Androidな「G'zOne IS11CA」を“ギチギチ”な航海機器に育てる勝手に連載!「海で使うIT」(1/4 ページ)

» 2011年08月30日 09時30分 公開
[長浜和也,ITmedia]

本当のアウトドアギアとして進化したのかどうなのか

私に目をつけられた堅牢デバイスは、すべて過酷に海に連れて行かれる。「G'zOne IS11CA」も例外ではない

 過去に、G'zOne TYPE-R、G'zOne W42CAを取り上げて、伊豆諸島に遠州灘と過酷な航海で、“航海機器として使えるのか”という、超私的な検証を行ってきた。当時、荒波を頭からかぶる外洋でむき出しのまま使える唯一の携帯電話として、内蔵された電子コンパスの使い勝手やEzwebで利用できたEzナビウォークによるGPSプロッタが海で使えるなど、“条件つき”ながら、航海機器としての可能性を示してくれた。

 その後、GzOneシリーズは、後継モデルを次々と投入し、アウトドアギアとしてのハードウェアは、G'z One TYPE-XでIP58、IP55準拠となって、防水機能では全方位噴流試験(直径6.3ミリのノズルから毎分12.5の水を2.5〜3メートルの距離から3分間注水する)をクリアするだけでなく、水圧試験機によるテスト(ただし試験条件は未公開)をクリアし、耐衝撃性能では「MIL-STD-810G Method 516.6」で求められる試験(高さ1.22メートルからラワン材に落下するテストをボディ26方位で行う)をクリアするまでになった。

 2011年7月に出荷を開始したシリーズ最新モデル「G'zOne IS11CA」も、防水防じん、耐衝撃性能は従来モデルのG'zOne TYPE-Xと同等のIP55、IP58、MIL-STD-810G Method 516.6を実現している。スマートフォンに求められる前面のほとんどを覆う液晶ディスプレイは、耐衝撃性能の確保では不利と思えるが、コーニングのゴリラガラスの採用で強度を確保しただけでなく、砂利や岩盤、カラビナやハーケン、シャックルキーなど、野外行動で避けることができない、または、必須のツールとして身に着けている“鋭利で硬いもの”と接触、衝突しても液晶ディスプレイを守ってくれる。

 生活防水に限らず、防滴や防じん性能をもった携帯電話は多くの製品が登場しているが、耐衝撃性能を有するモデルは、日本ではほとんどない。動揺が激しいヨットにおいて、G'zOneの耐衝撃性能は必須であり、そこに、G'zOneシリーズを選ぶ大きな理由があるといえる。

 また、「海に潜るわけでもないのに、水圧試験をクリアするほどの防水性能は必要なのか」という意見も一部の船長から聞かれるが、生活防水対応デバイスと水圧試験をクリアしたデバイスでは、海上で波を“長い時間”かぶり続けた場合に違いが出る。生活防水レベルでは、波をかぶって1昼夜程度放置すると、防水処理をしたハッチの隙間から水が浸入する可能性があるのに対して、水圧試験をクリアした場合は、十数時間に及ぶ航海で断続的に波をかぶり続けても、水が内部へ進入することはない。“長い時間の積み重ね”で考えた場合、水圧試験をクリアできるほどの十分な防水性能が必要であると、“経験上”考える。

そして、荒れる海で使ってみた。

ACTIVEキーの“一押し”でロック画面をスキップして呼び出せるラウンチャーアプリの「ACTIVE SLOT」

 というわけで、まずは、G'zOne IS11CAを実際に船で使ったみた。検証航海を行ったときの海象は、北北東の風が7〜10メートル、波やや高く、操船している甲板まで波しぶきが降りかかる状況で、全長8メートルの小型ヨットによる帆走で船は大きく揺れる中での操作となった。

 G'zOne IS11CAでは、本体左側に備える「ACTIVEキー」を押すと、ロック画面をスキップして「ACTIVE SLOT」が起動する。これは、ユーザーが5つまでアプリケーションを登録できるラウンチャーアプリで、中央アイコンのタップ、または、中央から上下左右のアイコンに向けたフリックで、登録したアプリケーションを起動できる。

 航海中はバッテリーを節約するため、こまめに画面を消して運用することになるので、復帰するときにACTIVEキーを押すだけでアプリケーションの起動画面を呼び出せるのは、必要な情報をすぐに知りたい航海中には便利だ。ただ、揺れる船では、フリックで求められる“まっすぐな指の動き”を実現するのもひと苦労するので、画面に表れたアイコンをそのままタップさせてくれると、より安心して使えるだろう。また、片手持ちが強いられる状況で使う場合、操作に使えるのは片手親指が唯一となるが、ACTIVE SLOTのフリックで指が届かなくなる場面もあるなど、野外行動で操作が困難と思われる場面も少なからずあった。

本体左側面中央に設けたACTIVEキーは、ロック画面をスキップしてACTIVE SLOTを呼び出せる。ユーザーが登録したアプリケーションも呼びさせるので、自分が使いやすいラウンチャーアプリを使うことも可能だ

 野外活動では、炎天下でアウトドアギアを用いることも十分にありえる。コーニングのゴリラガラスを採用した光沢タイプの液晶ディスプレイを搭載するG'zOne IS11CAだが、晴天8月の正午前後に、画面輝度を最大にした状態でアプリケーションを起動してみたが、問題なく画面を視認できた。なお、航海中、波をかぶって画面や指がぬれた状態でも、タップやフリック操作は支障なく行えた。

 バッテリー駆動時間については、画面を最高輝度に固定し、また、画面が暗くなるまでの時間を30分とAndroid 2.3で設定できる最も長い時間にしたうえで、GPSと3Gデータ通信は常時オンにした状態で、GPSトラッキングと航行情報の表示、ネットワーク接続を伴うAISデータの表示を継続して、沿岸(三浦半島西岸から南岸)から2〜4海里の距離を離して航海したとき、13時の出港の満充電から17時30分の帰港でほぼ5%まで消費していた。

本格的なアウトドアギアを名乗るなら、温度計より気圧計

 G'zOne IS11CAは、IP55、IP58の防水防じん性能は当然として、Android対応スマートフォンであるがゆえに求められる大きなサイズの液晶ディスプレイを搭載したにもかかわらず、耐衝撃性能も従来のG'zOne TYPE-Xを確保した。液晶ディスプレイの輝度は、炎天下の行動でも画面表示が視認可能であるなど、そのハードウェアはアウトドアギアとして十分な性能を有している。

 ただ、願わくば、G'zOneシリーズでも気圧計を内蔵してほしい。温度計は搭載しているものの、暑くなった寒くなったがは体感で感知しやすいのに比べて、気圧が上がった下がったとなると、人間が感じ取ることは難しい。一方で、天候の悪化回復を局所的に、そしてリアルタイムで予測するのに、温度の変化より気圧の変動のほうがはるかに重要な情報を提供してくれる。個人的には、温度計などなくてもいいから、気圧計を内蔵することが、G'zOneシリーズが本格的なアウトドアギアとなるための必須条件と思う。

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