インタビュー
» 2011年01月01日 09時00分 UPDATE

新春インタビュー:スマートフォン時代に向け、ラインアップ再編とiモードの移植を行う――NTTドコモ 辻村副社長に聞く(前編) (1/3)

2010年から続く大きな変革期のただ中にある日本の通信業界。その中でも先端を走るNTTドコモは、2010年の現象をどう受け止め、そして2011年にどのようなかじ取りをするのか。2010年のキーワードは「スマートフォン」だと話すNTTドコモの辻村清行副社長に聞いた。

[神尾寿,ITmedia]

 モバイルIT業界は2010年を境に新時代に突入した。

 1999年のiモード登場から10年余り続いた従来型の高機能ケータイ(フィーチャーフォン)の成長は鈍化し、一方で、iPhoneを代表とするコンシューマー向けスマートフォンが台頭。モバイルでの新ビジネス・新サービスの進化と発展の軸足は、スマートフォンに移り始めた。モバイルIT業界全体の成長領域も、“携帯電話”から“多様なモバイルデータ端末”へとシフト。その先兵として、2010年はモバイルWi-Fiルーターとモバイル通信モジュールが新規契約数の拡大を牽引した。そしてインフラ面では、NTTドコモが2010年12月24日にLTEサービス「Xi(クロッシィ)」を開始し、モバイルブロードバンド時代へと乗り出した。

 そして年が明けて2011年。今年はこの“モバイルIT新時代”の先駆けとなる1年になる。日本だけでなくグローバルでもモバイルIT市場の重要性は増していき、そこでの競争は激しくなる。

 モバイルIT業界は今年、どのように進化と発展をしていくのか。

 1月1日の新春特別インタビューとして、NTTドコモ 代表取締役副社長の辻村清行氏に話を聞いていく。

Photo NTTドコモ 代表取締役副社長の辻村清行氏

2010年、スマートフォンとデータ通信の時代が幕を開けた

――(聞き手:神尾寿)  2010年はモバイルIT業界にとって、重要かつ象徴的なトピックスが多い1年になりました。去年1年間を振り返って、どのようにご覧になっていますか。

辻村清行氏(以下辻村氏) やはり最大のトピックはスマートフォンですね。「スマートフォンが本格的に立ちあがり始めた年」。スマートフォンが、2010年を特徴付ける大きなキーワードです。

―― ドコモも、2010年4月に「Xperia」を発売し、その後に「Galaxy S」や「LYNX 3D」「REGZA Phone」など多くのスマートフォンを投入しましたが、市場での手応えはいかがでしたか。

辻村氏 手応えはありますね。当初は2010年度のスマートフォン販売台数を100万台程度と想定していたのですが、中間決算の段階で130万台まで上方修正しました。おそらく、その数字も超えると見ています。それだけの伸びしろがあります。

―― 日本ではiモードを筆頭にフィーチャーフォンが普及していたわけですけれども、スマートフォンがここまで売れている理由はどこにあると考えていますか。

辻村氏 やはりUI(ユーザーインタフェース)ではないでしょうか。スマートフォンがお客様に、新しいUIの世界観を提供した。ここが支持されているのだと思いますね。とはいえ、スマートフォン自身は発展途上だと考えています。おサイフケータイやワンセグが入っている機種が限定されていますし、UIもまだ進化していけます。(全体的には)発展途上な部分はあるとは思いますが、やはり“今までにない使い勝手”が出てきたということが重要です。

―― 確かに今までのフィーチャーフォンは、ある意味で完成されていて、UIやユーザー体験の部分での目新しさを、分かりやすく打ち出すのが難しくなっていました。その点で、今のスマートフォンはユーザーにとって新鮮に映るのかもしれません。まずは、そこが普及の入り口になっていますね。

 一方で、スマートフォンは従来型のフィーチャーフォンに比べてデータ利用量が多い。iPhoneの普及が著しいソフトバンクモバイルでは、3Gでのインフラ増強に加えて、公衆無線LANやフェムトセルへのオフロード戦略を打ち出しました。スマートフォン時代は、インフラに対する考え方も変わってきています。

