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» 2011年12月26日 21時13分 UPDATE

ITmediaスタッフが選ぶ、2011年の“注目ケータイ&トピック”(ライター坪山編):ガラ+グロ、モバイルIP電話、公衆無線LAN――スマホ元年に見たアレ・コレ・ソレ

2011年こそ「スマホ元年」だと感じた1年だった。国内メーカーもスマートフォン市場に続々と参入し、機能、サイズ、デザインなどさまざまな面から選べるモデルが増えた。一方で、モバイルIP電話の増加や、トラフィック増に伴う問題も見られた。

[坪山博貴,ITmedia]

 筆者の意識では、2011年は日本のスマホ元年だった。2010年まではおおむねフィーチャフォンのハイエンド機を置き換える存在だったスマートフォンが、国内メーカーの本格参入もあってバリエーションが広がり、機能、サイズ、デザインで十分に選べるに至った。一方、そのスマホの爆発的な普及がケータイ業界に与えた影響も大きな1年であった。

“ガラとグロ”の垣根を超えた「Optimus LTE L-01D」

photo LGエレクトロニクス製の「Optimus LTE L-01D」

 筆者の思うスマホ元年の象徴としてピックアップしたいのがドコモ「Xi」対応のスマートフォン、LGエレクトロニクス製の「Optimus LTE L-01D」だ。4.5インチの大型ディスプレイ、デュアルコアプロセッサ、そしてLTEに対応するハイスペック端末なだけでなく、ガラスマのお株を奪うかのごとく、ワンセグとFeliCaに対応した。LGのお膝元、韓国では移動体向けのテレビ放送が提供されているので、ワンセグはモジュール変更で対応できるが(Samsung電子の GALAXY S?もこれに該当する)、現時点においてFeliCa対応は明らかに日本市場だけに向けたもの。AndroidではNFC対応も進んでいるが、FeliCaでは対応基準が非常に厳しい「モバイルSuica」の実装は決して簡単ではない。

 携帯電話の審査基準が世界一厳しいと言われるドコモへの供給実績も多く、フィーチャーフォンでもすでにFeliCa対応を果たすなど、LGは日本向け製品にも地道に注力してきた。Optimus LTEは、まさしくその成果と言える。2011年に最も物欲をくすぐられたスマートフォンだし、筆者の周りでも非常に評価が高い。日本固有とも言える「ガラ(ガラパゴス)」「グロ(グローバル)」というスマートフォンの選択基準は、そう遠くない未来に意味のないものにもなりそうだ。

地味だけど出来の良い「F-12C」、作り込みが見事な「SOCIUS」

photo 富士通製の「F-12C」

 スマートフォン市場へ本格的に参入した国内メーカーの多くもスマホを投入したが、筆者の印象に残ったのはドコモ向け富士通製の「F-12C」だ。ディスプレイが4インチ未満のお手軽サイズのモデルだが、日中の屋外でも視認性の高いディスプレイ、追従性の良いタッチパネル、前面に3つの押しやすいハードキーと、スマホとしての基本的使い勝手の良さが光った。もちろんFeliCaや防水といった国産スマホの得意とする部分をしっかり押さえている点も魅力だが、「身に付けて片手操作をメインに使う」という筆者のスタイルにはベストのバランスだと感じた。F-12Cの血統は冬春モデルの「ARROWS Kiss F-03D」に受け継がれているが、富士通製スマートフォンに「ARROWS」ブランドが冠される前ということもあり、“出来の良い子だけど地味だった”F-12Cをあえてピックアップしたい。

