「Ditto!」が記述し始めた未来松村太郎のiPhone生活:ソーシャルネットワーキング

» 2011年05月24日 22時58分 公開
[松村太郎,ITmedia]

 我々は、ブログに直近の過去の経験を書いてきた。例えばAppleの発表会などをリアルタイムで更新するページを「Live Blog」という言葉で紹介しているのも、元々ブログがそこまでのリアルタイム性を持っていなかったことに起因するのではないかと思う。そしてTwitterによって、我々は「なう」を記述できるようになった。

 とすると、次は未来。どのように未来を記述するのだろう? というところに興味が湧くのは自然な事じゃないだろうか。「Ditto!」(ディトー)はそのちょっと先の未来を簡単に記述することができるアプリと見ることができる。

「これから何する?」をソーシャルにポスト

Photo これから何をするか、をソーシャルスペースへ向けて発信する「Ditto!」

 Ditto!はiPhone向けの無料アプリで、まずFacebookアカウントと連携するところから使い始める。いきなりユーザー登録ではなく、Facebook認証でメールアドレスやユーザー名を取得してくるという点は、後発のソーシャルアプリではもはや当たり前の光景だ。メリットも多い。すでにDitto!を使い始めている他のFacebookユーザーを発見して、友達登録ができる。1人ぼっちでスタートする必要はないのだ。

 続いて、TwitterやFoursquareからも友達を登録できる。結果的に、Ditto!からFacebook、Twitter、Foursquareに投稿連携をできるようにするのだが、その同期が友達探し、というのも時間を節約できているようでスマートだ。諸々準備を整えたら、早速投稿してみよう。

 画面を開くと、まず始めにカラフルなアイコンが4つ並んでいる。アイコンはスライドさせて、さらに別の種類のアイコンを見ることもできる。Home、Eat out、Work、See movie、Coffee、Transportationなど、日常生活でやりそうなことをほぼ網羅したカテゴリがそろっている。そして1つのカテゴリを選ぶと、すぐに投稿画面に進む。

 例えば、「Eat out」を選んだら、そのまま投稿するだけで書き込みは成立する。その場合、FacebookやTwitterなどに、「Taro M. wants to eat out.」と表示される仕組みだ。タップだけで、今何がしたいか、これから何をするかを書き込むことができる点は、タイピングが必要だったTwitterやFacebookに比べて非常に簡単。もし必要であればコメントを書き込むこともできるし、かわいい丸いシールをタップすると、そのカテゴリの中の別の動作を選ぶこともできる。

 もう1つ例を見てみよう。「Coffee」を選んで、「Latte」をチョイスした場合、どこかのカフェに行くことになる。その際には、「Select coffee shop」を選べば、今自分がいる場所の周囲のコーヒーショップを発見でき、そこを選べば、近ければFoursquareのチェックインまで済ませてくれる。これもタップだけ。あるいは空欄にしておいたり、「どこかいいカフェありませんか?」とコメントすれば、友人がオススメのカフェを同じ要領で教えることも可能だ。

PhotoPhotoPhoto 画面上部に並ぶアイコンを選ぶと、すぐに投稿画面になる。一言は追加しなくてもいい。右上のシールをタップすると、そのカテゴリー内の別の動作を選ぶことも可能。Latteを選んだら、近くのコーヒーショップを選択できる
PhotoPhotoPhoto Ditto!の投稿は地域ごとなどにまとめて見ることも可能だ。友人が食事をする場所を探していたら、いい店をお勧めすることもできる。それに対してお礼をするというコミュニケーションも可能。映画を選んだら、映画のタイトルが選べる

 Ditto!はタップだけで、これから、どこで、何をする?という表明ができる、とても簡単なソーシャルコミュニケーションを実現しているのが特徴だ。

Ditto!を立ち上げたエングストロームさんに聞く

Photo Dittoの創業者、ジリ・エングストローム(Jyri Engstrom)さん

 出張でサンフランシスコに行くチャンスがあったので、友人を伝って、Dittoの創業者であるジリ・エングストローム(Jyri Engstrom)さんにインタビューをしてきた。彼はフィンランドの出身。2007年にGoogleに買収された、現在で言うところのTwitterとTumblrを合わせたようなサービス、JaikuのCEOでもあった人物だ。サンフランシスコのマーケットストリートから少し奥に入った、リノベーションをしたような吹き抜けとロフトのオフィスを訪ねると、ミーティングルームは屋根付きの屋外。季候の良いサンフランシスコらしいオフィスにお邪魔してきた。

