ドコモの災害対策は続く――災害時でもつながる音声メッセージなど開発

» 2011年04月28日 09時00分 公開
[平賀洋一,ITmedia]

 NTTグループは4月27日、東日本大震災による被害の復旧状況と今後の対応について会見を行った。その中でNTTドコモ代表取締役社長の山田隆持氏は、ドコモ基地局の復旧状況や災害に強い携帯電話サービスへの今後の取り組みを明らかにした。

photo NTTドコモ代表取締役社長の山田隆持氏

 東北地方にあるドコモの基地局は、震災直後に最大4900局が停波などによりサービスを中断。その後の復旧活動により中断局は3月末時点で307局まで減少していた。このうち248局を4月下旬までに、59局を5月中に復旧させる計画だったが、4月26日時点では280局が回復。さらに4月30日までに9局の回復を見込んでおり、当初の計画を上回るスピードで復旧が進んでいる。残る18局は道路の寸断やトンネルの崩落などで工事が出できない地域にあるが、5月末までの復旧を目指すという。

 被害を受けた基地局がサービスを中断した原因は、地震と津波による直接的な損壊・水没のほか、基地局設備を結ぶ伝送路の切断と、長時間停電による電源の喪失という3つに分けられる。基地局の直接的な被害に対しては、被害を免れた局の大ゾーン化や移動基地局車の展開などでカバー。伝送路の切断に対しては、応急的な光回線や衛星回線への迂回などで対応し、グループが持つ電源車から基地局への給電を行った。

 また東京電力福島第一原子力発電所の30キロ圏内についても、移動基地局車の設置や伝送路の迂回、指向性の強い高性能アンテナの設置などでエリア化を実施している。

photophoto ドコモ基地局の復旧状況

photophoto 東京電力福島原発付近の復旧状況

緊急時用の大ゾーン基地局を常設、既存局も無停電化

 山田氏は今回の復旧活動を踏まえ、「人口密集地や行政機関が密集するエリアの通信確保、被災エリアへの迅速な対応、携帯電話ユーザーのさらなる利便性向上」という3つの基本方針からなる、ドコモの新たな災害対策の実施を公表した。

photophoto ドコモが発表した新たな災害対策の方針(左)。9月末までの本格復旧計画

 具体的には、広域災害時や停電時の通信手段を確保することを目的に、人口密集地に半径約7キロメートルをカバーする大ゾーン方式の基地局を設置する。この基地局は普段は使われず災害発生時のみに稼働するもので、東京・大阪などの大都市圏に複数局、その他の道府県に2局程度と全国100カ所に設置。これにより「人口のおよそ35%をカバーできる」(山田氏)という。ほとんどの大ゾーン基地局は、2011年度中に設置される予定だ。

 都道府県庁や市町村役場などの自治体機関をカバーする約1900の基地局については、最低24時間の無停電化を施す。基地局バッテリーの容量を増やすほか、発動発電機の設置を進める。今回の震災では燃料不足が深刻だったか、「ドコモ単体ではなくNTTグループでの取り組みになると思うが、なんらかの形での備蓄を考えたい」(山田氏)と、これからの対策になる見通し。

 被災エリアの通信手段復旧には、衛星通信の活用が挙げられる。ドコモでは衛星携帯電話と衛星エントランス基地局の倍増を計画しており、避難所での通話サービスを迅速に提供する考えだ。そして、地震で途絶した伝送路の早急な回復のため、非常用のマイクロ波設備の配備も進める。

通話規制でも「声」のメッセージを届ける新技術を開発

 さらに山田氏は、災害時でもつながりやすいパケット通信を使った音声ファイル型のメッセージサービスの開発を明らかにした。これは発信規制がかかって電話がかけられない場合、端末で録音した音声を圧縮してサーバに送信し、声を伝えたい相手に受信してもらうものだ。キャリア各社のケータイサイトを使う「災害用伝言板」と異なり、音声を直接送ることができる。

 利用イメージは従来の留守番電話サービスや音声メッセージサービス「声の宅配便」に近いものが予想されるが、通話用の交換回線を使わないのが特徴。パケット通信を使うがVoIPとも違う技術になる。

 「災害用伝言板は60代を超えると利用比率がぐっと下がる。このメッセージサービスはあらゆる年代に使ってもらうのが目的。また、キャリア各社の相互接続が実現した災害用伝言板のように、事業者の垣根を超えて利用できるよう業界に呼びかけたい」(山田氏)

 ただし、専用アプリの開発やプロトコルへの対応などから、まずはドコモのスマートフォン同士での対応になるという。

 災害用伝言板と同様に注目を集めたエリアメール(緊急地震速報)の活用も進める。ドコモはスマートフォンのエリアメール対応を「2011年の冬モデルから」としているが、ソフトバンクモバイルは既存機種を含めたスマートフォンへの対応を発表した。

 これについて山田氏は「緊急地震速報の品質条件は(仕様上)非常に厳しい。スマートフォン向けアプリで“緊急地震速報風”のサービスはあるが、パケット通信を使うためユーザーの受信時間に差がでる。ドコモとしては冬モデルに、エリアメール本来の品質を保ったサービスを提供したい」と述べた。だが、パケット通信を使う方式を否定するわけでもなく「当面はアプリのものとエリアメールと2段構えになる」という考えを示した。

ドコモショップへの支援も

 ドコモでは被災地域のユーザーにさまざまな支援策を提供しているほか、義援金の寄付やチャリティサイトでの募金受付などを行っている。こうした活動に加え、被災したドコモショップへの支援策も公表された。ショップの代理店には総額3800万円の見舞金が寄付さえたほか、別地域の代理店に支援金の協力を呼びかけている。また、店舗再開時の商品仕入れ費用の支援や、無利子融資も実施予定だ。

 なお、今回の震災でドコモが受けた被害額は約260億円。うち60億円を2010年度内の損失として、また2011年度以降の損失として100億円を計上する。加えて、震災以前に計画していた通信品質のための設備投資を、約100億円かけて行う。

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