インタビュー
» 2011年09月06日 09時30分 UPDATE

開発陣に聞く「006SH」「007SH」:携帯電話の機能を求めている人に――“ジャパニーズスタンダード”を注入した「006SH」「007SH」 (1/2)

ソフトバンク向けに豊富なスマートフォンを供給しているシャープ。中でも代表的なモデルが、最先端のスペックを盛り込んだ「AQUOS PHONE 006SH」と、折りたたみスタイルを採用した「AQUOS PHONE THE HYBRID 007SH」。これら2機種から、シャープのスマートフォン開発へのこだわりをひもとく。

[田中聡,ITmedia]

 ソフトバンクの夏モデルは半分以上がシャープ製モデルで占められている。「AQUOS PHONE 006SH」は4.2インチのQHD(540×960ピクセル)液晶や3D撮影可能なツインカメラを搭載するハイスペックなスマートフォン。「AQUOS PHONE THE HYBRID 007SH」は見た目はフィーチャーフォン(従来のケータイ)と変わらない折りたたみ型のAndroid端末。これまでのケータイと同様、物理型のテンキーを使って操作できるのが特徴だ。このほか、007SHをベースにした「AQUOS PHONE THE HYBRID 007SH J」「007SH KT」や、上質感を追求した「AQUOS PHONE THE PREMIUM 009SH」、ヤフーと連携した「Yahoo! Phone 009SH Y」など多彩なラインアップを提供している。

 ソフトバンクのAndroid陣営では欠かせない存在のシャープだが、スマートフォンシフトが進む中、シャープはどのような狙いで端末を開発しているのだろうか。通信システム事業本部 パーソナル通信第二事業部 商品企画部 副参事の林孝之氏、通信システム事業本部 パーソナル通信第二事業部 商品企画部 係長の河本幸生氏に、006SHと007SHについて話を聞いた。

photophoto 「AQUOS PHONE 006SH」
photophoto 「AQUOS PHONE THE HYBRID 007SH」

ストレスを感じない3D撮影が可能に

photo 林孝之氏

 006SHと007SHは端末のコンセプトは異なるが、いずれも「携帯電話の機能を求めている人をターゲットにしている」(林氏)という。「現在のスマートフォン市場は、高機能と使い勝手を求めるユーザーに二分しています。その中で、携帯電話に入っている機能を求めている人が多くなってきています」と林氏は説明する。シャープは2010年冬モデルの「GALAPAGOS 003SH」、2011年春モデルの「GALAPAGOS 005SH」からワンセグ、赤外線通信、おサイフケータイ、キャリアメールをはじめとする、日本のケータイでなじみ深い機能を取り入れてきた。夏モデルではスペックと使い勝手を向上させ、より日本人が使いやすいスマートフォンに仕上げた。

 では、具体的にどの部分に注力したのか。006SHはNTTドコモ向け「AQUOS PHONE SH-12C」とau向け「AQUOS PHONE IS12SH」とほぼ同等の機能を持つ、今夏に発売された“シャープ3兄弟”の1つ。4.2インチの3D表示対応QHD液晶や800万画素CMOSツインカメラ、ホームネットワークを手軽に利用できる「スマートファミリンク」など、ソフトバンクのフラッグシップモデルにふさわしいスペックを誇る。

photo 3D撮影が可能な2眼カメラを装備

 中でもAQUOS PHONEならではの機能が3D撮影だ。006SHは2眼カメラを搭載することで、シャッターを1度切るだけで手軽に3D静止画や3D動画を撮れる。美しく3D撮影できるようシャープが注力したのが、色と明るさを調整する「カラーシンクロ」、映像信号を同期化する「タイミングシンクロ」、位置ずれを補正する「光軸調整」だ。「一番大変なのは、2つのカメラをどう同じように使い切るか。デバイスによって誤差が出ると左右の画像で色が違うといったことが起こりますが、カラーシンクロによって違和感がないようにしています。光軸補正は、平行に位置を決めているつもりでも微妙にずれていることがあるところを補正する技術です」(林氏)

 1眼カメラの場合、3D撮影をするには端末を右方向に動かしながら、左目用と右目用の写真を別途撮る必要があるので手間がかかるが、2眼カメラを備える006SHならワンタッチでよい。この手軽さが、3D撮影を楽しむモチベーションを上げてくれる。さらに、「ストレスを感じさせないよう、保存スピードにもこだわった」(河本氏)という。

 一方で気になるが、006SHのカメラはCCDではなくCMOSとなったこと。シャープのケータイといえば、ここ数年はCCDカメラ搭載機が主流だったが、006SHではツインカメラを備えたことで、撮像素子はCMOSとなった。河本氏は「CCDをツインカメラに採用すると、サイズが増してしまいます。CMOSの画質もチューニングはしていますが、暗い場所ではCCDの方が優れているというのはあります」と説明するが、今後、シャープのフラッグシップモデルはCMOSのツインカメラになるのだろうか。林氏は「サイズ感の問題もありますが、CMOSの技術もだいぶ上がってきたので、そういった良いところは吸収していきたいですね。CMOSがダメと言うつもりもありません」と話す。007SHはスマートフォンでは高画素な1610万画素CCDカメラを搭載しているので、端末のコンセプトによってカメラのスペックも変わりそうだ。

