KDDIは12月6日、災害時などに出動する車載型基地局(移動基地局)の合同訓練を報道陣に公開した。同社の移動基地局は全国に13カ所あるテクニカルセンター(TC)に15台配備されており、今回は各TCから選抜された4チームが日頃の訓練の成果を披露した。
東日本大震災の発生直後からKDDIは、被災地に合計11台の移動基地局を出動させて、6月末時点でのべ70カ所のエリアを暫定復旧させた。その後も、台風12号や奄美大島の大雨などで通信障害が起こるたびに、移動基地局を派遣している。移動基地局は各TCごとに訓練を行って災害に備えているが、それぞれで得た運用ノウハウには差があり、それらはあまり共有されることがなかった。2011年は大型災害がたて続けに起こり、複数の移動基地局が同時に出動するケースが頻発。KDDIは全TCが参加するコンテスト形式の訓練を実施することでノウハウを共有し、さらに効率的な運用を目指したいとしている。
その移動基地局は、被災地に到着してもすぐに通信サービスを提供できるわけではなく、準備には早くても1時間以上かかる。訓練では出動前の点検から始まり、出動命令を受けて基地局を展開、設置完了を報告するまでを競った。作業の早さだけでなく、安全性や効率性、そして技術の正確さなどが評価の対象になる。なお、移動基地局の乗員は2人だが、先導車の2人と合わせた合計4名が1組となって行動。このほかに、長時間の電源供給を行う電源車も随伴する。
移動基地局の運用で一番難しいのは、設置場所をいかに確保するかだという。まず車両を止めて作業できる広さがあり、坂などで傾いていない・泥などでぬかるんでいないことが挙げられる。移動基地局とKDDI網とは衛星通信で結ばれるため、周りが山やビル、木々で覆われていると衛星と通信できない。また、アースを地面に打ち込む必要があるので、舗装された道路や駐車場もあまり向かない。さらに、発電機の騒音も配慮して、居住地域や避難所から離れることもあり、立地1つ取ってもさまざまなノウハウがある。
こうして設置された移動基地局は、1台で約半径2キロのエリアをカバーし、音声通話なら最大で同時に90回線を提供。同時に、車載の発電機から携帯電話の充電サービスを行うなど、最前線のサポート拠点として活用される。移動基地局でエリアが暫定的に復活した後は、同じく衛星通信を使う可搬式の基地局を持ち込み、その後の本格的な復旧へとバトンタッチする。
KDDIでは現在15台ある移動基地局を、年度内に20台まで増やす予定だ。復旧に欠かせない電源車や非常用電源も55台から130台へと増強し、基地局自体もバッテリーを備えることで停電しても24時間以上稼働するように改良する。この基地局の無停電化は、2012年度までに約2000の基地局で行われる。
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