大切

 2010年の動きを踏まえて2011年を見据えると、来年は「コンシューマー市場のスマートフォン化が加速する年」になりそうだ。

 日本市場に特化して開発・ビジネス基盤をおくフィーチャーフォンはさらに縮退。一般コンシューマーはスマートフォンに移動し、そこでの新たなモバイルビジネスやサービスが重要になってくるだろう。この市場を引き続きリードするのはAppleのiPhoneになるだろうが、急速に進化するAndroidスマートフォンの勢力も拡大し、その存在感も強くなる。

 このようなスマートフォン新時代において重要なのは、“多くの人々が参加できる世界”を作ることだ。いみじくもiPhoneが示したように、スマートフォンを一部のガジェットマニア向けのものにしてはいけない。子ども・女性からお年寄りまで、多くの人に分かりやすく使いやすいもの、デザインやUIが魅力的で、誰もがつい触ってみたくなるような端末やサービスを作らなければならない。その上で、コンテンツやアプリのストアもしっかりと構築・運営し、ユーザーのITリテラシーの如何に関わらず、誰もがスマートフォンを楽しめる利用環境作りが大切である。

 誰もがスマートフォンを通じて、新たなコンピューティングやインターネットの世界に参加できる――。そんな時代の幕開けの年に、2011年はなってほしいと思う。

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