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» 2011年01月17日 14時00分 UPDATE

小寺信良「ケータイの力学」:学校からのアウトプットのIT化で得られるもの

学校から毎日のように届く、紙の連絡書類や“おたより”のたぐいは、管理するのがとても面倒だ。こうした連絡も、学校のIT化の中で取り組んでもらいたいものの1つである。情報は、必要な人が望んでPullしたときに得られることこそ重要だ。

[小寺信良,ITmedia]

 子どもを小学校にやっていると、いろいろな書類が学校からやってくる。学校だより、学級だより、保険だより、PTAからのお知らせ、校長先生からの通達などなどだ。平均すると毎日1〜2枚の、B4もしくはB5いっぱいに印刷された紙の情報がやってくることになる。一週間で10枚以上も届くわけだ。

 もちろんそれぞれが重要なお知らせではあるのだが、給食の献立表にいたるまですべてに目を通している保護者がいるとは思えない。しかもそれぞれ紙を発行するところが学校組織内でバラバラなので、どれがプライオリティが高い情報なのか、保護者の独断で判断することになる。当然、図工の用意として“なにか空き箱を持ってきてください”的なお達しを、うっかり見逃してしまうことになる。

 先週筆者はCES取材のために渡米していたのだが、朝の5時に長女から国際電話がかかってきた。下の子が明日から学校なのに、持って行くものが分からない、というのである。冷蔵庫の扉にクリップしてあったプリントがあったのだが、冬休みの間にどこかになくしてしまったらしい。こういう紙ものは、長期間目に付くところに置いておくということが難しい。

 学校からのこのような連絡は、早くIT化してくれないかと思う。メールで届けば、重要なものはマーキングしておけるし、学校の公式サイトに全部情報が載っていれば、プリントをなくして前の晩に大騒ぎする必要もなくなる。学校の時間割表にしてもそうだ。最近は2学期制の学校も多くなったが、そうなると同じ時間割を半年使うことになる。紙なので、最後の方にはもうボロボロだ。

 学校側は、プリントを大量に発行することで、情報を積極的に出しているつもりなのかもしれないが、こちらから望んで必要な情報がPullできないと、あんまり意味がない。うちの小学校などは学校だよりが子どもからだけでなく、回覧板でも回ってくるのだが、子どもがいない家庭にそういうものを回してもまったく無意味だし、それが「開かれた学校」という意味じゃない。先生は伝える職業の人なのでそういう発想になってしまうのかもしれないが、情報が必要な人が望んでPullしたときに得られることこそ重要なのではないか。

 以前取材した神戸の須磨学園では、制ケータイを導入して、学校と家庭の関係が変わったという。保護者が子どもの制ケータイを借りて学校にメールで連絡してきたり、子どもが学校のイントラネットに入って先生から課題のヒントを貰ったりしている。先生の負担増はあるかもしれないが、先生が子どもに向き合う時間がそれによって増加したとも言える。本来は、その時間を作るためのIT化なのである。

破綻する連絡網の現実

 学校の連絡網も、今難しいところにさしかかっている。筆者らが子どものころは、電話番号とともに住所も載っていたので、子ども同士が年賀状のやりとりをするのにいちいち住所を交換する必要もなかった。しかし最近の連絡網は、電話番号しか書いていない。

 これにはいろいろ事情があるようだ。まず大きいのは、2005年から施行された個人情報保護法により、個人情報に対して過敏に反応する人達が増えたということがある。住所と名前の組み合わせがプライバシーであるということに昇華してしまった。

 この引き金を引いたのは、1つはGoogleストリートビューだといわれている。好きなあの子の住所を頼りに家を調べてみたりというぐらいならかわいいが、クラスメートの住まいを調べておまえのうちは貧乏だなんだと言う輩が現われたことが、事態を加速度的に悪くした。

 その電話連絡網も、実際にはうまく機能していない。昨年の夏頃だったか、学校の連絡網のテストだということで、朝8時から連絡網を回すことになっていたのだが、待てど暮らせど電話が回ってこない。いい加減出かける時間になってしまったので、こっちから逆に遡って電話してみたのだが、2番目のお宅で止まっていたことが後日判明する始末である。全員に迷惑がかかるという意識を持たない保護者も、普通に存在する。

 連絡網が役に立たない理由は、ほかにもある。保護者、特に家庭に残る母親が外国人で、電話で日本語の会話が不可能な家庭があるケースだ。そんなのはレアケースだと思われるかもしれないが、特定地域の小学校では、すでにリアルな問題として対応が迫られている。そのほか子どもが保護者からのDV(家庭内暴力)から逃れて別居していたり、親戚に預けられているようなケースでは、そもそも連絡網に子どもの名前と電話番号を掲載できない。

 今はもう家庭同士を横につなげるネットワーク化が、難しくなっているのだ。そうなると新しいネットワーク化の方向としては、学校をハブとして各家庭が直接つながる、スター型ネットワークしか手がなくなってくる。

 すでに一部の学校では、学校からのお知らせをプリントだけでなく、各保護者へ向けてEメールでも送るところが出てきている。当初はこのような学校からの配信システムも、学校単位で管理することが求められていたが、最近はそういう業務を代行してくれるサービサーも登場しており、アウトソーシングする学校もある。そもそもこういう業務は、場所が離れた大手に頼むよりも、むしろ地域に根を張っているケーブルテレビなどの企業が、もっと積極的に取り組むべき事業であろう。

 もはや多くの人は、紙や電話が情報の中心だった社会の中に生きていない。社会の構造変化に合わせた情報改革を、学校が中心となって進めていってもらわなければ本当に困る事態が、もうすぐそこまで来てしまっている。

小寺信良

映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作は津田大介氏とともにさまざまな識者と対談した内容を編集した対話集「CONTENT'S FUTURE ポストYouTube時代のクリエイティビティ」(翔泳社)(amazon.co.jpで購入)。


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