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» 2011年01月31日 18時20分 UPDATE

小寺信良「ケータイの力学」:最も安全な端末がケータイという事実

携帯電話事業者による年齢認証サービスの提供など、コミュニティサイト利用の健全化への動きが進んでいる。子どもたちがどうやってそれをすり抜け、SNSで“出会って”いるのかも分かってきた。健全な利用者に迷惑をかけずに青少年をどう保護するか――。PCの利用実態把握が、今後大きなポイントとなると見る。

[小寺信良,ITmedia]

 子どもにケータイを持たせる、持たせないの議論の種は尽きないが、そんな騒動を横目で見ながら、携帯電話事業者は着々と穴をふさいできている。1月19日にKDDIと沖縄セルラーが発表した「年齢認証サービスの提供」もその1つだ。

 mixi、モバゲータウン、GREEは今やケータイにおける3大SNSと言っても過言ではないだろう。それ故にこの3社が関係する福祉事件が起きると、それみたことかとマスメディアが一斉に叩くという構図が出来上がっている。だがもはやこの3社のサービス内において、大人と子どもがどのように「出会う」かという方法論は、かなり調べ尽くされている。

 まずは大人が年齢を低く詐称して子ども(女子)の多いコミュニティに参加し、仲良くなったあと個人的な連絡先を交換、実際に会う、という流れだ。これに対して各社では、年齢が離れすぎている場合はミニメールが送れないといった制限を設けてカバーしてきたが、利用者がサービス登録時に年齢を詐称していた場合、つまり大人が子どもに化けていた場合には防げないという弱点があった。

 年齢情報をどのように確定していくかについては、利用者のフィルタリングの設定状況などを外側からつついて調べるといった方法論もあったが、今回の年齢確認サービスによって、キャリアが持っている契約情報から年齢が確認できるようになる。具体的にはauの契約時に、契約者あるいは利用者の生年月日を元に年齢を算出し、コンテンツ提供会社がリクエストした年齢、例えば18歳以上なのか未満なのかといった判定情報を渡すという仕組みである。コンテンツ提供会社には、具体的な生年月日や年齢は通知しない。単に指定された年齢より上か下かを判定をするだけである。

 対応サイトとしては、1月下旬からGREE、2月からmixi、3月以降にモバゲータウンとなっている。現状はまだauだけだが、他社も遅かれ早かれ追従するだろう。

PCへ逃げる子どもたち

 子どもたちは、監視下に置かれたSNSでどうやって実際に「出会って」いるのか。1月24日に開かれた安心ネットづくり促進協議会内の「コミュニティ検証作業部会」において、サーベイリサーチセンターが実施した調査結果が報告された。この調査は、実際にSNSで知り合い、異性の大人と1対1で会ったことがあるといった経験のある青少年を優先的に抽出した、デプスインタビューである。

 この調査によれば、コミュニティ機能によって共通の趣味を持つ人と出会う「認知・関心期」、日記・つぶやきなどで相手が信頼できるかを見極める「観察期」、ミニメールなどSNS内の機能を利用して信頼性を確認する「接触期」など、実際に会うまでを6つのステップに分類している。

 これらの過程の中で、個人的な連絡先をやりとりするためにさまざまな抜け道があることが分かっている。1つはメールアドレスやSkype IDのような連絡先を、写真や画像で送り合うという方法である。現在文字情報に関してはミニメールでも監視対象となっているが、それはある程度抽出ワードを用いて自動解析しながら切り出して、人が監視しているから可能になっているわけだ。それが画像や音声になってしまうと、自動解析が及ばないために、人力での監視が追いつかないという穴がある。

 もう1つは、ニコニコ生放送やUstreamといったネットの生放送を使って、個人情報をやりとりしている事例がある。こちらのほうは、ケータイ事業者の監視の及ばないツールを使ってコミュニケーションを行なっていると言える。現状一般的なケータイでは、UstreamやSkypeといったビデオチャット的な機能は使えない。まだ青少年にはスマートフォンの普及は本格的に始まっていない段階なので、まずPCを使っていると考えていいだろう。PCにはケータイにおけるキャリアのような、1人1人の契約情報を握る存在がなく、またコンテンツ提供会社も青少年の年齢認証も甘いコミュニケーションサービスが多い。このPCの利用実態把握が、今後大きなポイントとなってくるだろう。

 大人と子どもが出会うことそのものが、短絡的に悪いというわけではない。健全な活動に子どもも参加できるというのは、社会として理想的な環境である。そこではなく、青少年保護という観念で見ればアウトな行為が問題なわけである。そのあたりの線引きは、実際に出会っている最中に発生する部分なので、ネット事業者がそこに介入することは難しい。

 本来は水際でなんとかするのが筋なのだが、そこが難しいからといって水際の線が砂浜まで、あるいは海の家のあたりまで後退させられると、今度は健全な利用者にまで迷惑がかかる。今はそういう構造になっており、そのリスクがどこまで容認されうるかという程度問題になってきている。

小寺信良

映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作は津田大介氏とともにさまざまな識者と対談した内容を編集した対話集「CONTENT'S FUTURE ポストYouTube時代のクリエイティビティ」(翔泳社)(amazon.co.jpで購入)。


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