いつでも使える大画面――プロジェクター内蔵ケータイ「SH-06C」が生まれた理由(1/2 ページ)

AQUOS SHOT「SH-05C」とほぼ同時に開発された“兄弟機”のプロジェクター一体型ケータイ「SH-06C」は、その外観がよく似ていることから、開発はそれほど大変ではなかったのではないかと思うかもしれないが、そんなことはなかった。開発陣へのインタビューとともに、SH-06Cに秘められた工夫とその機能を紹介しよう。

» 2011年02月04日 10時00分 公開
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Photo プロジェクターを内蔵したタッチパネルケータイ「SH-06C」

 約3.7インチの大画面タッチパネルディスプレイを搭載したコンパクトなボディにおサイフケータイやワンセグ、有効約530万画素のCMOSカメラなど、ケータイとしての基本機能を搭載しつつ、約290センチの距離があればワンタッチで最大約60インチの大きな画面を投影できる小型のプロジェクターを内蔵したユニークなケータイが「SH-06C」だ。ワンセグや、Blu-rayディスクレコーダーなどで録画し転送した映像を流したり、microSDに保存された写真やオフィス文書などを投影したりでき、手軽にディスプレイより大きな画面が利用できるのが最大の特徴だ。

 ケータイにプロジェクターを内蔵する――。そんなプロジェクトを立ち上げ、実際に製品化にまでこぎ着けたシャープに、その狙いと製品化に当たって取り組んだ課題、そしてSH-06Cの便利な機能を聞いた。

Photo 後列左から通信システム事業本部 プラットフォーム開発センター 機構開発部 主事の片山賢二氏、同プラットフォーム開発センター 無線開発部 主事の東啓二朗氏、同パーソナル通信第一事業部 第一ソフト開発部 副主任の藤本正伸氏、同デザインセンターの徳力健太郎氏。前列左から通信システム事業本部 パーソナル通信第一事業部 技術部 主事の中原靖智氏、同パーソナル通信第一事業部 商品企画部 主事の永井秀幸氏、同デザインセンター 係長の真野靖彦氏

SH-05Cの兄弟機として生まれたSH-06C

Photo 通信システム事業本部パーソナル通信第一事業部 商品企画部 主事の永井秀幸氏

 プロジェクター内蔵ケータイの構想自体は以前からあったと、通信システム事業本部パーソナル通信第一事業部 商品企画部 主事の永井秀幸氏は話す。

 「2008年のCEATECで、ドコモさんと開発したプロジェクターケータイを参考出展したのを覚えている方もいらっしゃるかもしれません。このとき、会場で『面白い』という評価をいただき、製品化を検討し始めました」(永井氏)

 その後、海外でもプロジェクター内蔵ケータイが発売され、小型のプロジェクターなども増え、他社からもケータイのオプションとしてプロジェクターが登場したことなどから、プロジェクターをケータイに内蔵する、という構想が間違っていないことを確信したのだという。しかしなぜこのタイミングだったのだろうか。その理由を永井氏はこう話す。

 「もうケータイ1台が爆発的に売れる時代ではなくなりました。そのため、SH-06Cのようなケータイを単体で企画・開発するのは容易ではないのですが、光学3倍ズームを備えるカメラを搭載するSH-05Cと極力部品を共通化して兄弟機で出す、ということを考えました。ちょうど技術部門のほうからもプロジェクターケータイの提案が出ていまして。技術的な要素が大きい商品なので、それならやってみよう、ということで開発をスタートしました」(永井氏)

 こうした経緯があるため、ボディの機構はSH-05Cと共通の部分が多い。SH-05Cで光学3倍ズームのカメラユニットが搭載されているスペースに、プロジェクターユニットとカメラを組み込んでおり、内部の約3分の2のスペースは同じ構造となっている。ボディの3分の1を変更する、というと一見簡単そうだが、もちろんそれほど単純ではなかった。プロジェクターユニット部分を担当した通信システム事業本部 パーソナル通信第一事業部 技術部 主事の中原靖智氏は、このスペースにプロジェクターを搭載するため、ユニットを新規に開発する必要があったと振り返る。

 「当初は投影したときのピント調整を手動で行う方向で考えていたんです。ダイヤルのようなものをユーザーさんが動かして調整することを想定していたんです。でもユーザーさんにとっては、押しやすい位置にあるボタンを操作してピントを合わせる方式のほうが使いやすいですよね。そこでピント調整のためのフォーカスモーターを載せ、電動でピントを合わせられるようにしたんですが、するとプロジェクターユニットはどうしても大きくなってしまいます。そのため小さいプロジェクターをメーカーさんと新規に開発して、なんとかボディに収まるサイズを実現しました」(中原氏)

PhotoPhoto SH-06Cに内蔵されているプロジェクターユニット(左)は、SH-05Cの光学3倍ズーム搭載カメラユニットよりもさらに小さい。SH-05CとSH-06Cの内部は、およそ3分の2が共通化されている。ピント合わせは電動式で、端末の下部中央に用意したシーソーキーを利用する(右)。ここに発話キーと終話キーも備える

発熱と消費電力を抑える工夫

 光を発して写真や映像を投影するプロジェクターは、ランプを明るく点灯させる必要があり、消費電力が大きく、熱も発生する。消費電力や熱の問題は、ケータイを開発する上でやっかいな問題の1つだ。まさか火傷するような温度になる端末を発売するわけにはいかないので、熱対策は非常に重要になる。

Photo 通信システム事業本部 プラットフォーム開発センター 機構開発部 主事の片山賢二氏

 通信システム事業本部 プラットフォーム開発センター 機構開発部 主事の片山賢二氏によると「プロジェクターユニット部分は、ケース側にアルミや特殊なシートなどを貼って熱をうまく筐体に逃がすような構造にしています」という。「この部分は、技術部と一緒に何度もシミュレーションや実験を重ね、形状や構造などの最適な条件を決めていきました。また端末全体の消費電力を少しでも下げるため、プロジェクター保護用のアクリルパネルは透過率を上げる表面処理を施すなど、地道な工夫も凝らしています」(片山氏)

 さらに、利用シーンやボディの温度に応じてプロジェクターの明るさの制御も行っている。この明るさの調整は、電力の消費と発熱を抑え、バッテリーを長持ちさせるための工夫だ。パーソナル通信第一事業部 第一ソフト開発部 副主任の藤本正伸氏は、その仕組みをこう説明する。

Photo パーソナル通信第一事業部 第一ソフト開発部 副主任の藤本正伸氏

 「ケータイでは、ワンセグやiモーションなどの視聴中でも、一定時間操作しないと画面が暗くなるパネルセーブの機能が利用できます。しかしプロジェクターで投影中に画面を暗くするわけにはいきません。そこでディスプレイは一定時間経過後に消灯するのですが、プロジェクター側は消えないように、ソフトウェアで制御しています。これによってだいぶバッテリー駆動時間が延びます」(藤本氏)

 実際、ワンセグなどは2時間近く投影したまま視聴できた。もちろん充電しながらプロジェクターを利用することも可能だ。投影中でも端末のメイン画面と同じ画面が表示されるため、バッテリーの残量が確認できる。ちなみにバッテリーアイコンの表示が1つになるとプロジェクターの投影は終了する。これはカメラ機能などと同じ実装だ。

PhotoPhoto
PhotoPhoto ちなみにプロジェクターのオン/オフはデスクトップに配置されたアイコン(ウィジェット)からも切り替えられる。プロジェクターでの投影時は、アイコンのレンズ部分が明るく光る

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