 「だれとでも定額」で息を吹き返し2011年は順調に契約者数を伸ばしたウィルコムは、端末展開にも面白さが帰ってきた。「WX01S SOCIUS」は単にスマートフォンのBluetoothハンドセットになるだけではなく、その機能も作り込まれ、PHS回線もあわせて3回線の音声通話をスマートに統合できるのはお見事で、だれとでも定額との相性も良い。卓上電話機型の「WX02A イエデンワ」も話題先行の感はあるが、キャリアを問わない音声定額サービスを持つウィルコムだからこそ、存在価値のある製品ともいえる。個人的には、Eメール機能もあれば受信中心に留守番電話代わりに使えて便利そうだなと思うのだが、これは後継モデルに期待したい。ソフトバンク傘下となって基地局の整理・統合も始まるなどポジティブな話題が減りつつあるウィルコムだが、それもまた事業継続に必要とあれば仕方ない部分とも思う。かつての“Dポスキー”(DDIポケット好き)の1人としても、唯一のPHSキャリアとしてまだまだ頑張ってほしいものだ。

photophoto 「WX01S SOCIUS」(左)と「WX02A イエデンワ」(右)

もうキャリア通話は不要? 加速したモバイルIP電話サービス

photophoto 3G/Wi-Fi経由でメッセージや通話を簡単にできるモバイルIP電話アプリが増えている。こちらは「Viber」

 2011年のスマートフォンの普及に合わせるような形で急速にサービスが増加したがモバイルIP電話サービスだ。このカテゴリーでは公衆網とも接続しているSkypeがメジャーだが、「Viber」「LINE」といったサービスはユーザー間の利用に限定する代わりに、面倒なユーザー登録をなくして電話番号認証のみで利用可能とし、電話番号からアドレス帳とマッチングさせて通話可能な相手を一覧表示するという手軽さを実現した。また同種のサービス「OnSay」は、Twitterアカウントを利用することで、ユーザー登録不要での通話を可能にしている。

 筆者はソフトバンクの「ホワイトプラン」、auの「プランZ」でキャリア間無料通話も積極的に活用していたが、最近はこの無料通話の出番もめっきり減ってしまった。長電話目的でなくても先に挙げたモバイルIP電話で普通に電話が掛かってくるからだ。また、個人情報を伴うユーザー登録が不要、事前に通話相手の登録作業が不要なことから、Skypeには及び腰だった知人でも使い始めるケースが非常に増えた。そもそも、IPリチャージブルなスマートフォンでパケット料金も定額制なのに、キャリアの提供する割高な音声通話を利用する方が不自然といえば不自然だ。

 年間のスマートフォン出荷台数がフィーチャーフォンを上回ったとは言え、稼働数ではまだまだフィーチャーフォンの比率は高い。しかしこれからスマートフォンへの移行がさらに加速することは間違いないし、ドコモのXiでは音声通話のヘビーユーザー向けの料金プランを現時点では提供していない。公衆網への接続も「050 plus」のような公衆網接続も可能なモバイルIP電話サービスで置き換えることがほぼ可能だ。接続の確実性、通話品質という点で既存の音声サービスが不要になることはないと思うが、スマートフォンの世界では音声通話サービスがおまけ扱いになる時代もそう遠くない――そんなことを思い知らせてくれたのも2011年だった。

4G移行までの試練、ついに現実になった3Gネットワークのほころび

 予想されたことではあったが、スマホの爆発的な普及で2011年にはついに3Gネットワークにほころびが見え始めた。これまでが盤石だっただけに目立つのがドコモで、全国的にパケット通信速度の低下が見られるほか、東京圏では朝夕のラッシュ時など一部の駅でデータがほとんど送受信できないといった状況も散見されている。駅構内などは基地局設備が自由に増強できない(鉄道会社などに工事、管理まで委託することが一般的)といった事情に加え、ドコモはXi向けに3Gの2GHz帯の一部を振り分けているといった事情も重なってのことと思われるが、2011年に大きく状況が変化した。もちろんiPhoneでスマートフォンシフトが早かったソフトバンクモバイルは2011年より前から3Gネットワークのトラフィック過多に苦しんでいるし、スマートフォンシフトが遅れたKDDIはWIN HIGH SPEED(cdma2000 EV-DO Re.A MultiCarrier)の導入による無線区間の効率利用やWiMAXにも対応するスマホの積極的導入により、現状では一番3Gネットワークに余裕があるが、これも時間の問題であることは間違いない。