高画質エンジンも快適動作に貢献

photo 河本幸生氏

 シャープのAndroid端末ではおなじみの3D液晶は、左目用と右目用の映像が混ざらない低クロストーク(2重映り)を目指し、従来機よりも自然な3Dを表現できるようこだわった。液晶とガラスを密着させることで、間にある空気層をなくす「リフレクトバリアパネル」も採用し、バックライトを消した状態では「真っ黒に沈んだ精悍な見え方」(河本氏)になる。

 写真をより美しく表示する「dot by dot」表示を取り入れたことも見逃せない。通常、5Mや8Mなど大きなサイズで写真を撮っても、ケータイやスマートフォンの画面ではスムーズに表示できるよう圧縮されているため、拡大すると粗く表示されてしまう。しかし006SHのdot by dot表示では、拡大しても1ピクセルの大きさが変わらないので、PCなどで見るときと同様に鮮明に表示される。この表示は「ピクチャー」アプリから再生した場合に有効となる。スマートフォンでは特にピンチアウトで拡大することが多いので、うれしい仕様といえる。

photophoto dot by dotにより、拡大しても鮮明に写真が表示される

 従来のフルワイドVGA(480×854ピクセル)からQHD(540×960ピクセル)に解像度が上がることで、ディスプレイにかかる負荷も上がるが、シャープ独自の高画質エンジンを積むことで、スムーズに動くようチューニングしているという。006SHではCPUのクロック数が1.4GHzに上がっているが、「CPUだけでなく、エンジンによるところも大きい」と河本氏は話す。「チップセットで液晶を駆動させているものもありますが、高画質エンジンを加えることで、より美しく早く表示できます。このエンジンはどのアプリでも有効です。エンジンなしとありとでは、全然違います」と林氏も胸を張る。河本氏によると、描画を高画質エンジンに任せることで、メインCPUで描画するよりも省電力化を図れるという。

 輪郭をよりはっきり見せる「先鋭化技術」も新液晶の特長だ。「AQUOS PHONEの名前に恥じないよう、自然な発色、特に肌色がきれいに見えるようチューニングしています。その際、端末によって液晶のバラツキが出ないように最適化しています」と林氏は説明する。「画質はAQUOSケータイを開発する際に、AQUOSの技術者とのやり取りで培ってきた技術を生かしています。特に、肌色などコントラストの中間色をきれいに描画できるようにしています」(林氏)

007SHは電話が一番使いやすいスマートフォン

photo フィーチャーフォンをベースにした007SHのキー配列

 折りたたみスタイルとテンキーが特徴的な007SHは、スマートフォンユーザーのすそ野を広げることを目指して開発された。「文字入力も今までのシャープユーザーがそのまま使えるよう、キーの配置はフィーチャーフォンを踏襲しています。Deletキーとバックキーは新しく付けましたが、基本的な使い勝手は変わりません」と林氏は説明する。

 通話キーで文字入力の逆トグル、終話キーでアプリの終了、ホーム画面から左右キーで発着信履歴の表示、左上ソフトキーからメールメニューの呼び出しなど、ケータイでのおなじみの操作法を採用した。特に発話キーと終話キーを備えているのがスマートフォンでは珍しい。「あ」行なら[1]キーの長押しという具合に、ダイヤルキーの長押しでアドレス帳を呼び出せるのも便利だ。「007SHは電話が一番使いやすいスマートフォンと言えるのではないでしょうか」と林氏も自信を見せる。さらに、2つのソフトキーと十字キーは、任意のショートカットに変更することも可能。ブックマークやアドレス帳の連絡先も割り当てられるので、アプリはもちろん、よく見るWebサイトやよく連絡を取る人などを設定しておくと便利だろう。

 フィーチャーフォンではおなじみのサブディスプレイも搭載した。時刻、着信、歩数などの情報のほか、設定を変えることで、ステータスバーに表示される情報が表示されるので、本体を開く頻度を減らせるだろう。

 テンキー付きの折りたたみ型はAndroidの中では異色の存在だが、Googleが策定した端末の仕様に抵触するようなことはなかったのだろうか。林氏は「Androidの仕組みに沿って開発し、Googleの審査を受けないといけないので苦労しましたが、007SHもAndroidの商品として成立しています。海外にもスイーベルタイプのAndroid端末はありますが、007SHはケータイの操作を実現するところをコンセプトにしているので、そういう発想で作られたものは初めてでしょう」と話す。

 007SHはケータイからスマートフォンへの乗り換えをためらっている人に向けたモデルで、スマートフォンシフトが進む日本市場では必要な端末だろう。だが、このタイミングで登場したことに驚いた人も多かったのではないだろうか。筆者は「将来的にはケータイとスマートフォンが融合したモデルも登場するだろう」程度に考えていた。「007SHはソフトバンクモバイルさんに収める端末ということで、一緒に詰めていきました。タイミングについては、Androidのフルタッチモデルが登場してすぐですと(007SHのようなモデルは)あまり注目を集めなかったでしょうが、だいぶ普及してきたので、乗り換えをためらっているお客様に訴求できると考えました」(林氏)

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