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» 2011年11月25日 23時29分 UPDATE

松村太郎のiPhone生活:アプリストアの破綻からユーザーと開発者を救う「AppGrooves」

現在App Storeには、50万本以上のアプリケーションが登録されているという。しかし、評価は古くからある定番アプリに集まり、新しいアプリはなかなかアプリストア内での認知が上がらないという問題を抱えている。この問題を解決するために生まれたのが「AppGrooves」。共同創業者の柴田尚樹氏の思いを聞いた。

[松村太郎,ITmedia]

 AppGroovesは、ユーザーがiPhoneにインストールしているアプリを2つずつ表示し、どちらが好きかを選んでもらうことで、お勧めのアプリを教えてくれるアプリガイドだ。あるいはApp Storeのレコメンド機能を補助するためのアプリ、と言ってもいいだろう。

 AppGroovesを起動すると、まずユーザーがインストールしているアプリの情報を取り込む。そして、投票を開始すると、アプリが2つずつ表示され、「どちらのアプリが好き?」という質問が登場する。例えば、TiltShift GeneratorとFlickrという写真カテゴリのアプリが表示され、TiltShiftGeneratorをタップすると次の2つのアプリが表示される、といった具合だ。

 タップした瞬間、他のユーザーはどちらを選んでいるか、というパーセンテージが表示される。3回の投票をすると、その結果に合わせたお勧めアプリが表示される仕組みだ。この投票作業は非常に楽しい。ちょうど、映画「ソーシャルネットワーク」でマーク・ザッカーバーグがフラれて酔った勢いで作ったFace Mashが瞬く間にキャンパスに広まったのが理解できるような楽しさだ。比較するのは女の子ではなくアプリ、ではあるけれど。

 そのほかに、自分のアプリの中でどのアプリが人気があるかを表示したり、セール中のアプリを表示したり、友人にFacebookでアプリ比較について質問したりする機能も備える。App StoreにもGeniusによるレコメンド機能があるが、それとはまったく別のアプローチで、どのアプリを使うべきかを示してくれるのだ。

PhotoPhotoPhoto アプリを起動すると、まずはiPhone内にインストールされているアプリをスキャン。その後「Hot or Not」方式で、2つ表示されるアプリから好きな方を選ぶ。3つほど選択するとお勧めアプリを表示してくれる
PhotoPhotoPhoto お勧めアプリのほか、友達がシェアしているアプリや

オーガニック・ダウンロードをいかに増やすか、という課題

 「iPhoneに限らず、スマートフォンやタブレット向けのアプリストアは機能不全に陥っている。ユーザーにとっても、開発者にとっても、だ。まるでGoogle以前のWebと同じような状態」――AppGroovesの共同創業者である柴田尚樹氏は、現在のアプリストアの状況をこう指摘する。

 柴田氏は資金調達で忙しい中、スタンフォード大学のデイビッド・パッカード電気工学ビルの1Fにあるカフェで時間を作ってくれた。向かいにはウィリアム・ゲイツ・コンピューター・サイエンスビルがある。シリコンバレーの成功者達の名前を冠したビルが建ち並んでいる理系のエリアだ。

 現在毎月6万本のアプリがAppleのApp Storeに新規登録される。Androidも合わせたら、さらに数は膨大になっていく。その中で、評価は古くからある定番アプリに集まり、新しいアプリはなかなかアプリストア内での認知が上がらない。アプリ開発者はどうするかというと、TechCrunchや著名ブロガーなどの記事に掲載されて、業界の認知を広げて、ダウンロードしてもらうように仕込む必要がある。しかしこの手法にも問題があるという。

 「記事に取り上げられたり、ニュースになったりすれば、一時的にダウンロードが伸び、App Store内のランキングも上がるかもしれません。しかしそのニュースが届いているのは、一部のテクノロジーの情報をより積極的に知りたいと思っている人たちであって、その人達がダウンロードし終えてしまうと、またニュースに取り上げられる以前のようにApp Storeの中に埋もれてしまいます」(柴田氏)

 柴田氏は「オーガニック・ダウンロードをいかに増やすか」というテーマに取り組まなければならないという。つまり、急激に話題に上って一時的にダウンロード数が増えたとしても、それが継続的に伸びていかなければ、課金あるいは広告のビジネスを展開する上で問題がある。またダウンロードされ、使われ続けていかなければアプリそのものの品質向上にも支障が出る。

 この問題に対処するためのアプリが、AppGroovesなのだ。

 もともと東京大学、スタンフォード大学でネットワーク分析、自然言語処理、機械学習等を用いた知の構造化に関する研究を行っていた柴田氏。アプリのABテストの環境を作り上げた上で、ユーザーにより良いリコメンド環境を作ることを目指しているという。あるいは、そのユーザー向けで得られたデータを開発者向けにフィードバックしていく方向も検討している。

 今後、スマートフォンのアプリはますます我々の生活の中で重要なポジションを占めることになる。そのアプリにいかに早く出会うことができるか。柴田氏のシリコンバレーでの挑戦は、我々の将来のライフスタイルの一端を担うことになりそうだ。

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プロフィール:松村太郎

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東京、渋谷に生まれ、現在は米国カリフォルニアのバークレイで生活をしているジャーナル・コラムニスト、クリエイティブ・プランナー、DJ(クラブ、MC)。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。1997年頃より、コンピュータがある生活、ネットワーク、メディアなどを含む情報技術に興味を持つ。これらを研究するため、慶應義塾大学環境情報学部卒業、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。大学・大学院時代から通じて、小檜山賢二研究室にて、ライフスタイルとパーソナルメディア(ウェブ/モバイル)の関係性について追求している。


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