 同様の試練は過去にもなかったわけではない。ドコモはPDC時代には急激なユーザー増による音声通話の帯域不足でハーフレート端末の導入を余儀なくされたし、KDDIはパケット定額制開始後に2GHz帯の本格運用の遅れなどから、目に見えたパケット通信の速度低下を招き、一時的にせよ「通信が遅い」というレッテルを貼られた。しかしスマホの普及による今後のトラフィック増加の勢いはこれらの比ではない。ドコモはすでに3.9Gサービス(LTEやWiMAXはかつて3.9Gと定義されていたが、現在はITUでも4Gという表記を認めている)を「Xi」として開始しているが、3Gトラフィックの減少につながるには2012年の1.5GHz帯を使った全国サービスとLTE対応端末の普及を待たないとならないだろうし、LTEのサービス開始が2012年のKDDI、それ以降となるソフトバンクではさらに後になる。

 この状況下で2011年に一気に数が増えたのが、スマートフォンのトラフィックをオフロードする目的で設置された公衆無線LANのアクセスポイントだ。キャリアが自社ユーザー向けに無料に近い形で解放しており、「ソフトバンクWi-Fiスポット」は2011年9月で10万局を超え、2012年3月には10万局を目指す「au Wi-Fi SPOT」も11月時点で5万局を超えたことが発表されている。「Mzone」として古くから公衆無線LANサービスを提供しているドコモは、インフラの大半をNTT-BPに委託している。NTT系列の他サービス(フレッツスポット、HOTSPOT)と共有することもあって慎重なようだが、10万局規模への拡大を目指している。

 一方で、キャリアが提供する公衆無線LANの急速な拡大は弊害も生んでいる。繁華街などでは計画性のない設置が散見され、重複した無線チャンネルの利用も珍しくなく、「つながらない」「通信速度が遅い」といった不満の声も増えてきた。確かに公衆無線LANで主に使う2.4GHz帯は免許不要のISMバンドで自由に使って構わない帯域だが、無線通信が飯の種であるキャリアのすることとはちょっと思いたくない惨状も招いている。スポット数は確かに利便性の1つの目安になるが、今の状況は数だけ増やせば良いというふうに見えなくもない。そもそもソフトバンク Wi-Fiスポット(BBモバイルポイントと一部のFonスポットは除く)とau Wi-Fiは自社のスマートフォン専用となっており、もはや公衆無線LANと呼ぶこと自体にも疑問が残る。

photophoto これは3両編成の電車が走る、のどかな東急池上線のとある駅の商店街の無線LAN環境であり、繁華街のものではない。6チャンネル以降だけでキャリアの提供する公衆無線LANのSSIDが6つ識別できる。立地を考えると「なぜこんなに」という印象だ(写真=左)。こちらは東京でも繁華街といえる場所。ほぼ全チャンネルを公衆無線LANが埋め尽くされている上、同じチャンネルに異なるスポットのかなり強い電波が出ている。このレベルになると完全に公害無線LANだ(写真=右)

 キャリアの提供する公衆無線LANは、このままただスポット数だけ増やし続ければ“公害無線LAN”になりかねない。そして役に立たない公衆無線LANに気付いたユーザーは無線LANをオフにして3Gネットワークを使い始めるという本末転倒な事態に陥る可能性も高い。真剣に3Gのオフロードに公衆無線LANを使いたいなら、最低限設置時に無線チャンネルの干渉回避や必要以上に電波を飛ばさないための出力調整はすべきだろう。特にこれからスポットの拡大を行うドコモは、現状「Mzone」として高品質な公衆無線LANサービスを提供しているのだから、決して他キャリアの二の舞になるようなことはやめてほしいと切に願う。公衆無線LANスポットの増加自体は歓迎すべきことなのだから。

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