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» 2011年12月19日 18時00分 UPDATE

小寺信良「ケータイの力学」:FONルーターに関する現状の懸念点と対策

自宅のブロードバンド環境を使ってWi-Fiスポットを共有する「FON」のサービス。ソフトバンクモバイルがiPhoneユーザーに配布するなどして普及しているが、誰もがアクセスできるWi-Fiスポットの危険性もはらんでいる。

[小寺信良,ITmedia]

 昨年iPhoneに機種変したときに、FONルーターをもらった。現在ソフトバンクモバイルでは、iPhoneやiPadなど無線LAN対応機器のユーザーに対して、FONルーターを無償で提供している。

 FONについてはご存じの方もあるかもしれないが、一応ご説明しておこう。そもそもの発祥は2005年にスペインで立ち上げられたベンチャー企業である。当時スペインでは公衆無線LANのアクセスポイントが非常に少なく、ビジネス的にもうまく立ち上がっていなかった。そこで、各家庭に引いてあるインターネット回線を少しずつ分け合ってみんなで使えるようにすれば、相当なエリアがカバーできるWi-Fi網ができあがるのではないか――という発想から生まれたサービスである。

 FONのネットワークに参加するためには、「フォネラ」という専用の無線LANルーターを使う。これは一般的な無線LANルーターの機能を持っているとともに、もう1回線別のWi-Fi電波を飛ばす。こちらはフリーでアクセスできるように解放されていて、1つのルーターの中に2つのアクセスポイントの機能が入っている。

 家庭内で使うアクセスポイントは“MyPlace”というSSIDになっており、WPA/WPA2で暗号化され、パスワードで保護される。フリーで解放されるほうは“FON_FREE_INTERNET”というSSIDでこちらは暗号化されていない。

 FONルーターのユーザーは、まずFONに対してユーザー登録をし、アカウントとパスワードを作成する。FONではアクセスポイントの位置をユーザーが探せるように、自分のルーターの位置を自己申告で登録するようになっている。外出先で他人が公開している“FON_FREE_INTERNET”に接続する際は、このアカウントとパスワードでログインする。

 家庭での利用が増加することに備えて、現在FONでは青少年保護の観点からフィルターの導入が検討されている。家庭内側だけにフィルタリングが利用できるようになる見込みだ。

現状で分かっている問題

 すでにモバイルでWi-Fiを接続しようとすると、東京近郊では比較的よく“FON_FREE_INTERNET”が見つかるようになってきている。今はまだこれにまつわる問題は起きていないが、子どものケータイがスマートフォン化する現象に伴って、予想される問題点がいくつか指摘され始めている。

 そのひとつは、子どものスマートフォン契約時にFONルーターを貰い、親がよく分からないから子どもにそれを与えてしまうケースだ。FONの無線LANルーターは、有線で繋ぎさえすれば簡単に動作する。設定はすべてスマートフォン上でできるので、子どもがFONアカウントを作るのも簡単だ。そうなると、子どもは外でフィルタリングなしのネットにアクセスできる環境を手に入れることになる。

※初出時に“MyPlace”側のパスワードは共通としておりましたが、誤りでした。ルーター背面にユニークなパスワードが印刷してあります。共通なのは、有線接続時のIDとパスワードでした。関係者の皆様並びに読者の皆様には誤った内容でご迷惑をおかけいたしました

 現状のFONルーターは、“MyPlace”側も“FON_FREE_INTERNET”側も、ISPから振られたIPアドレスは同じだ。つまり、フリー側にアクセスしてきたユーザーが仮に殺害予告などを掲示板に書き込んた場合、まず最初に押さえられるのは、FONルーターを使っている家庭である。

 警察などがその家庭に捜査に入ったときに、FONルーターがあり、外部からもアクセスされることをうまく説明できればいいが、ルーターなどを設置してしまったらそれがなんだったのか忘れてしまうこともあるだろう。また警察官も、FONルーターがなんなのかを把握していればいいが、そうではない場合は相当もめることになる。

 これの回避策として、現在FONではルーターとFONのセンターサーバーの間でトンネリングを行なう計画がある。イギリスでは2008年から可動実績がある方法で、これが実現すれば、センターサーバーのログに各ユーザーに対して振られているパブリックIPアドレスが残るので、誰がアクセスしたのかが分かるようになる。

 ただ、現状ではまだこれらの対応策は実施されていない。対応策が実施されるまでは、保護者側もFONルーターにある程度関心を持っておく必要があるだろう。

小寺信良

映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作は、ITmedia +Dモバイルでの連載「ケータイの力学」と、「もっとグッドタイムス」掲載のインタビュー記事を再構成して加筆・修正を行ない、注釈・資料を追加した「子供がケータイを持ってはいけないか?」(ポット出版)(amazon.co.jpで購入)。


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