インタビュー
» 2011年08月05日 10時00分 UPDATE

ドコモは携帯電話会社を卒業する――NTTドコモ 山田社長に聞く(後編) (1/2)

世界に先駆けて、モバイルインターネット市場を構築したNTTドコモは、クラウドとソーシャルがキーワードとなる時代にどのような成長を目指すのか。山田隆持社長に聞いた。

[神尾寿,ITmedia]

 スマートフォンの急速な普及をきっかけとして、インターネットとの融合やクラウドサービスの浸透が急速に進むモバイルIT市場。業界全体の枠組みが変わる中で、モバイルITのすべての根幹である「通信インフラ」を持つキャリアはどう変わっていくべきなのか。世界に先駆けて、携帯電話による“モバイルインターネット市場”を構築したドコモは、これから始まる新時代にどのような舵取りをするのか。

 7月にお送りした前編に引き続き、NTTドコモの山田隆持社長に話を聞いていく。

ドコモにとって、“Android一極集中”はリスクもある

――(聞き手:神尾寿) 現在、ドコモのスマートフォン戦略は大きくAndroidに依存しています。しかし過去を振り返りますと、ドコモの端末戦略では“1つのプラットフォームに依存しないこと”を重視してきました。現在のAndroid一極集中に経営上のリスクはないのでしょうか。

Photo NTTドコモ 代表取締役社長の山田隆持氏

山田氏 基本的な考え方としては、やはり一極集中は望ましくない。競争関係のある複数のOSプラットフォームがあり、そこから我々が選んでいくことが正しい状況でしょう。

 実際、欧州のオペレーターの間でも、Google(のAndroid)への依存度が高くなっていることへの懸念がある。今はオープンOSだからいいとしても、遠い将来までGoogleの戦略が一貫していくという保証はどこにもないわけです。

―― しかも、通信キャリアにとってのAndroidの懸念は、「スマートフォンのOSを牛耳られる」だけではありませんよね。Googleアカウントが必須になることで、これまでキャリアの強みであった“認証”や“課金”の部分にもGoogleが侵入してくる。さらにGoogle+が普及していけば、Androidごとネット上でのソーシャルグラフやコミュニケーションまでGoogleに押さえられてしまうリスクがあるわけです。

山田氏 ええ。そういう観点もあって、他のスマートフォン向けOSもやりたいと考えています。

 ただし、(Androidの対抗となる)OSプラットフォームで重要なのは、それがグローバルになり得るか、ということですよね。例えばSamsungが採用するかどうか。こういった点が重要になるわけです。具体的な状況はまだ申し上げられませんが、Google一辺倒にならないような取り組みは考えていく必要があるでしょう。

―― “現時点で”と考えると、グローバル展開しているAndroid以外のスマートフォン向けOSは、Appleの「iOS」とMicrosoftの「Windows Phone 7.5」ということになりますが、これらはいかがでしょうか。

山田氏 iOSは(Appleの)垂直統合モデルなので、iPhoneを導入しないかぎりはいかんともしがたいですよね。 また、MicrosoftのWindows Phone 7.5も垂直統合モデルのようになってきていますよね。

 あとWindows Phone 7.5は(iOSやAndroidと比べて)半周くらい遅れてしまっている。これを取り戻せるかが重要です。我々としては、この遅れを取り戻したなら、(導入することは)やぶさかではないのです。もちろん、継続的に評価・検討はしていきます。

Androidのセキュリティ問題にどう対応するか

―― ところで、今年に入ってからAndroidマーケットでマルウェアが流通する事件が発生するなど、Androidではセキュリティに対する不安感が増大しています。ドコモとして、Androidスマートフォンのセキュリティ問題にどのように取り組んでいくのでしょうか。

山田氏 まず7月1日から「ドコモあんしんスキャン」を開始しました。ドコモとしては、基本的な安心・安全に必要なサービスは、(今後も)無料で提供していきたいと考えています。ですから、今回、あんしんスキャンを入れたわけです。

 そして、もうしばらくしますと、我々がスキャン以外のサービスを提供することも視野に入ってきます。しかし、これまで無料で提供するかどうかは、今まさに検討しているところです。

―― Androidのマルウェア対策では、「アンチウイルスソフトを導入する」という方針でしょうか。

 といいますのも、今あるAndroidスマートフォン用アンチウイルスソフトを試しますと、動作速度やバッテリー持続時間に対して、少なからず悪影響を及ぼすと感じています。端末性能やバッテリー搭載量に限りがあるモバイル端末においては、抜本的な部分で、“マルウェアが流通しない仕組み”を作る方が重要だと考えますが。

山田氏 それはAndroidマーケットの中で、どこまで厳しく取り締まりができるか、ですね。一方で、ドコモマーケットは我々がチェックできる立場にありますので、そこで紹介しているアプリに関しては、しっかりと「安心・安全」を提供していきたい。

―― これからケータイユーザーが、Androidスマートフォンを購入していくことを考えますと、少なくとも「ドコモが提供するストア」の中だけでも安全が担保されている、というのは重要だと思います。その取り組みには期待しています。

ドコモはFacebookと対抗する

―― スマートフォン市場が広がり、OSレイヤーからのプラットフォーム競争が激しくなっているわけですが、この新たな時代において「iモード」というドコモのプラットフォームをどう変えていくのでしょうか。

Photo 重要なのは「スマートフォンをどのようにソーシャル化していくか」(山田氏)

山田氏 まず、iモードはいまだにフィーチャーフォンとして4000万台が稼働しており、多くのお客さまが使っています。この資産を当面は維持していかなければなりません。ただし、フィーチャーフォン向けのiモードは今後は現状維持になり、新たなイノベーションにつながる開発は、スマートフォン向けで行っていきます。

 そして、iモードの“よい仕組み”だった機能・要素は、スマートフォンに継承していきます。例えば、月額課金のシステムなどですね。

―― 過去10年あまりのiモードの資産を活用していくことは確かに重要ですが、2010年代にドコモのサービスプラットフォームをどうデザインするかということも重要です。クラウドやSNSといった今後重要になっていく要素とどう向き合っていくのでしょうか。

山田氏 詳しくはまだ申し上げられる段階にありませんが、今後、重要なのは“スマートフォンをどのようにソーシャル化していくか”だと考えています。最近ではFacebookなどが台頭してきていますし、ここでの取り組みはとても重要になります。

―― 考え方によっては、通信キャリアのビジネスはFacebookと競合しますよね。

山田氏 そうです。(Facebookは)我々と競合するのですよ。下手したら、Facebookにみんな持っていかれてしまう可能性もあります。彼らにはソーシャルグラフだけでなく、コミュニケーションのレイヤーも持っていかれる恐れがある。だから、(ドコモは)Facebookに対抗できるサービスを作っておかないといけないのです。

―― Facebookと提携し、彼らのサービスを取り入れるというのではなく、ドコモとして独自のスタンスでFacebook対抗のサービスを作っていきたい、と。

山田氏 基本的には(Facebook対抗のサービスを)作っていきたいと考えています。我々ドコモは、Facebookができている技術的なところは全部できてしまうわけです。スマートフォン内にあるユーザーの個人情報をSNS化していく新たなサービスを多く企画・開発しています。これらを2011年の冬モデルから順次提供していきたい。

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