辻村氏 ドコモでもデータトラフィックが伸びていまして、前年比で1.6倍くらいになっています。この伸びが今後5年も続くと、データトラフィックは現在の10倍を超えます。スマートフォン時代に備えたインフラ構築がとても重要になります。

 その対策の1つとして、我々はLTEの「Xi」を2010年の段階で導入しました。これは世界でも(早期導入の)トップ集団になります。スマートフォンによってデータトラフィックが爆発的に増える時代を前にしているからこそ、Xi導入は重要な布石になるのです。

―― 昨年はデータトラフィックが爆発的に増えていくという点でも、元年だったわけですね。

辻村氏 2010年はARPU(Average Revenue Per User/顧客1人あたりの平均収入)の面で見ても、ターニングポイントでした。ここを見ますと、2010年度は音声(通話料の)ARPUとデータ(通信料の)ARPUがちょうど50対50になるでしょう。2011年はデータARPUが、音声ARPUを超えていくと見ています。こういった傾向はドコモに限らず、他キャリアでも顕著になっていくと思います。

 スマートフォンの本格普及がはじまり、それによってデータARPUが音声ARPUを超えた。そういった点で、2010年はエポックメイキングな年だったと言えるでしょう。

2011年、スマートフォンにiモードを移植する

―― スマートフォンが本格普及期に入った2010年。これを受けて、2011年に注目のトピックスやポイントはどのようなものになるのでしょうか。

辻村氏 (2011年は)まずはスマートフォン普及のスピードが加速されます。ドコモの総販売数のうち、200〜300万台くらいがスマートフォンになるのではないでしょうか。この数字は上ブレする可能性もあります。僕としては、300万台に近い数字になると考えています。

―― スマートフォンの一般普及が本格化していくわけですね。

辻村氏 そうすると、ドコモとして考えなければならないのが、「iモードをどう取り扱っていくか」ということです。より具体的に言いますと、iモードで展開しているサービスをスマートフォン上に移していかなければなりません。iモードメールはspモードメールで移植しましたけれども、iチャネルやiコンシェルといったものがまだスマートフォンで利用できません。こういったiモード上のサービスを、スマートフォンのアプリに乗せていく。この作業を加速化しなければなりません。

―― 確かに私がスマートフォンに1本化できない原因も、iチャネル/iコンシェルや、緊急地震速報(エリアメール)が、いまだにスマートフォンで利用できないからです。2011年は、これら“iモードを日常的に利用しているユーザー”がスマートフォンを使い出す、と予測されているわけですね。

辻村氏 そうです。iモードのヘビーユーザーがスマートフォンの新規ユーザーになることを考えますと、(スマートフォン側で)きちんとiモードの受け皿を用意しておく必要があります。

―― スマートフォンでは今「spモード」というブランド名でiモード互換サービスを展開していますが、来年展開されるiモードの受け皿は、スマートフォンでも「iモード」というブランドになるのでしょうか。

辻村氏 それはまだ決めていません。iモードやiコンシェルというブランドで展開するのか、それともspモードのように別の名前にするのかは、まだ検討中です。

 しかし、いまiモードで展開しているサービスは、可能なかぎり多くをスマートフォンでも利用できるようにします。また、お客さまがストレスなく、(スマートフォン上のiモードに)移行できるということも重要ですね。

―― 実際にスマートフォン向けにiモードを展開するにあたっては、コンテンツの充実も必要になります。

Photo

辻村氏 ええ、コンテンツプロバイダーの皆さまの協力も必要になります。ドコモとしても、コンテンツプロバイダーとの連携は重視していきます。スマートフォンでは(従来型のフィーチャーフォンと)スクリーンサイズが異なりますし、UIもタッチパネルが前提になって大きく変わる。どこまでできるかは不分明ですが、ドコモとしてコンテンツプロバイダーのサポートは考えていかなければならないでしょう。コンテンツプロバイダーが混乱せずにスマートフォンに移行できるようにする、ということが重要です。

―― iモードのスマートフォン移行を考える上では、課金システムやDRMの整備も重要になってきます。ここでのドコモの方針はいかがでしょうか。

辻村氏 課金システムの整備やDRMの強化が、(スマートフォンでの)コンテンツ拡充に重要なのは理解しています。その点はGoogleとも協議を重ねています。ドコモとしても、きちんと取り組んでいきたい。

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