 まずDitto!の名前の由来は?と聞くと、映画「ゴースト/ニューヨークの幻」でデミ・ムーアーが「Ditto!」と言っていたのを覚えていたからだという。彼自身も英語がネイティブではないため、友人に意味を聞いたら「賛成!」というような意味で、その印象が強かったのだそうだ。事実、Ditto!には、Facebookで言うところの「いいね!」のような「Ditto」リンクが付いている。

 さて、Ditto!はまず、アクティビティのボタンを選ぶところから始まるが、これはなぜなのだろう?

 「理由は簡単で、いかにタップだけで済ませるかを考えた結果です。せっかく大きなタッチパネルのスマートフォンを持っているのだから、タイピングしないで意思表示をしたいですよね。TwitterもFacebookもFoursquareも、たいていタイピングしてからポストしたり、チェックインしたりする必要がありますが、ソーシャル・ジェスチャーを考える際、タイピングは重たい作業になってしまいます」

 また簡単な動作で実現しようとしているDitto!のテーマは、情報取得のモバイル化とソーシャル化にふさわしい手段を作ることだという。

 「Googleはモバイル対応も果たしていますが、やはりタイピングで検索しなければならず、また検索ワードを思い浮かべなければ調べることができません。つまり、スマートフォンからGoogle検索をしても新しい発見はなく、知らない街に行っても地元の人が行くようなお店を発見するのは難しいのです。一方でTwitterはモバイルにはぴったりのソーシャルメディアでしたが、知らない人との会話のリングを作ることは難しい。地元の人が、その場所に来た来訪者をいかに助けられるか、を考えました」

 Ditto!の画面下部にある真ん中のタブは、その地名が表示されており、周辺のDitto!ユーザーがこれから何をしようとしているのかを発見することができる。例えば「どこかに食べに行きたい」「コーヒーを飲みたい」と言っている人にオススメのレストランや喫茶店をタップだけでオススメできるのだ。もしその情報が良ければ、教えてもらった人はトロフィーをあげることで、コミュニケーションが成立する。マネタイズについても、「I don't know.」と前置きしながら、このコミュニケーションの上で展開されることを期待しているという。

 「最もシンプルな方法は、現在Googleでやりとりされているキーワード広告や位置情報に応じた広告を自動的にオススメとして表示する方法です。あるいは映画を観ようとしている人には、映画の予告編をアプリの中で見せても良いかも知れません。家で本を読もうとしている人には、オススメの本のAmazonやKindle、iBooksへのリンクを掲載する。iPadを使おうとしている人にはアプリを表示してアフィリエイトにしてもいいかもしれません」

Photo リノベーションをしたような吹き抜けとロフトのオフィスは、サンフランシスコのマーケットストリートから少し奥に入った場所にある

 これから人が何をしよう、という意思表示をソーシャルジェスチャーとして行うからこそ、地元の人に教えてもらったり、より精度の高い広告の提供につながる、というアイデアだ。本当にシンプルであるが、よくデザインされたアイコンと、なるべくタップだけで済ませるというユーザーインタフェースについては、ぜひiPhoneユーザーには触れてみてほしいと思う。

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プロフィール:松村太郎

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東京、渋谷に生まれ、現在も東京で生活をしているジャーナル・コラムニスト、クリエイティブ・プランナー、DJ(クラブ、MC)。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。1997年頃より、コンピュータがある生活、ネットワーク、メディアなどを含む情報技術に興味を持つ。これらを研究するため、慶應義塾大学環境情報学部卒業、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。大学・大学院時代から通じて、小檜山賢二研究室にて、ライフスタイルとパーソナルメディア(ウェブ/モバイル)の関係性について追求している。


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